問いかけ。
*
『 むだ むだ むだ むだ ああああ ! 』
足下へ立ち塞がる陽一を嘲笑し、『愚者』は彼の頭上に雷撃の束を幾重にも振らせる。
「それこそ無駄だっ!!」
陽一も負けじと、己の頭上から双葉と榎本が居るあたりまで白光の障壁で包み込み電撃を弾き返す。
既に教会の前半分は瓦礫と化し、追い打ちをかけるように降り注いだ電撃の雨に、屋根部分は完全に瓦解し、轟音と共に土煙を周囲に巻き上げる。
ふいに、古い土塀の匂いを含んだ土煙が予想以上に巻き起こった事で目や鼻に入り、陽一がコートの裾で顔を覆って咳ごむと、見逃さず今度は黒い思念の塊で創られたアローレインが文字通り雨の如く陽一を襲った。
二の腕や太股をかすめ、抉る痛みが身体のあちこちを貫く。一瞬遠のきかけた意識を捕まえると、陽一は痛みをこらえ召喚機をこめかみに当てる。
「くそっ…アシュヴィン!来いっ!」
『 うざい うざい うざい しね しね しねえええ 』
陽一がペルソナ召喚するタイミングに合わせ、『愚者』の拳が陽一の腹部へめり込み後方へ弾き飛ばす。
血反吐を吐いて無様に地面に転がるも、その全身を清い白光が包んだ。
寸での所で傷を治癒させ立ち上がるも、全身に直前の拳の一撃の余韻が残り、頭はクラクラする。
膝が訳もなく笑う。胸を張って立ちたいのに、手を膝について踏ん張っていないと血の気が回らない。
『 あっっははは きったなーい よっわーい あははははは… 』
わざわざ指さし、『愚者』は手を叩いて陽一を嘲る。
本当に子供だ。図体のでかいだけの、幼い優越感。
もっと大人らしい態度と、毅然とした対応をしたいものだが、頭にくる事この上ない。
影時間の影響だろうか。
さっきから、イライラしてばかりいる。
普段の精神状態なら、スライムやマーヤにもカリカリした覚えなぞないのだが。
『 もう こうさん したらー ?
おまえ たべても まずそうだし
フタバちゃん たべさせてくれたら にがしてあげても いいよー 』
「ああそうかい。余計な世話だよ。お断りだ」
やせ我慢して声を張り上げたのが気に入らなかったのか、『愚者』は眉をひそめる。
『 どうして どうして かばう
フタバちゃん おまえ たにん
みすてて にげたら いいのに 』
「他人、なあ…」
どうやら、『愚者』は心の底からそう思っているらしい。
土色に変色した水蛇色の胴体から伸びた細長いぺらぺらの手を振り、上へ向け、外人風の「理解デキナーイ」リアクションをコミカルに演じる。
変な事を聞く。
陽一は、可笑しくなって笑みを溢す。
「分からんかな」
『 わからない よわいやつ いらないこ とくべつでないもの
みんな きえても せかいは かわらない
なら べつに いなくなっても いいじゃない ? 』
「………」
『 フタバちゃん よわいこ いらないこ
うまれなくても よかったこ
みんな みんな そういってた
このよは えらばれたそんざい とくべつなもの
それだけのために あるのよ
おまえも いらないにんげん だけど わたしは とくべつ
おまえ ゆるしてやる いきるの ゆるす
だから フタバちゃん たべさせろ 』
どうやら『愚者』は、俺に最大限の譲歩を勧めてきたらしい。
その口元に、ベテランセールスマンのような安っぽい微笑みを浮かべている。
沈黙が周囲を包む。
双葉も、榎本も、思わず身を硬くし、固唾を飲んで動向を見守った。
…
………
…………
陽一は、思わず思いっきり吹き出して、大声で笑った。
あまりの馬鹿馬鹿しさに、笑うしかなかった。
「ククク…アハハハハッハハ!…そうか、生きるのは許されてるってか!」
『 ? どうした おまえ ほんとうに ばかに なったか ? 』
「違う違う。逆だ」
『 ぎゃく 』
召喚機を持ったまま、陽一はへらへらと手を左右に振る。
『愚者』は右斜め四十五度に、首を傾げて硬直する。
小動物の如く、可愛くいぶかしがる『愚者』を前に、陽一の顔からスッと、笑みが消えた。
「そうそう………お前が、心底馬鹿だって、はっきり分かったんだよ!!」
『 なっ なあああ?!』
陽一の言っている意味が分からず、『愚者』は唐突に叫んで顔をしかめた。
『 むだ むだ むだ むだ ああああ ! 』
