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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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出会いは突然訪れる。

その年の秋、オンナが出来た。
双葉に、ではなく俺に、だ。

きっかけはなんでもない、会社の同僚だった。
それがふとしたお茶くみ時の会話から好意を持たれて、あれよあれよと一緒に昼食をする仲になって。髪の長い、清潔な感じの和風清楚系美人。歳は俺より少し若いくらいの、バツイチ。
…といっても、同僚からは「美人は言い過ぎ」と茶化されるが、そこはあばたもえくぼ、らしい。

今日も家に帰ってからケータイで小一時間ほど話し込んでいると、双葉がけげんそうな顔をしてこちらを見ている。
俺がケータイを切ったのを確認して、背中越しに「誰?」と聞いてきた。
「うん?ああ、その…誰でもいいだろう?」
「………」
適当にごまかしたのが気に入らなかったのか、あいつはぷい、とそっぽを向き山盛りの洗濯カゴを持って風呂場へ行ってしまった。
まだ、そこまで深い付き合いでないのだから、顔を合わせるのは先でいいだろうし。

*

…と、思っていたら相手はバツイチ、手際が良すぎる。
同僚がこっそり調べて住所を教えたらしく、1時間ほど残業して帰宅してみたら家にいやがる。
食卓には、普段見かける事のない洋食の献立が小綺麗に盛られなんぞして。
正直、ちょっと怯えた。
「ちょっと頑張ってみました」なんて言いながら彼女がはしゃいでいるそばで、双葉は何やってるのかと思えば居間でテレビを見ている。
完璧シカトしている。愛想の欠片もない。
「双葉、帰ったぞ」
「お帰り」
非常に低いトーンのお帰りコールに、奴の苛立ちがピークであることを察する。嗚呼、前門の虎後門の狼。
料理自体は、非常に良くできていた。
こういう表現はまずいかも知れないし誤解を生むかもしれないが、良くも悪くもまとまっていたと思う。何というか、双葉の普段作る「家庭の味」と異なる「女の手料理」に、心ときめいたせいもあるのかも知れない。
彼女は食事中も良くころころと喋ったので適当に合わせてくっちゃべっていたら、無言で双葉が箸を置き、半分も食べずに席を立った。

「ごちそうさま。 …ごゆっくり」

去り際の捨て台詞に、奴の怒気を感じて戦慄する。
この野郎、挨拶連絡も無しに順序とか考えずいきなり女連れ込むなよ。空気読めヴォケ。
脳内で変換される双葉の怒りに顔をしかめていると、双葉が奥の自室に引っ込むのを確認して彼女が小声で口を開いた。

「ねえ、陽一さん。…あの子、双葉君、ですよね。いつも自慢してらっしゃる…」
「…うん?あ、ああ、そうだが…」
「一応、お付き合いさせてもらってるていう旨、お家に着いた時にお話したんですけど、言ってなかったです?」
「…悪い。相手が思春期まっしぐらの年頃だから、ちっと言いづらくて」
「成る程、だからあんなに不機嫌だったのかな…お台所借りますよって断ったら『ご勝手に』、何が食べたいって聞いたら『どうでもいい』って言われて、嫌われてるなあ~…と」
「…ああ、それ、いっつもそうだから…気にしなくていいからさ…」

彼女が食後の片付けをして帰宅した後、そっと部屋を覗いてみると双葉は風呂にも入らないで布団にくるまって寝ていた。
次の日には何事も無かったかのように朝食をこしらえて、起き抜けで目をしばたかせる俺に「おはよう」といつもの調子で話しかけてきたので、正直ほっとした。
朝シャワーを浴びたらしい、髪がまだほんのり湿っている。肩からタオルを下げたまま、みそ汁を椀に注いで出してくれた。

「あの女の人と、付き合ってるの」
朝食を食べながら、今朝のテレビニュースを見ていると、双葉はぽつりと小さな声で呟く。
「ああ、今はまだ交際してる、のレベルだな。お前らでいうとこの、手をつなぐレベル」
「…結婚とか、考えてるの」
「一応、な」
一瞬、間があって、双葉は「そう」と吐き出すように答える。

「嫌か?」

一番聞き辛かった事を、さりげなく切り出す。
双葉は一瞬箸を止めると、まっすぐ俺を見て、すぐにうつむいた。
ほんの少しの間、テレビの音だけが家の中に響いていた。

「………ううん、おとーさんがいいなら、僕は別にいい」
双葉は、そう言うと「ちゃんと紹介して」と付け加えて、後は黙ってたくあんをかじり始めた。
その後はずっと、たくあんをかじる音とみそ汁をすする音だけが食卓に響いた。

