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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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厚い黒皮の下。
*

『 むだ むだ むだー むむっむむだっだだ 』
酔っぱらったように呂律の回っていない女蛇の口元から、だらりと先の尖った黒い舌が垂れ下がる。
「9」以降、アルカナシフトを断続的に行いながら、現在「12」まで変容した白磁の仮面の下で、黒曜の肌が、頬が、表面を焦がしたバターの如くぬるぬるした粘液を表皮にじっとりと浮かべて喘いでいる。
当初、シフトを繰り返す毎に変化していた体色は、いつしかシャドウ本来の黒々としたタール色に覆われるのみとなり、全身の表面に粘液が広がっていくのが分かった。

「強がりだな。クールダウンさせてやるよ」
陽一は背筋を伸ばしたまま、拳銃型召喚機をこめかみに構え、引き金を放つ。
白銀の騎手から、厳冬の底冷えよりも凍る吹雪が舞い降り、『愚者』の全身を下から上に向かって上昇し、黒い皮膚を、寒空に音を切って舞い上がった。

『 う ううっ う うお をを をををを! 』
初めて、吸収耐性の術を見に受けて『愚者』が苦痛を露わにする。胸を仰け反らせ、顔面を庇うように薄っぺらい腕を交差させ、氷の烈風を凌ぐも、ブリザードが過ぎ去った黒い皮膚の上は幾重にも粘液が折り重なり、ぼたぼたと地に落ち地面を緋色に汚した。
墨を落としたような、濁った血溜まり。
どす黒い蛇の全身を流れ落ちる、人の血液とは異なる、生臭い腐臭を伴う赤黒い鮮血。
「むだむだむだむだ…」と一つ覚えのように虚ろに呟く『愚者』の這いずる足下に二カ所、三カ所、五カ所と、血染みは増え続けた。

『先輩!アナライズ…数値振り切れました!というより…アナライズできる以上のエネルギーを蓄積した様子です!
どうします?何が起こるのか正直予想がつきません!』
榎本の思念波通信に、陽一の口元にもやっと安堵の笑みが微かにこぼれた。
「そうか。そろそろ頃合いだな」
『後、誰かこちらに接近してくる気配を察知しました。多分…というか』
「分かってる。あいつが来る前に、ケリつけとくさ」

陽一の手の中で、拳銃が一回転し、再び頭部に固定される。
「最大火力!」
陽一の全身から揺らめき出でた光の結晶が、彼の現身=アシュヴィンを具象化させる。
兜飾りに施された赤い瞳と、兜から覗く蒼い瞳が、同時に瞬き四本の腕が同時に印を切った。
「…マハラギダイン!」
今まで詠唱した火炎の渦とは大きさも熱量も段違いの、業火の巨大な槍が『愚者』に迫る。

『 あっ がっ をををっ ををっおををををを!! 』
『愚者』の薄い腕が、一瞬にして筋肉で盛り上がり、業火の槍を押し止めようと魔法の障壁を展開する。
陽一は身じろぎもせず、直立不動のまま、額に汗をうっすらと浮かべ己の放った力の行く末を見つめていた。

業火は『愚者』の掌に阻まれ、金属が高速で擦れ合うような衝撃音を伴い、宙空で断続的に衝撃波を放ちせめぎ合った。
びりびりと、半壊したチャペルをエネルギーの抵抗に伴う振動波が震わせ表壁を細かに砕く。
粉砕された塵が、断続的に揺れる地面で砂埃となり、周囲を白く煙らせる。
陽一の背後に居る榎本と双葉も、全身で襲い来る振動波に負けじと、身を低くして抵抗する。

向かい合った一人と一体だけが、ぶつかりあうエネルギーの只中に立ち睨み合っている。

時折全身を叩きつける暴風を堪えながら、双葉は蛇と対峙する義父を見上げる。
意識の根底が、圧倒的な力の津波に、震えている。

震える。
震え。

骨の奥にまで染みついている、心を揺さぶる感情。
この感覚は、恐怖。

恐怖?
僕は…まだ、何を畏れている?
死ぬのは怖くない。
ペルソナも、シャドウも恐ろしくはない。感覚が麻痺してるのかもしれないけれど。

そんな、物理的な恐怖じゃない。
もっと、恐ろしい事。

僕が、本当に、畏れている、「何か」。
心にいつしかカケテいた、感情…。

「 キヅイテ 」

頭の奥で、微かな声が聞こえた。

「 ソシテ ヨンデ ボクヲ フタバ 」

坊やが囁く。小さな、僕以外に誰にも聞こえない声で。

「 モウスグ サイゴノ カギガ オリテクル 」
「 ソウシタラ 」

坊やが、本当に嬉しそうに、耳元で微笑ったきがした。

「 キミノ オソレ スベテ ヲ モヤソウ 」

「 ヨンデ 」
「 ボクヲ ヨンデ 」

特別甘い囁きで、坊やは僕の耳元に呟く。

「 ママ 」

心臓が飛び出しそうな程に、高鳴ったのが分かった。
背中を、冷や汗がどっと伝う。

畏れ。
母親。

ママ。

そっか。

そうだ。
そうだったのか。

僕が怖かったのは、僕を産んだおかあさんじゃなかった。
僕が、僕が本当に、怖かったのは…。












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