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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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次の街で。
*
次の街に引っ越してから数日。
やはり元気がないようなので、気晴らしに双葉を連れてドライブに出かけた。
ドライブ、と言えるほど優雅なものでもなく、半分スクラップのようなベコベコにへこんだ知人譲りのローバーミニに乗り、
「暖房効かない!マジ寒い!」
「うるせえ我慢しろよ!」
「しかも掃除したのにまたタバコ臭い!酔う!!絶対吐く!窓開ける!」
「開けるな!風入って寒いだろうが!我慢しろ!漢なら黙って耐えろ!」
………などと、1時間ほどこんな調子で親子の会話を楽しみながら新しい街をくるりと一回りし、最後に冬の海が見える高台で一服した。
鉛色の波間と断崖を眼下に、灯台の見える駐車場でしばらく潮騒を眺める。
殺風景な光景なのだが、海から吹き付ける微風が潮の匂いを含んでいたせいか、曇天の割にその日は不思議と癒される思いがした。
「海凄いね」
「そうだなぁ」
「…昔、僕も海の側で暮らしてたんだよね」
「ああ、そうなるな。港区は海際だった」
「何か不思議。今まで山の側とか町中とかに引っ越してたからかな、海見るの、初めてな気がする」

温くなった缶コーヒーを手にしたまま、双葉の視線はずっと水平線の方へ向けられている。
無意識に俺が気にして避けていたからなのか、俺も久しぶりに海に来たように思う。

双葉のためだけでなく、俺も自分の過去から、逃げ続けている。

「…そうか。でも、新鮮みがあるってのはいいかもな」
「うん、そうだね。また来たい」
「じゃあ、また今度な」
うん、と双葉が小さく頷く。ほんの少し、口元に笑みが浮かんでいたのを見て、俺はほっとしていた。
「おとーさん、おしるこ飲みたい」
「うん?自販機のあれでいいか?」
「うん、缶のがいい」
「お前はいつも安上がりで助かるねえ。いいさ、車の中に戻ってろ。買ってきてやるから」
俺はコートのポケットから小銭を取り出すと、自販機に向かい「おしるこ」を二缶買って愛車に戻った。

*

それから数ヶ月、穏やかな日々を俺達は過ごした。
相変わらず転居先も築数十年のぼろいアパートだったが、あっという間に冬が過ぎ、新しい春が来て、この街の生活にも職場にも慣れた。

「おとーさん、僕夕方まで出かけるから。お昼は適当に食べてね」
狭い居間でパジャマのままぼんやりとテレビを見ていた俺は、いつもより小綺麗にした双葉を見て何気なく「デートか?」と聞くと、「え?」と言いたげにあいつは首を傾げた。
「…何で?」
「ん?いや、お前が日曜に朝の早くから気合い入れて出かけるのは珍しいから」
「…違うに決まってるでしょう。僕、もてないし気合いなんか入れてないし」
「そうかあ?お前カーちゃんに似てつるっとしたキレイな顔してんのに」
「褒めても何にも出ません」
「いらねえよ。それじゃ友達とどっか行くのか?そんなら小遣いでも出してやらねえと」
立ち上がって、尻ポケットのぺらぺらな財布から札を出そうとすると、「いいよ」と顔をしかめる。
「図書館で勉強しようと思って。ここんとこ近所の道路工事がうるさくて集中できない」
「あああれな…って、わざわざ勉強しにいくのお前?別にいいだろーお前のオツムなら。んながっつかなくても」
「…普通は勉強する、って言ったら親としては喜ぶもんじゃない?変なの」
「普通なら、な。お前の場合、完璧超人過ぎて、逆に遊び心が無いのが親父様は心配なのよ。あんま勉強勉強しないでさ、もっとゆるゆるしろ。たまには友達と一緒に、どっか遊びにでも行ってこい。ほれ小遣いやるから」
「いいって」
嫌がる双葉の胸ポケットに、無理矢理千円札をねじこむ。
「いいって言ってるのに」
「我慢するなよ。誰か誘ったらどうだ?お前にだってそういう友達くらいできただろ?」
「………」
一瞬、双葉の表情が陰る。
時々、特に最近、ああいう暗い表情を見せる事が増えた。
「…あ、まだ転校してあんま間がないからそういう奴いないか?」
「ううん、別に。それに」
ほんの少し間をおいて、双葉は口を開いた。