それからは、いつ彼女が来ても双葉は何も言わなかった。
彼女はずっと子供が欲しい、と思っていたらしい。双葉がいるのは苦ではないようだった。
だから、きっとこれは上手くいくんじゃないかと思っていた。
追っ手も堂島の言った通りにこなくなり、ペルソナを使う頻度が減れば必然的に日常生活は穏やかに流れた。
双葉にも、新しい家族が出来る。負担を減らしてやれる。
俺は、手前勝手な理由と根拠で、双葉の変化に気付かなかった。

一ヶ月後。
木枯らしも吹き付け出す季節。
彼女がウチの家事を手伝うのが日常になり始めた頃。
学校から電話があった。

最近、あまり学校に来ていない、と。
学校に来ていても、授業中の態度は散漫、成績も目に見えて落ちたという。

当然、俺は帰ってきた双葉に問いつめた。
「おい、学校は」
「行った」
「嘘吐くな!今日学校の担任から連絡あったぞ、無断で休んでどこいってた!」
「………」
「何とか言え!!」
襟元を掴んで詰め寄ると、双葉は珍しく激高して「離してよ!」と俺の手を振りほどく。
「別にどうでもいいでしょう?僕の勝手じゃないか」
「なっ…」
「義父さんは義父さんで好きにしてるんだから、僕だって好きにするよ。関係ないし」
「……!」
あまりに幼稚で身勝手な言い分に、俺はあいつの頬をぶん殴っていた。
「…んだその言い方は!生意気言ってんじゃねえガキのくせしやがって!」
「…うるさいなあ、ほっといてよ!子供の前でいちゃいちゃして、恥ずかしくないの?エロ、ドスケベ!自分の事棚に上げてよく言うよ!」
「はあ?あれはお前のかあちゃんになるかも知れねえんだぞ?仲良くて当然だろうが!」
「どうでもいい」
「は?」
「母親なんかいらない。どうでもいい」
「…おま、俺がいいならって言ったじゃ」
「父親だってどうでもいいし。いなくなるならそれで、また考える」
その最後の言いぐさに、ぷつん、と頭のどっかに常備されてる堪忍袋の緒が切れた気がした。
もう一回、今度は左の頬を張り飛ばした。
双葉は尻餅をついたまま、俺を睨んでいる。
今まで見せた事の無かった攻撃的な目つきに、俺は、一瞬我を忘れた。

「ふざけるな!!一体誰のために結婚考えてると思ってる!お前のためだろうが!考えてみろ、家に母親がいれば家事も料理も洗濯も気にしなくていいし、部活だって出来るようになるんだぞ?なのにいきなり勉強サボって開き直る奴があるか!それと何だ?親がどうでもいいたあ何だ!はあ?!誰が汗水流して働いて食わせてやってると思ってる!養われの身のくせして生意気言うんじゃねえよ!!」

恩着せがましい言い訳。
食わせてやってる。
養われ。

あいつが聞いたらどう思うかすぐに分かる、
だから、今まで絶対口にしないよう気を付けていた言葉が、ぼろぼろと口の端からこぼれて罵声に変わる。

双葉の表情が凍り付いたのを見て、俺はすぐに「言い過ぎた」と察した。
だが、口に戸は立てられない。言った言葉は戻ってこない。
双葉の唇が、わなわなと震えながら開く。

「…はあ?…何、それ…僕、お母さんが欲しいなんて言った事あったっけ…?家事したくないって、言った?…自分の都合だけで、最初からこそこそ付き合って、後で事後承諾させようとしてたくせに…何で最初からはっきり言ってくれなかったの?好きな人がいるって、どうして相談一つしてくれなかったの?僕が嫌がるとでも思って、説明するのが面倒だったからじゃないの?!…そんなに嫌なら、施設でも何でも入れればいいじゃないか。僕別に構わないし。中学卒業したら、就職して自立しようと思ってたし。一人でもやっていけるよ。もう子供じゃないんだから。…そうだよね。義父さんとは本当は全然関係ないし、僕が居たら好きな事もできないし。鬱陶しいだけだよね」

「待て双葉、そういう意味じゃ」

「じゃあ何?…なんだよ?はっきり言いなよ!!僕が邪魔だって!!結婚の邪魔だから出て行けって言えよ!!…偽善者!大ッ嫌いだ!!」

泣きながらそう叫んで、双葉は部屋を飛び出した。
折り悪くケータイが鳴った事で出鼻をくじかれた俺は、結局双葉を追わず、頭を冷やして帰って来ることを願いつつ、尋ねてきた彼女と深夜まで無言のまま時が経つのを待った。












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