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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

指先の熱。
*
「…双葉。お前は真実を知った。それはきっと前兆、なんだろうな…。遠くない未来、きっとお前は俺の存在に疑問を抱く。そして本当の顔を知るだろう。俺の本当のひととなり、浅ましさ、そして、お前の人生に俺が何をしてしまったのかも…」
「………」
「それを全て知った時、お前がどんな顔をするか、俺には容易に察しがつく。だが、たとえそうなったとしても、そうなるとしても、俺はお前を愛している。血のつながりは無くとも、父親として、家族として…」

「お、とーさん…」
双葉の声が震えている。
俺、やっぱり駄目親だな。
息子を泣かせる事しか出来てないじゃないか。
目の前が、さっきから滲んで仕方ない。

「お前、さっき俺に言ったな。死ぬために戦うんじゃないと。おとーさんも、おとーさんの大切な友達も守りたいから、と。その言葉、忘れるな。戦うなら、生きる為に戦え。そして、力を得たなら大切な者の為に使え。決して、己の我欲に呑まれるな。俺のようになるから」
「…おとーさんは、立派だよ。凄いよ…」
「買いかぶり過ぎだ。俺はそんな偉い人間でも善人でもねえよ。お前の方が、ずっと、強い…だから双葉、良く見ておけ。俺の本当の顔を。…もう、時間が経ち過ぎた。ペルソナを召喚するたび息苦しさが増している…そろそろ、潮時だ…」
「そんな…」

コートの襟首を引っ張るようにして、双葉が胸元にしがみついてくる。
ぎゅ、と首に手を回し、力一杯抱きついてくる。
一瞬、病院の白衣を着た幼い少年の面影が記憶の水底で揺れる。

目を開くと、細い肩が、わなないていた。

「あげる。僕の命分けてあげる。要るなら全部でもいい!
だから、だから…生きて…」
「もういい。お前からそれ以上に良い物貰ってる。貰いすぎたくらいだ…。
だから、これはお返し。俺の家族になってくれた、お前への恩返しだ」
「そんな。…そんなの…」

身に摘まされるような泣き言を聞きたくなくて、そのまま抱きしめ返す。
泣いているのが、震えているのが分かって、陽一は込み上げてくる熱を必死に飲み込んでは胸の奥に押し返す。

「ここ、触っておけ。そして感触を覚えておけ。…もう一度、願わくば来て欲しくないが、ペルソナを使う時が来たら、その感覚を思い出せ」
「……うん」
グリップに仕込まれている、蒼い発光を放つ液体を満たしたラインに指を宛がう。
双葉の細く、しなやかな指が触れる。指先が重なる。
向き合った視線の先にある黒目がちな瞳。
そこにある光は、ほんの少し前までとは違う、前よりも鋭く艶やかな、小さな生の輝きと意志を宿していた。
こいつ、こんなに大人びた顔してたっけな。
寂しくもあるものの、陽一は素直に嬉しかった。

そっと肩を叩き、無言で立ち上がる。
地に顔を伏し俯いたたままの双葉の陰に、一滴、二滴と透明な雫が垂れ、すぐに白いアスファルトに吸い込まれて消えた。












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