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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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それは、いつも隣にあった。
*

「男は、戦闘ブースのすぐ側にあるメインモニターで担当者に指示し、自分の研究シャドウに攻撃をけしかけさせ続けた。
当然、シャドウは攻撃を受け続け、それを吸収し続けた。
モニタ上の表示は変わらない。しかし、それを数十分続け、直接攻撃の波状攻撃の後、魔法を乱発された後に、それは突然起こった。

異常事態は、一瞬で発生し、一瞬で収束した。
目の前で、突然シャドウが風船のようにぼこぼこぶくぶくと一気に膨張したかとおもった次の瞬間、破裂した。

張りつめていた風船をハリで突いた、あんな感じで、ものの見事にぱちんといったらしい。
男は爺がすぐ隣にいるのも忘れて、爺を押しのけてすぐに戦闘ブースに侵入した。
そこには、まだシャドウが回収されずに残されていたにもかかわらず、だ。
周囲の者は男が一瞬の惨事で錯乱したせいだと思ったらしいが、男にはどうしても回収したいものがあった。
材料に密かに組み込んでいた、黄昏の羽…その欠片を、な」

「んなもん、どうやって…あれ、貴重品だろ?」
「だから、岳羽主任の逆鱗に触れたんじゃないのか?
…大方、あの部所にいる際にくすねたんだろうんさ」
「あー…」

「…男は、大声でわめきながらブースの中央に侵入し、突然の闖入者に戸惑うシャドウを尻目に、研究シャドウのいた辺りを血眼で探した。
親指大の、その欠片はあった。男は驚喜し、掴み上げ、思わず叫んだ。
『これでまた研究が続けられる!』とな。
その声が終わらぬ間に、歓喜の声は絶叫に変わった。
手にしていた欠片から、消えたはずの研究シャドウの手だけが幻影の如く現れて、男の胸を貫いたからだ。
男が呆然と掲げた欠片から出てきた幻の黒い腕を見つめながら絶命した瞬間、ブース全体によく聞こえる声で、シャドウのノイズ混じりな肉声が響きわたった。その声は、通常のシャドウと比べて酷く幼く、またはっきり聞こえたものの、か細い泣き声のように聞こえたそうだ。

『パパ、ぼくがしんで かなしくないの』…とな。

男は、自分の研究データに二重三重のロックを仕込んでいたそうだ。お陰で、今もって研究の再開のめどは、立っていない
俺達の地位は安泰、という話だ」

「シャドウは、どうなった?」
「男の死を見届けて、羽の欠片を残して消失したそうだ。…無理も無い。そもそも実験とはいえあり得ない耐性を無理に植え付けようとしたのだからな。やはりひずみが生じ、シャドウそのものの兵器転用には至らなかった、という寸法だ。そもそも、シャドウが人と馴れ合う事は稀だ。きっと、これからも相容れる事はなかろうな」
「まあ、な。しかし…あれもまた、俺達の精神から産まれた代物なのだろう?色々考えさせられるな」
「らしくないな」
「うん?」
「今日のお前は考えすぎだ。もっとシンプルにしろ。
…要は、人だろうがシャドウだろうが、度を過ぎ世界の倫理、調和を崩すような事を考えれば、必ずしっぺ返しが来るって事だ。
完璧な人間がいないように、完璧なシャドウもまた、存在しない。それが分かっただけでも、良しとせねばな」
「ふむ。しかし、正直俺はもっとペルソナの能力を上げたいもんだよ。それこそ、万能戦士みたいな」
堂島は、先程までの殺気が嘘のように、静かに微笑んでいた。

「…欠けているから、いいんだ。欠けがあるからこそ、人は補うために努力出来る。他者と触れ合う喜びを分かち合える。
己に無く、他人にあるものを感じ取り、理解する。そうやって産みだしたモノにこそ、単体の完璧な存在よりももっと深く大きな強みと力が宿ると、俺は信じている。
いたずらに、あり得ない存在を夢想するのではなく、地に足が付いたまっとうなモノをこしらえたいものだな、主任?」

堂島の語りに聞き入っていた俺の周囲や背後から、「そうっすね」「だよなー」などと、口々に誰もかれもの声が聞こえた。
その時になって、やっと気がついた。

当時、俺はガラティアの製作に煮詰まり、チームの室内でも所在なく煩悶する日々を繰り返していた。

堂島は、きっと俺の焦りと心情を察したのだろう。
躍起になって「完璧」に拘らなくていい。

「自分たち」が、支えるからと。

あの時の連帯感は生涯忘れられない宝であり、
そして悔恨を心に落とす陰でもあった。

俺は彼らに何をしてやれていたのだろう。
何故、そんなに慕われていたのだろう。
ペルソナ使いなら、それとなく分かっていたはずだろうに。
俺という、人間の浅はかさを。

だけど。

後悔よりも先に、胸を覆うこの感情は何だ。
あの日、あの場所で感じていた。
そして、気付けば双葉の隣で感じていた思い。

絆。

俺に真に力を与えていたのは、仲間であり、親友であり、そして最愛の義理の息子の存在だった。
どれだけ多くの絆を、掌からこぼしたか知れない。
だが、もう一つの砂粒も取りこぼす気はない。

失う痛みを知ったから。
守る喜びを、教えられたから。

幾度も幾度も、俺は己に銃口を突きつける。
引き金を、引く。
幾千、幾万の否定的な己が「死」に、幾千、幾万の「死」に立ち向かう己が立ち上る。

頭上に具象化した白銀の騎手が、誇らしげに微笑んだように見えた。
幾らでも。
幾らでも俺は俺を殺して、俺は「己」と共にお前に立ち向かおう。

『愚者』は態度を変える事なく、今も眼前に立ち塞がっている。
愛したあの人の頭部を付けて。

だが、その全身を覆う黒い鱗の下、黒曜石の皮膚は肉が盛り上がり、ボンレスハムの如くぴちぴちに張りつめている。

そろそろ潮時だ。

「ケリをつけようか」
俺は、ためらわず手にしたリボルバーの引き金を、引いた。












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