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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

我が手に拳銃を。
*

教会の屋根が、突如轟音を響かせてなぎ倒され、地揺れで膝を付く。
パラパラとホコリが周囲に飛び散り、古くさい木材の匂いが周囲の血の臭いと混ざって陽一は二・三度むせ返る。
こんなに満月が大きいと思った試しは無かった。
そして、それを背に受ける化け物を、これほど恐ろしく思う日が来るとも思ってはいなかった。

『 おにごっこー まだ おにごっこー ? もう あきちゃったー 』
教会の外壁をバームクーヘンの表皮を剥がしていくように、胴体から突き出た無数のシャドウの腕でペリペリと剥いていく。
かつての恋人から剥ぎ取ったデスマスクを引き延ばしたような、能面の大蛇に向かい陽一は問いかける。

「…愚者よ。俺はお前が何者なのか知らん。だが、双葉に関わりある事だけは一応知っている」

死神を狙う、という事は双葉を狙うと同意義である。
かつて港区で行われた実験、そして孤島での日向が行った狂気の実験。
それらに関わり産み落とされた、孤島から現れた巨大シャドウ…この姿が、その答えだ。
愛した者を襲う、最愛の女性を模したシャドウ。
実験に使われ、亡くなった二十人の子供。
葉子、双葉、そして日向双次郎。
点と点だけが点在した現実。あと少しで、線が繋がる。
そのきっかけを、自分は握っている。

『 そうだよー フタバちゃん つかまえに きたのー 
  フタバちゃんは おにー おにさん こうたいー 』
「喰われてたまるかよ。双葉は俺の息子だ。お前らは大人しく闇に帰るんだな」

視線で追わないように、目線を『愚者』に固定したまま、陽一は召喚機を耳横に構える。

『 また うつのー ? むり むり むり むり 』
『 フタバちゃんは むり だった おちこぼれ だからね ー 』
『 こわーい こわーい 』

巨大シャドウの腹部に浮き出た無数の孔から、子供のノイズがわあわあと囃し立てる。
大人の頭部は、頭上でにやにやと薄ら笑っている。

握った掌から、喉元の頸動脈から、普段の何十倍もの鼓動が耳の奥に反響して聞こえているように感じられる。
病室で横になっていた時とは比べものにならないほどの、心臓の高鳴り。
自分で設計しておいてナンだが、ここまで精神的に圧迫される代物だったとは。
だが、死を思い鬱々と眠っていた時よりも、ずっと身近に差し迫って感じられる「死」。そして「生」。
生きている、証。

背後で怖々見つめている双葉に背を向けたまま、陽一は口を開く。

「…双葉。これの使い方を教えておく。いつか、きっとお前はこれを使う日が来る。そんな気がする」
「……!」
背後で、双葉が息を呑み、身をすくめたのがはっきり感じ取れた。

「だから、よく見ておけ。…俺の出来る、最後の手助けだ。お前は強い。俺が、一番よく知ってる」
「………」
「生きろ。…だが決して後悔するような生き方だけは、するなよ」

くるり、と指先で一回転させ、陽一は素早く銃口をこめかみに当てると、その引き金をためらわずに引いた。












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