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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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幻影の輪郭。

*
『 いたい ?』
「………」
『 ねえ いたい ? ねえねえ いたい ? 』
「………」
唇をかんで黙っていると、『愚者』は不愉快だったらしい。手に力が更にこめられ双葉は全身のきしみに耐えきれず短く何度も叫んだ。

『 いたい いたい もっと いたい いたい してねー きもちいいいぃいぃぃ 』

ザラザラのノイズ声が耳に不快な反響を残し消えていく。

遠のく意識を必死に捕まえ、思い浮かべる。
かつて、興じたおまじない。切なる祈り。
心から願った、あの時の思いを。

来い、来い、来い…お願いだ…。
両目から溢れるように涙は零れ続けるのに、願い求める形が見えない。
あの頃、ずっと側にいた、あの姿が、瞼の裏に描けない。
もっと悲しい記憶は鮮明に思い起こされるのに何故。
隣にいつも居てくれた、懐かしい陰の面影は黒く塗り潰されて、声も手の感触も朧にすら浮かんでこない。

名前。
そうだ、なんて名前だった…?

「フタバ…こんにちわ…ぼくの…まえ…は…」

耳の奥が全身を包む圧力と、後頭部の鈍痛でノイズに沈む。
駄目だ…聞こえない。
僕は自分のペルソナの名前すら、思い出せていない…。

やっぱり。
もう駄目なのかな。
一度、手放した力を、もう一度、都合良く手に入れたいだなんて。
もう一度、今度は間違いを犯す事無く使おうなんて、虫の良い考えだったのだろうか。

ならば。
この胸の奥にくすぶる脈動は、何。
あの時と同じ、でも異なる願いに反応する、胸の奥で応える、水面の波紋にも似た力の感触。
これは、大切なものを守るためにあるんじゃないの…?

誰か教えて。
僕はどうすれば良かったの。
僕は逃げれば良かったの。
だけど、僕はその選択を選ばなかった。選べなかった。
無視できない痛み。苦しむ誰か。
どうすれば、力を………。

誰かを、大切なものを守る力を、得られるの………?

『愚者』が、首を伸ばし、密着するように大きく裂けた口元を近づけて、囁いた。

『 お し ま い 』

冷たい視線を浴びせる、二つの孔が双葉を見下ろす。
その孔の奥で、おぞましい意志が心の底から己の死を喜びせせら笑っているのを肌で感じ双葉は戦慄した。
違う。
あの施設で、僕をいじめた連中とも違う。遠巻きに僕を見つめていた子達とも違う。
根源的な本能の部分が、『愚者』の奥底に潜む「何か」を感じ、背筋が凍り付く。
そう思った瞬間、頭から丸呑みにしようと、『愚者』が大きく裂けた口を開き、双葉の頭上に迫った。

薄く光る弧月が、残光を残して空を裂いた。

眼前を白い刃が一閃し、『愚者』の手首が寸断され、赤いヨーヨーが鋭い三枚刃をきしませて宙に舞う。
全身を支配していた圧力が一瞬にしてほどけ、全身からシャドウの破片がはげ落ちる中、双葉は宙に投げ出される。
その身体を、背面から地面に落ちるすんでのところで優しいクッションに似た感触がくるんだ。

…衝撃が止み、おそるおそる、そっと、目を開く。
最初に視界に飛び込んできたのは自分を抱き抱えている赤い頭巾の男。
全身赤赤赤の、男が自分を抱き留めていた。
だが、見てすぐに分かった。
これは人間じゃない。
この感触。触れる肌で直に感じられる力の鼓動。

ペルソナ。
実体化した、ペルソナ。

力強く、人肌みたいに温かい感触に驚く双葉の眼前に、ひょっこりと人影が顔を覗かせた。
黒コートに革手袋。真冬のさなか、汗の滲む額。
少し白髪の増えた、伸び気味の刈り上げた頭髪。
心持ち頬のこけた、でも変わらない優しい面差し。
その中央で、色素の薄い大きな目が、以前と変わらない柔らかな眼差しで双葉の顔を覗き込む。
あの日、最後に見た姿と同じように、首から銀色のイヤホンをぶらさげて。
大した出血や怪我が無いのを見てとり、その人物は安堵の表情を浮かべ目を細めた。

「………お、とう、さん」

そう呟くと、目の前の人影は、本当に全身から喜びを発して双葉を抱きしめた。

「助けに来たぞ」

腕の中で声を聞き、双葉はやっと現実だと分かり人影に思い切り抱きつく。
気がつけば、全身が恐怖以上の喜びで震え、止めどなく涙がこぼれていた。
いつもそうしていたように、涙を親指で拭い、陽一はもう一度求めていた感触を確かめるように双葉を強く抱きしめた。












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