「どうでもいいよ。友達なんて」

とっさに返す言葉も出ずにいた俺に背を向けて、双葉はスニーカーを履いて戸口を開く。

「義父さんこそ、もう少し自分のこと、考えたらいいのに…」

そう呟いて、双葉は振り返らずに出て行った。
夕方帰ってきた時には、もう普段のあいつだったから、あえて根掘り葉掘り聞くことはしなかった。
「いじめとかないか?」とだけ聞くと、「されてないし、別に平気」とだけ答え、後は別の話題に流れていった。
そういう時に問いつめても、きっと答えない。黙りこんで、仕舞いにははぐらかそうとする。
もう分別は大人だし、あれこれ干渉しない方がいいか。そう思い、俺も黙っておく事にした。
だが思えばあの時、あいつが何を思ってああ言ったのか考えてやれば良かったと、その少し後に後悔する事になった。


その日の昼過ぎ。
双葉が図書館で留守にしている時に、宅配が小包を二つ持ってきた。
白い紙袋に包まれた四角い箱が二つ。一つは小さく、もう一つのは菓子箱くらいの大きさだった。
後輩の榎本に頼んでいる、「いつものアレ」が届いたようだ。
判子を付いて、きっちり戸口を閉めて奥の寝室に引っ込む。

後輩の榎本_施設で双葉の治療を担当していた医師_とは、双葉を引き取った際に別れてから顔を合わせていない。
ちょくちょくメールでやりとりをしているが、相変わらず上司にガミガミ言われているらしい。その気の弱さを直せと言いたい。
榎本は現在、桐条直属の病院に医師として勤務し、現代の奇病・都市に密かに蔓延する原因不明の病、無気力症の治療に取り組んでいた。
…まあ、桐条のちょっと詳しい関係者には全然「奇病」でも何でもないのだが。
ともかくそのつてで、時々ペルソナの「安定剤」を回してもらっている。
裏ルートにしかないので手にいれるのも成分を調べるのも一苦労だろうが、いつも頼むと律儀に送ってくれる。
まあ、薬と言ってもペルソナ同士の共鳴現象を抑えるためだけのものなので、「人工ペルソナ使い」の連中が飲む何十倍にも凝縮した、半分毒薬みたいな「制御剤」に比べると可愛いものだ。それでも飲むと2・3日胃がムカムカしてビールがまずい。
榎本曰く、「害は少ないですけど、やっぱり飲まない方がいいですよ」と念押しされる代物だしな。仕方ないか。

まず、小さい方を破くと、白い丸粒の錠剤がぎっしり詰まった瓶がエアーキャップにくるまれて梱包されていた。
中に小さなメモが入っていたので見ると、「半年分を送ります。次はきっと遅くなるので無駄遣いしないでくださいね」と女子高生のような丸っこいくせ文字が並んでいる。あれのくせ文字も、あの頃から変わらない。
じゃあもう一つの箱にストックの錠剤かと思い、改めてデスクの上で持ち上げると…妙に、重量感を感じる。
「………?」
違和感を感じ、包装紙を破く。
出てきたのは、重厚な黒塗りの木箱。
いつも安っぽいクラフトの段ボールなのに、今回はどうしたのかと思い中身を探る。

「………!!」

そこには、鈍く鉛色に光る拳銃が一丁、収められていた。
側には、きちんとケースに入れられた、テレホンカードサイズのメッセージカードが封入されている。
おそるおそる手に取ってカードを確認すると、それは榎本の女子高生文字ではなく、神経質そうな細いボールペンの筆記でこう記されていた。

『完成したので送る。  堂島』

リボルバー型の潜在人格具象化装置=通称、ペルソナ召喚機。
完成の噂は聞いていたが、俺には必要がない代物だ。

裏には、携帯の番号だけが記されていた。












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