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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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悪夢は泣きながら歌う。
*

研究用の白衣であっただろうボロ布を身につけた、白髪だらけの薄汚い埃まみれの少年。
全身に濁った血染みを浴び、白衣を茶褐色に染め上げた少年は、言葉を失い呆然とする僕の胸元にしがみつき、瞳孔が開ききった黒い目で僕を見上げる。
その手は血の緋色と濁った暗褐色の粘液で染まり、僕の身につけていた白いワイシャツは、力一杯握りしめられ手形の緋がくっきりと染みこむ。

少年は笑った。
まばたきもせずに黒い目で僕を見つめ、泣きそうな顔で笑って見せた。

(もう逃がさない 絶対逃がさない)

血まみれの少年=幼い日の僕は、今の僕に抱きつき、黒々としたスライム状の人影と化して全身にすがりつき、溶けた緋色が肉に食い込んでくる。

染みこむ。染みこんでくる。
無知で、愚かなまま、真白な世界にいればよかったのに。
黒い僕を、闇よりも深い漆黒の記憶が蝕んでいく。
音も無く、痛みも無く、全身に注ぎ込まれる過去の苦痛。

ああ。

僕は罪人だった。
僕は殺人者だった。
僕は母を生き返らせたくて、父の実験の片棒を担いだ。
実験の最中に、同じ研究所の友達を何人も見殺しにした。
父に喜んで欲しくて、見捨てられたくなくて、機械になったふりをした。

知りたくなかった。

僕が産まれなければ、父も母も幸せになれた事。
父に汚物以下の扱いを受け、父の中に愛情など一欠片も感じていなかった事。
僕の存在が、両親の不和を招いた事…。

全身から、血の気と共に体温が消えていくのが感じられた。
逃げられない。
忌まわしい記憶、そして忘れたかった異能の力。

(かわいそうなオルフェウス すんでのところで 水の泡)

幼い日の「僕」の声がこだまする。
いや、それだけじゃない。
もっと、もっとたくさんの子供の声。
それは足下の波紋と同じく、幾重にも幾重にも反響し、混ざりあい、だが確かな響きとなって僕の心を大きく揺さぶった。

顔を上げると、シャドウと化した幼い「僕」が、頭部だけを残し今の「僕」をじっと見つめていた。
幼い日の「僕」の黒目が、僕の眼前でどろどろと溶け、黒い涙となって青白い少年の頬を伝い、乳白色の波紋に黒い雫となって消える。
溶け出した目の跡は、ぽっかりと空いた眼底だけが残されていた。
何も映るはずのない、だが、すべてを見透かす暗闇をたたえた孔が、僕を見つめていた。
黒い雫は水面を汚し、波紋が灰色に濁る。
僕の足下を中心に、波紋は波形を為して白い世界を浸食していく。
灰色は、次第にコールタール色の汚濁した液体に変わり、腐臭が足下から漂い喉をチリチリと焦がす。
薬品を喉に注ぎ込まれたような焼ける痛みで咳ごみ、口を覆う。
その手に、咳と共に喀血した血の塊が流れ落ち、目を疑う。

血を見て驚いたのではない。
掌が、足下のコールタールと同じ、ぬめった黒い液体を同じ色をしていたから。
全身を見る。肩、手、足、太股、腹部、腕、胸元、着ていた服までもが薄気味悪い黒色のスライムと化し溶け出そうとしていた。

叫ぼうとして、あらん限りの声を発…したつもりだった。
喉仏の溶けきった声帯からこぼれたのは、微かに息が抜ける「はゅう」という腑抜けた音だけだった。
僕にまとわりつく腐臭…人の死がもたらす死臭が、僕の口から、短いうめき声を上げた。

ふたば ふたば フタバ フタバ…
いこうよ いこうよ さあ…

腐った汚泥となり果てた水面から、同じ色をした黒い手が何本も、何本も、全身を掴み、巻き付き、水面の底へと引きずり込む。
双葉は、掴まれる場所から泥のように軟化し、幾本の手に引き千切られ、腕が、足が、頭が泥人形と化して汚泥に沈み、グチャグチャに潰されながら水面と同化していくのをただ感じていた。抵抗など、泥となった自分に何が出来ようか。痛みも無く、人で無いものとなり、死臭にまみれ、死臭と一つになる。
自分の身体と信じていたものが腐って変形していく様を感じながら、双葉はもはや声も出せない自分の無力を思い、絶望した。

(かわいそうなオルフェウス 宴で 八つ裂き 冥土行き)
(おろかで おばかな オルフェウス 死人恋しと 狂い死ぬ )
(エウリュディケが 待ってるよ 君が恋しと 待ってるよ…)

意識が淀む。
遠くで、坊やが呼ぶ声が聞こえたような気がした。

それをかき消すように、遠い昔に聞いた歌が聞こえる。
大好きだった歌。
おかあさんの、好きだった歌。
僕を愛してくれた、あの子の一番好きだった歌。

アメージング・グレイス…。













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