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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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退けぬ思い。
*
『 う゛ うう をおををおお 』
呻きながら、だらしなく口元を溶解させたまま、『愚者』は陽一を憎悪の視線で射抜く。
陽一は、憎悪の奥の底知れぬ憤怒を全身にビリビリと感じながら、だが真っ直ぐ背筋を正して『愚者』を見つめていた。

「『愚者』。俺はお前達に同情する。そして、限りなく悲哀を感じる。
そして、子供のお前等にこんな事を感じるのは筋違いだと分かっているが、怒りも覚えた。
お前達は、皆見たこともない世界の巨悪を倒す事を夢見、隣にいる友達を内心で差別化し、見下した。
大人に与えられた使命を嘘っぱちだと知りながら、それに追いすがったまま、かつて敵であったはずのシャドウの母に従っている。
可笑しな話だ」

『 う うううううるさい !! 』

「そしてもう一つ。双葉を追う事を、鬼ごっこだと、お前達は言っていた。最初から食べて力を得るなら、普通に「食べる」と表現しそうなものなのに。これまた可笑しなこった。…なあ、お前達。本当に、双葉を殺す気か?」

『 ・・・ 』

「双葉からペルソナを取り上げるだけなら、精神を奈落に蹴落としシャドウとして収集すればいい。
だが、そうしなかった。何故か?…お前達は、双葉を殺す気なんかない。
…乗っ取るつもり、だからだ。
双葉と、双葉の内に潜む死神を取り込み、もう一度「成瀬双葉」という人間の皮をかぶって生活するために」

『なっ…なんですって先輩!それどういう事ですか!?』
榎本の動転した思念波に答えるように、陽一は「エウリュディケだ」と答えた。

「…あれは、ペルソナを制御するものなんだろう?榎本」
『は、はい…そんな事、言ってたような…』
「なら、日向がわざわざペルソナ移植を施し強力なペルソナ使いを創ろうとした理由も頷ける。「宣告者」を自分たちで制御出来る兵器にしたかったんだろう。そして、それの被験者は…」

双葉。
榎本のビジョンスキャンを通して見たあいつの精神に、無数に巣くっていたペルソナの陰をまざまざと思い出す。
双葉の精神に食い込み、くっきりとした輪郭を保ち、乾ききった心の地平に張り付いて離れなかった、死者たちの仮面。
それが「エウリュディケ」と呼ばれたプログラムの跡だったなら、それは彼らのシャドウ化に少なからず影響しているだろう。
消えるはずだった死者の精神が、霊魂とは別の形で心の海に還される事無くこの世に残され、統率していた存在から引き剥がされ打ち捨てられたのだ。
かつて一つだった魂は砕けても、欠片の一つ一つが意志を持つのだろうか。
肉体の一部が消えても人は死なないように、魂の一部だけならすぐにかき消えてしまいそうなものなのに。
だが、現に心の欠片は無数にかき集められ化け物になり果てている。
いや。心そのものが魂なら、今ここで苦しんでいるシャドウは、死者の霊魂の集合体とも言える。
幼く無知な死者達が、悪意に満ちた異形の母神にそそのかされてしようとしている事。
それは。

「かつて、お前達は双葉の精神に宿り、あいつの精神の中に囚われた。
ペルソナの「素養」と言う形であいつに移植されてな。
随分、双葉を恨んでいたんだろう。だから、考えた。
今度は、双葉の精神を乗っ取って、精神に今一度潜み、
もう一度人間としての「生」を得ようと双葉を狙った。違うか?」

『愚者』は答えない。ただ、美しく整えていた相貌に、醜い小皺を幾筋も浮き彫りにして陽一を睨め付ける。

「…シャドウは精神の魔物だ。影時間の間しか移動も出来ないし、世界に干渉出来ん。しかもその質量だ。人の精神を乗っ取ろうにも巨大すぎたんじゃないのか?お前等みたいなのに取り憑かれたら、普通なら発狂しちまうよ」

『 たべた いっぱい たべた 
  でも たりない すぐに やぶける 
  だけど フタバちゃんは とくべつ 
  しにがみ おなかに はいってる
  おおきな シャドウ はいっても へいき
  だから しにがみ たべて どかして はいる 
  もういちど にんげん なる にんげん したい したい 』
『 アイスクリーム オムライス カレー 』
『 おにんぎょうー りかちゃーん 』
『 ドッジ やきゅう さっかー する するうう 』

夜の闇に、『愚者』の、死した子供達の嘆きが響き渡る。
悲しい、死者のこだまが冷え切った夜空を震わせた。

「…だろうな。だが、そうさせる訳にはいかんよ。
何十人もの人間の意志が一つの身体に収まってみろ、すぐに食い物や行動でケンカしちまうさ。
端から見てれば、一人の人間が右を見ながら左へ行きたい、っつうようなちぐはぐが起こって、社会生活すら成り立たなくなるだろう。
…お前達は既に死んでいるんだ。死者は、静かに冥土に行きな。
前世からの約束で戦士になったなら、今は成仏して来世で正義の味方になるんだな。
それが嫌だっていうなら俺が、悪い大人の代表として、
お前達に責任を持って引導を渡してやるよ」

『 い いやだあああああ 』
『 できないいいいいい 』
『 もっかい もういっかい いきかえるンだ だけど だけど 』
『 ままが ままが だめだって いってた 』
『 しにがみ つれて こないと だめだって 』
『 はなして くれない きえない でていけない だから だから 』
『 ままの いうこと きいて フタバ たべる 』
『 フタバ わるいこ ころしても いいいこ 』

下腹部の孔が囁く嘆きに、陽一は目を伏せ悲しみをこらえる。

「たとえどれだけお前達が苦しんでいたとしても、
俺はお前達の前から退く気は無い。
だが、シャドウのママの呪縛からは、何としても解放してやる。

それともう一つ。…双葉は、死んでもいい子、なんかじゃない。

俺は、あんなに素直で、優しくて、他者の心を気遣う子供を知らない。
ペルソナが火の玉一つ使えなかったからってそれが何だ?
見下し優越感を覚え、自分たちの思うとおりにしようとしてもいいのか?
恨み言ならお前達が昇天する前に、地獄に堕ちた日向に向かって十万遍でも百万遍でも罵ってやるんだな。
自分たちの苦痛と身勝手な欲望を正当化して甘えるな!
それが選ばれた戦士のする事か!」

『 だまれ だまれ だまれええええええ 』

『愚者』の引きつった女蛇の頭部から、どす黒い負のエネルギーが球体を為し、陽一に向かって吐き出される。
すぐさま引き金を引いた陽一の頭上に騎手の幻影が現れ、万魔の波動を最大出力で放出し、球体を押し返し、火花がはぜる。
空中で力量のせめぎ合いが続き、白と黒の波動は渦となり激しい爆発を起こして炸裂し、天地を揺らした。

陽一は視界が一瞬白くなり、全身が地面に叩きつけられる。
意識が一瞬揺らぐ。
脳裏にかすめたのは、懐かしくそしてカビくさい、在りし日の地下研究所のラボでの情景だった。












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