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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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深夜。

「…遅いね、双葉君」
気に掛けているようで、どこか落ち着きのないそぶり。
彼女は三十分前から気もそぞろに狭い部屋のあちらこちらをうろうろしてばかりいる。
さっきからずっと双葉を気にする言葉をしているが、どこか空々しい。
「まあな」
生返事を返し、陽一は時計を見上げる。

0時5分前。
非常に、まずい。
やはり、あの時彼女の電話など放って追いかければ良かったか…。

「…ねえ」
「うん?」
「彼、もうどこか友達の家にでもお泊まりしてるんじゃないかしら?きっとそうよ」
「あいつが、友達のウチに、ねえ…」
にわかに考えにくい。というより、想像できない。
布団を並べて深刻な家庭の話が出来るような深い間柄の友人など、内向的な双葉に果たしているだろうか…。
「だから…こっちも楽しまない?」
「?」
「やあね、据え膳してあげてるのに」
そういうと、彼女はそっと俺の腰掛けていたソファの隣に座り、甘えるように擦り寄ってきた。
「成瀬さん、もっと軽いのかと思ってたのに結構奥手でお堅いから」
「そうかい、そりゃありがとよ」
「茶化さないで。私、本気だから」
きっと、今日でキメる気でここに来たのだろう。とすれば、これ幸いという訳か。
「俺は金にならんぜ」
「お金じゃないわ。見くびらないで」
とか何とか言って、俺の給与明細を事務のダチにこっそり聞いてるの、俺は知ってるんだぜ。
まあ、人生において打算は必要かも知れんが。


『成瀬君。お金とか、そんなので私結婚するんじゃないわ。ただ、長女としての義務を果たす…それだけよ』


…何で、こういう時に限って、タイミング良くセンパイの事思い出してるんだか。

陽一は、普段家では吸わないタバコを一つ抜いて口にすると、一息だけ吸ってもみ消した。

「…分かったよ。先にシャワー浴びてきな」
「ありがと」
嬉しそうに風呂場へ向かう彼女の背後で、陽一はちら、と時計に目をやる。
何だ、良い頃合いじゃあないか。
陽一は、ふ、と自分の口端に笑みがこぼれるのを感じた。

彼女がシャワーを使い始めた音がする。
ちかちかと、切れかけていた蛍光灯が明滅し始める。

「来たな」

全ての光が、消えた。
そっと、風呂場を覗く。
シャワーの音は消え、風呂場の中には血まみれの棺桶が狭い浴室を圧倒するようにそそり立っている。
身につけていた下着がえらく派手な極彩色なのを見て、陽一は深々とため息をついた。
「俺の見る目も落ちたな」
振り返らず浴室の戸を閉め、くたびれた黒いコートを羽織り、懐にヨーヨーを忍ばせて、陽一は影の支配する空の下に駆けだした。

*

表へ出て数分。
人気が無いのを確認して、陽一は額の中央に意識を集中させる。
白銀色の粒子が全身を包み、やがてそれは頭上で深紅の人型を形成した。
「さて、と…どこに行ったか」
自分のペルソナ_スーリヤが頭上でほの白く光る。
周辺の気配をサーチしてみるが、人っ子一人いない。
かなり遠くへ行ったのか。
スーリヤは便利な事に通常攻撃以外の能力も多少兼ね備えている。
空を照らす太陽のアルカナから生じたペルソナのためなのか、昔の仲間ほどではないが敵の能力のアナライズ、また今使用しているような近距離の気配を調べる力もある。ただ、サーチ能力はほんのわずかで、ほぼ至近距離に毛が生えた程度しか分からないのがネックである。
「榎本がいればなぁ」
舌打ちして、ひとまず移動を開始する。双葉が行きそうな場所、と行ってもスーパーと公園くらいしか心当たりがない。
金がかからないか、実用的な場所にしか寄りつかないようなイメージがあるせいか。
意外と繁華街に居たりしてな。
不良気分を味わうなら、そこらへんだろうか。そんな風に思って、ひとまず駅前に出る事にした。

駅前周辺まで軽い足取りでやってきたが、やはり誰もいない。
棺桶と血だまりだらけで、迷い込んだ人間の気配すらない。
「また別の場所か…」
タバコに手を伸ばそうとして、背中に強い寒気を感じ陽一は周囲を見回す。
サーチのため、アクティブにしたままのペルソナが頭上で何かを感じ取ったようだ。
タバコでは無くヨーヨーを引き抜き、チタンの繰り糸に指を通す。
気配は尋常な大きさではない。これほどの寒気を感じたのは、何年ぶりだろう。
人の気配ではない。
だが、同じペルソナ能力者でもない気配。

これは。

「シャドウ…?港区でもないのに…」

あの忌まわしい塔、タルタロスの内部に巣くう異形の魔物・シャドウ。
時折、塔から抜け出してくる「イレギュラー」と呼ばれる存在があるとは聞いていたが。
「こんな片田舎まで出張か?ご苦労過ぎだっつの…」
一人愚痴ると、陽一は気配の動きに合わせて物陰へ移動する。
感づかれないようペルソナを一旦引っ込めると、バス停のベンチの脇へしゃがみ、気配の正体を待つ。

「そろそろ来るな…」
頭を低くし、そっと駅前のバーガーショップ前に広がるロータリーに目を凝らす。

最初に聞こえたのは、ノイズ混じりの奇怪な音声だった。

おーにさんこーちら
てーのなるほうへー

おいでぇ
おいでぇ おいでぇ
おいでぇ おいでぇ おいでぇ
おいでぇ おいでぇ おいでぇ

何かが誰かを誘っている。
この場合「何」はシャドウ、で「誰」は餌食の人間、である。
そのシャドウは、目の前の駅一つ楽に飲み込めそうなほど巨大な代物だった。
体中に穴のような目と口が無数についた、全身穴だらけのぶよぶよとした肉体のシャドウ。
体型は丁度先細りの末広がりで手足は無く、スライムのようにのそのそと下半身を波立たせて緩慢に移動している。頂の先の方にはでかい口と白い面がちょこん、と乗っかり、下のたるんだ黒いゲル状の固まりからは「おいでおいで」の大合唱が止むことなく続いている。その声は男のような、女のような、子供のような、老人のような。共通しているのは、ひどく耳障りなノイズ音だという事だけだ。

てっぺんの白仮面の口から声がこぼれる。

おーにさんこーちら
てーのなるほうへー

そうすると、下部の無数の顔達が声をあげる。

おいでぇ おいでぇ おいでぇ…

足下のタクシーや寝そべる棺桶を潰すこと無く、その上をぬるぬるとなぜるように、巨大シャドウは駅前を通過していく。

薄気味悪ぃ。
何の遊びだ、と呟くと陽一は気付かれぬようスーリヤを喚び出す。
浮かび上がった人型は、深紅の頭巾の内から微かな光を放つ。
「(…打撃は通用しない。斬撃も効果薄。弱点は…はっきり分からんな。触らん方がいいか…)」
やはり、距離があると詳しくアナライズ出来ないようで、陽一は頭を抱える。
今の優先事項は養子の捜索なのだから別段放置しておいても良いのだが、どうも自分の正義感がうずく。
「弱ったなあ………ん?」

スーリヤが微かに気配を感知した。
繁華街の奥。
ここから歩いて数分の距離。

「…よし、いた!」
巨大シャドウが駅前のロータリーをのそりのそりと商店街方向へ抜けていったのを確認し、ペルソナを引っ込めると、陽一は気配の方へと急いだ。












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