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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

白銀の騎手。
*

鼓動。
全身を駆け抜ける血潮。

「生」と共に、己の内に内在していた「意志」が再び実を結ぶ瞬間。

耳の付け根で、炸裂音が聞こえた。

つきぬけるような高揚感。
性的な絶頂とは真逆の、全力疾走し続けた後の心地よい疲労とも重なる、力の解放。

精神の解放。顕在化。
最初に解き放ったあの時と同じ、逆らい難い快感が足底から脳天を一瞬に貫く。

新しい意志の結晶が、足下から弧を描き、目映い光を放ち、立ち現れる。
それは目の前に立ち塞がる全てを白く塗りつぶし、世界を光で満たした。

*
足下から立ち現れた光は、螺旋の弧を描いて陽一を包み、光は彼の周囲を回る間に透き通った結晶となり、光を溢しながら彼の頭上で幻影を描き始めた。
最初は彼の本来のペルソナであるスーリヤの幻影が形を為し、その幻影を包み込むように光のヴェールがスーリヤを覆う。
光の幕内で幻影は更に姿を変え、うっすらと視認出来る幻の形は、スーリヤよりも一回り大きく、また遠くにいても肌で感じられる程の、純粋で高潔な波動を放っていた。
ヴェールを自ら掻き消し、光をまとった白光の幻影が姿を現す。

純銀に輝くたてがみをなびかせる、顔の上半分を覆う白銀の兜。
兜の額中央に、生気を放つ紅玉の瞳を模した金細工が眼前の敵を見据えている。
兜から顔全体を包むように垂れた真珠色の生地に覆われるように、肩からは四本の手が伸びている。
白地に銀糸の刺繍を施したベスト、白銀のライティングブーツに身を包んだ、中世の騎手を思わせる精悍な男のペルソナ。
騎手の姿を模した神の幻影は、兜の下にもう一つ蒼い瞳を覗かせながら、手にした短鞭を乾いた真冬の大気にしならせた。

『 我は汝 汝は我 … 我 汝の心の海より出でし者… 』

自分が今の双葉と同じ歳だった頃、最初の邂逅で耳の奥に聞いた「もう一人の自分」の声。
今再び、あの時と同じ、迷い無い澄み切った男の声が聞こえる。

『 我等は母なる暁に先んじ、世界を駆け抜け目覚めの夜露をもたらす者。
  理性のたてがみを駆り、全ての生命に救いを与える者なり。

  我が名はアシュヴィン。罪を救い、癒すは我等が使命。

  常に人と並び立ち、病める者傷つきし者と共に在る。
  我が現身なる男よ。安息の夜を歪め常闇を産まんとする存在を排除する。
  我等が加護を授けよう。存分に使うがいい… 』

白き騎手=アシュヴィンと名乗る己の幻影を背に、陽一は沸き上がる力の気質が変化していくのを静かに感じていた。
スーリヤのもたらす真夏の太陽を思わせる熱量とは異なる、内から静かに絶えることなく湧き出し続ける力の波動。
産まれてからずっと否定し続けてきた、自分の内にある一握りの善性が、形を為して力の波動となり、光の化身に昇華しているように感じる。

そうだ。憎しみで戦うんじゃない。
守るために。明日へ、繋ぐために。
決意が人を強くするなら、俺は心の底から幾らでも願おう。

頭上高く見下ろす蛇を見据え、陽一は左手にヨーヨーを持ち替え、繰り糸に指を通す。
あの蛇は俺だ。あの日の過ちの形。憤怒と嫉妬の亡者…。

どす黒い負の感情にとぐろを巻く巨大な蛇。
それに立ち向かう、アスファルトに散らばった細かなガラスの破片にも似た、微かな光でしかない小さな己。
それでも、負ける勝負だとは思わない。
覚悟と決心を胸に、陽一は『愚者』へと挑みかかった。












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