足下へ立ち塞がる陽一を嘲笑し、『愚者』は彼の頭上に雷撃の束を幾重にも振らせる。
「それこそ無駄だっ!!」
陽一も負けじと、己の頭上から双葉と榎本が居るあたりまで白光の障壁で包み込み電撃を弾き返す。
既に教会の前半分は瓦礫と化し、追い打ちをかけるように降り注いだ電撃の雨に、屋根部分は完全に瓦解し、轟音と共に土煙を周囲に巻き上げる。
ふいに、古い土塀の匂いを含んだ土煙が予想以上に巻き起こった事で目や鼻に入り、陽一がコートの裾で顔を覆って咳ごむと、見逃さず今度は黒い思念の塊で創られたアローレインが文字通り雨の如く陽一を襲った。
二の腕や太股をかすめ、抉る痛みが身体のあちこちを貫く。一瞬遠のきかけた意識を捕まえると、陽一は痛みをこらえ召喚機をこめかみに当てる。
「くそっ…アシュヴィン!来いっ!」
『 うざい うざい うざい しね しね しねえええ 』
陽一がペルソナ召喚するタイミングに合わせ、『愚者』の拳が陽一の腹部へめり込み後方へ弾き飛ばす。
血反吐を吐いて無様に地面に転がるも、その全身を清い白光が包んだ。
寸での所で傷を治癒させ立ち上がるも、全身に直前の拳の一撃の余韻が残り、頭はクラクラする。
膝が訳もなく笑う。胸を張って立ちたいのに、手を膝について踏ん張っていないと血の気が回らない。
『 あっっははは きったなーい よっわーい あははははは… 』
わざわざ指さし、『愚者』は手を叩いて陽一を嘲る。
本当に子供だ。図体のでかいだけの、幼い優越感。
もっと大人らしい態度と、毅然とした対応をしたいものだが、頭にくる事この上ない。
影時間の影響だろうか。
さっきから、イライラしてばかりいる。
普段の精神状態なら、スライムやマーヤにもカリカリした覚えなぞないのだが。
『 もう こうさん したらー ?
おまえ たべても まずそうだし
フタバちゃん たべさせてくれたら にがしてあげても いいよー 』
「ああそうかい。余計な世話だよ。お断りだ」
やせ我慢して声を張り上げたのが気に入らなかったのか、『愚者』は眉をひそめる。
『 どうして どうして かばう
フタバちゃん おまえ たにん
みすてて にげたら いいのに 』
「他人、なあ…」
どうやら、『愚者』は心の底からそう思っているらしい。
土色に変色した水蛇色の胴体から伸びた細長いぺらぺらの手を振り、上へ向け、外人風の「理解デキナーイ」リアクションをコミカルに演じる。
変な事を聞く。
陽一は、可笑しくなって笑みを溢す。
「分からんかな」
『 わからない よわいやつ いらないこ とくべつでないもの
みんな きえても せかいは かわらない
なら べつに いなくなっても いいじゃない ? 』
「………」
『 フタバちゃん よわいこ いらないこ
うまれなくても よかったこ
みんな みんな そういってた
このよは えらばれたそんざい とくべつなもの
それだけのために あるのよ
おまえも いらないにんげん だけど わたしは とくべつ
おまえ ゆるしてやる いきるの ゆるす
だから フタバちゃん たべさせろ 』
どうやら『愚者』は、俺に最大限の譲歩を勧めてきたらしい。
その口元に、ベテランセールスマンのような安っぽい微笑みを浮かべている。
沈黙が周囲を包む。
双葉も、榎本も、思わず身を硬くし、固唾を飲んで動向を見守った。
…
………
…………
陽一は、思わず思いっきり吹き出して、大声で笑った。
あまりの馬鹿馬鹿しさに、笑うしかなかった。
「ククク…アハハハハッハハ!…そうか、生きるのは許されてるってか!」
『 ? どうした おまえ ほんとうに ばかに なったか ? 』
「違う違う。逆だ」
『 ぎゃく 』
召喚機を持ったまま、陽一はへらへらと手を左右に振る。
『愚者』は右斜め四十五度に、首を傾げて硬直する。
小動物の如く、可愛くいぶかしがる『愚者』を前に、陽一の顔からスッと、笑みが消えた。
「そうそう………お前が、心底馬鹿だって、はっきり分かったんだよ!!」
『 なっ なあああ?!』
陽一の言っている意味が分からず、『愚者』は唐突に叫んで顔をしかめた。
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