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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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背後に佇む者。
*

白光が引き潮のように引いて霧散していく。その只中で、陽一は一人立ち尽くしていた。
目の前に、闇夜が戻ってくる。

陰鬱な血溜まりの饐えた匂いが、足下から立ち上ってくる。
見上げていた先に、もう巨大な陰は、無い。

あるのは、影時間を照らす濃緑色の巨大な満月だけだった。

「…終わった…」
…のか?と僅かながら疑問を感じて視線の先を探っていると、ぽん、と肩を叩かれた。

「せ、先輩…凄い、凄いです!!…やっつけたんですね、あの、巨大、シャドウ…」
静かな興奮に浮き足立ち、目元を潤ませている榎本に、「多分な」と力無く微笑み返す。
自信が無い訳では無い。ただ、確たる証拠も無いままで心の隅に不安が残っているのが気がかりだった。

「だけど…あれ、正直アナライズを見て戦慄したのですが…何だったんでしょうか…」
そう言って首をすくめる榎本を横目に、そっと陽一は肩越しに双葉の様子を伺う。
双葉は、一歩引いたまま、こちらの様子を同じく傍観しているように見えた。
顔半分がいつも前髪で隠れているため、表情は普段から判別しにくいのもあって、今、双葉がどんな顔をしているのか良く見えなかった。

「黙ってろ」
口を塞ぐ代わりに、勝利の余韻で周りが見えていない榎本に厳しい視線をくれてやる。
途端に、「え?」と短く呻いて、迂闊な解析係は足下の相棒と同様に怯えて首をすくめた。
「世の中には知らなくていいこともある。お前が一番よく分かってるはずだ、そうだろ?」
「あ…」
陽一が双葉の顔元を伺っているのに気付き、慌てて「はい」と頭を垂れてしゅんとしている榎本を見ていると、躾真っ最中の子犬のようで憎めない愛嬌がある。それもあって、何かときつい助言が出来なくもあったのだが、どうせこれから死ぬなら気の利いた事でも言ってやりたいものだ。苛立ちとかでなく、一応、善意でだ。
だがその前に。

「双葉」
そっと、優しく呼びかける。
普段よりも、無意識に声色が柔らかくなる。
それは愛おしさからなのか、何と声をかけたものか考えているのを悟られぬ為の無意識的な反応だったのかは、陽一は自分自身でもよく分からなかった。
ゆっくり歩み寄る。足下の砂利の感触ばかりが、底の薄い革靴から伝わって意識を刺激する。正面の双葉から、意識を逃がそうとしている。
緊張しているのだ。柄でもない。
双葉は右手でシャツの胸元をきつく握ったまま、疲労しきった埃まみれの顔をこちらに向けた。

「終わったぞ」
「………」
「…怖かったか?」
沈黙したまま、双葉は首を静かに横に振った。
「そっか」
確認するように、精巧なガラスの彫像に触れるように、双葉のホコリにまみれた頭髪を払おうと召喚機をコートのポケットに収め、右手をそっと伸ばす。

一瞬だった。

榎本が裏返った大声で「危ない!!」と叫ぶコンマ0.25秒前。

背後から襲いかかってきた「それ」へ反射的に体躯を向けると左手に通していたヨーヨーをポケットから引き抜き、そのまま「それ」の喉元へと刃を突き出して斬りつけ、寸での所でネックハンギングを制し振り払う。

背後で、双葉が息を飲んだのが分かった。
無理もない。

「それ」は、人の形をしたシャドウだった。

体型は中肉中背の陽一よりも小柄で横に広く、例えるならばずんぐりむっくり。
全身同質・タール状の黒い細胞組織で出来上がった着衣に革靴。シャドウであるにも関わらず、その姿は白衣を身につけた研究者のように見え、粘質の全身細胞を活性化させ、人と同様の姿を一種類の細胞で克明に再現していた。

ぼさぼさの頭髪。頭部中腹まで禿げ上がった、粘液でぬるつく額。にきびだらけの頬。よく目立つ、異様に伸びた鼻。

研究者のシャドウは、額に妖しい輝きを放つ金色の欠片を埋め込み、真夏日の発汗の如く、絶え間なく汗も模したとおぼしき粘液を垂れ流し陽一を睨み付けていた。
その表情は、直視した榎本を慄然とさせ腰を抜かせる程に、たった一つの悪しき感情で歪められていた。

嫉妬。

他者を妬み、己に無いものを持つ存在をひたすら憎み続けた男。
そして、己だけを愛し尽くし続ける存在を探し続けた悲しい研究者。

「日向」

不意打ちから立ち直ると、陽一は双葉を庇う形で眼前の「それ」を向かい合った。
目前に立ち塞がっている「それ」は、生前人であった時の名を呼ばれ、生前と同じく粘着質で陰気な皮肉めいた笑みをこぼした。












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