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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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対峙。
*

予想される衝撃波の第一波を後方に飛び退いて避けると、次の瞬間、直前まで立っていた地点に透明な魔力の塊が鉄槌となって下り、地を砕き舗装タイルを叩き割る。砕けた破片が周囲に飛び散り、飛礫と砂埃になって頭上に降り注ぐ。とっさにコートを脱いで袖口を持って振り回し、大粒の石ころや砂煙を払い除けて素早く羽織直すと、ふと見上げた女蛇の裂けた口元に、いまにもこぼれ落ちそうなほどに業火がゆらゆらと詰まっていた。

『 せいいぃぃぃ!! 』
業火が吹きかけられる瞬間、すでに陽一は銃口をこめかみに向けていた。
「効かねえよバカが!」
銃口から乾いた炸裂音が耳の奥にこだまする。
白銀の騎手が即座に頭上へと姿を現し、素早く印を切るとその指先から猛烈な氷と雹の寒波が解き放たれる。
頭上から吐き出された業火はたちまち押し返され、代わりに女の口元にめいっぱいの寒波と凍えきった氷の刃が雨霰と食い込み、女の顔は裂けきった口元を開いたまま奇怪な叫び声を上げて口を押さえ悶えた。

『(先輩、成瀬先輩聞こえますか!?)』
絶妙なタイミングで、今度は榎本のテレパシーが脳内に響いてきた。
「ああ、感度良好!報告頼む」
『(はい!…愚者、今のところ火炎と斬撃に高い耐性を示しています。呪殺、破魔による一撃死は限りなく効果薄。ただ…)』
「ただ、何だ?」
『(シーサーが新たな状態変化を僅かに感知。アナライズ結果が揺らいでいます…なんでしょう、内部で激しい化学変化が起こっているような…何か嫌な予感がバリバリします。気をつけてください!)』
「了解、では引き続きアナライズを継続願う」
『(ラジャーっす)』
ペルソナの思念波を用いた通信を確保しつつ、眼前の敵を見据えて陽一は召喚機をゆるやかに構える。

『 いたい いたい いたいいいいい 』
口元を押さえたまま、鎌首を激しく揺さぶって悶絶する『愚者』の下腹部、たるんだ胴体の孔から幼い声が合唱のように多重になって響く。

『 こうたい こうたいー 』
『 つぎのこに こうたい だよー 』
『 こうたい こうたい こうたーい 』

「交代…?」
嫌な予感はすぐに現実となった。

「0」の番号が入った白磁のマスカレードを掴むと、『愚者』は地を震わせるような咆吼を上げる。
すると、腹部や胴体の孔という孔から薄く暗褐色に染まったヘドロ臭のする煙がするすると立ち上り、巨大な女の顔面を覆う。

『 ををっ をををををっ ををををを 』

裏声で天の濃緑色に染まった満月に吠えかかる。
パキン、と薄い氷が割れるような音がしたかと思うと、『愚者』の表面を覆っていたどす黒いタールの鱗がみるみるうちに淡いペールブルーの光沢に変色していく。全身の表皮が青く淡いぬめりに生まれ変わると、女の頭部がにたりと笑って陽一を見下ろした。

顔を縁取るマスカレードは紫の女王様型に変化し、額の番号は「2」に変容していた。

『 つぎはー まゆこ ちゃん だよー 』
『 いちばんの かずきくんは きょうは おやすみー ? 』
『 ちがう ちがう さっき ふたばちゃんの じゃました から おねんねー 』
『 じゃあァあ まゆこちゃん まゆこちゃんの ペルソナー 』
『 つぎは あゆり ちゃん だねー 』

腹部の孔たちが、口々に囁く。
「まゆこ…かずき…」
呟いて、口に出して、陽一はその名前が何なのかすぐに気がついた。
瞼の奥に焼き付いて離れない、古ぼけたインクの羅列。

タカダイラ カズキ 【1】魔術師 
アサカズラ マユコ 【2】女教皇
クシナダ  アユリ 【3】女帝 


あの孤島で亡くなった子供のリスト。
中でもとりわけ酷い、「宣告者」の実験で亡くなった子供達20人の氏名。
皮肉な話だが、今でもそらで言える。
実験の引き金の一つは、自分が引いたようなものだったから。

『(先輩!やっぱり思った通りです!属性変化しました!奴に冷気は効きません!それどころか、さっきアナライズした火炎と斬撃の耐性はほぼ無効化しています!…先輩?先輩!!)』
一瞬、過去の残滓に気を取られ、目前の気配の挙動に気がつかなかった。
榎本の思念波ではっとなり、見上げるより早く、横殴りの『愚者』の手刀で自分の身体は左へと叩きつけられていた。
「のわっっ…!」
老朽化した赤煉瓦の壁に叩きつけられ、受け身も取れなかったために思い切り打ち付けた背中に鈍痛が走った。

「2」の仮面を身につけた女蛇の顔がにやりと下卑た笑いを浮かべる。

『 これで れいき きかない おまえ やつざきに してやるぅぅぅぅ !!』

よろよろと土埃の中立ち上がると、第二の拳を辛うじてしゃがんで避け、瓦礫を避けるようにして地を転がり跳ね起きる。
妖しいほどに照りつける月光を全身に浴び、『愚者』は艶めかしく照る全身を見せつけ陽一を見下ろしていた。

「お前…ペルソナチェンジできるのか」

『 できる できるとも おまえにできない こと なんでも できる

  これ アルカナ シフト 。
  ペルソナ じゆうに かえられる 。
  べんり べんり おまえ むり だろ ?
 
  おまえは ごみ くず かす 
  ふたばは わたしの いけにえ 
  あいつ たべる たべる じゆう じゆう じゆう 』

「ああそうかい。なら死んでもてめえをご臨終させてやるよ。そうすりゃめでたく皆自由だ!」

陽一は、目の前の女蛇が浮かべた嘲りの笑みに、腹の底から怒りと苛立ちを感じていた。
そう、苛立ち。
意図的ではないのかもしれないが、葉子の顔を模したようにしか見えない頭部の形状に、陽一は得体の知れない違和感と苛立ちを感じていた。
あの美しく誠実だった彼女を貶め、嘲っているかのような、『愚者』の中心となっている存在は、なんだ。

幻と夢の狭間、試練の中で見た「這い寄る混沌」…もう一人の悪しき自分の横顔と侮蔑の相が思い出されて陽一は身震いした。
これは、死んだ子供達の双葉に対する悪意の結晶…?
そう思えばわかりやすいのに、何か腑に落ちない。

何か、見落としているよな、そんな気がする。
どちらにしろ、ためらっている暇などないが。

陽一は引き金に指を絡める。
火炎や氷結が効かなくても、手はまだある。
どんな手を使っても、倒す。

陽一がまだ諦めていないと目を見て悟り、『愚者』は仮面の奥で愚かな人間をせせら笑った。

どうせむだなのに。
心の片隅で、そっと、呟き吐き捨てた。












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