更新間が開いてすみません…
土日は更新いたしますm(__)m
*
影、演説す。
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影、演説す。
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「 …いいかね?私は神の代理人となったのだよ」
人でなくなった男は、そう高らかに宣言すると黒々とした汚泥色の両腕を天上の満月に向かって突き上げた。
「全ての『生』に『死』を与える、滅びの母神ニュクスの!!」
男は煌々と世界を濃緑色に照らす、霞に淀んだ巨大な満月へと吠える。
その顔は、今までにないほどの恍惚と高揚、そして果てることのない自尊心が滲み、歪んだ醜い笑顔を形成する。
男は、影時間の主人で在るかの如く、己と対峙している脆く弱い人間達を見下ろし、そして嘲笑した。
*
「 …知っての通り、私は既に死んだ身だ。死神の暴走のせいで、そこのお前の息子に殺されたのだがね。
だが、それが私に力を与えるきっかけとなった。私は生死の狭間、暗い精神の海の底で女神の声を聞いた。
そして私は死して生まれ変わったのだ。選ばれたのだよ」
びくり、と背後で双葉が身を震わせたのが分かった。
ふひふひと、さも嬉しそうに、陰と化した男の薄気味悪い鼻息が、顔面の中央でいびつに膨らんだ鼻の穴から抜けていく。
本能的な寒気が、陽一の全身をも震わせる。
背後で身構える双葉を庇うように、陽一はそっと前へ歩み出て日向を牽制すると、日向はヒキキ、とひきつれた笑みをこぼした。
「 …最初は曖昧に そして 次第に意識がはっきりするにつれ、私は私を呼ぶ声に気がついた。
それは、女の声だった。最初は私の死を悼む妻の嘆きか叫びかと思ったね。
だが違った。それは死んだ不貞でふしだらであった妻とは違う、もっと荘厳で気高く優しい響きだった…」
今になってもまだ彼女を、葉子を逆恨みするか。
陽一は、この醜悪な小人の塊を蹴飛ばしてやりたい衝動を必死にこらえ歯噛みする。
「 …ニュクス。私に第二の生と使命をお与え下された死の女神。彼女は私の額に埋まったほれ、こいつ…
黄昏の羽の欠片を介し私を蘇生させ、あまつさえ私に力と重大な使命をお示し下された。
…それはすなわち、女神の雛形の精製。
…ニュクスは私に言った。
…お前にこの欠片を与える。これに在るは、今し方お前の息子より解き放たれ、崩れ去った心の仮面の欠片。
これらを持ち寄り、寄せ集め、唯一無二のシャドウを精製せよ、と…。
私は息子などいない。私の血の通った息子などいなかったが、私の息子を名乗る浅ましい子供ならいた。
その子供はその身に罰を受け、ペルソナを剥奪されたらしい。自明の利だな。悪しきは滅びるが常よ。ほふひっひ」
「そうだな。お前はまだ天罰が足りないようだが」
皮肉も気持ちいいらしい。ひひひひ、と奴の笑みは垂れ流されたまま止まる気配すらない。
「 …ほひひ、薄ら馬鹿はまだ分からないようだねえ?
言っただろう?私は選ばれたのだと。
ニュクスは私に言った。
未だ我の姿は暗き精神の海の中。未だ、我再生に至らず、又我に見合う滅びも形を為せず。
しかし。
もし、私に見合うシャドウを作り出せたら、そなたは私の夫たるエレボスの雛形となり、永久に我と寄り添うと。
…分かるか愚民よ。滅びの母たるニュクスが、世界で唯一無二の大賢人たる私を夫にと言うたのだ!!
しかも、その後こうも言った。
時間はたっぷり与える。そのためには、まず幾千幾万の仮面、そしてシャドウを集め、汝の思うように形成せよ。
…そうなのだ。私の好みの姿にして良いとまで言ってきた!!
これを天恵と言わずして何と言おう!私はニュクスに選ばれ、しかも伴侶として姿形まで創造する権限を与えられたのだ!!
そして、時満ちた後お前の息子を探し、息子の宿した『もう一つの仮面』を得よ、と。
その力はもはや言うに及ばず。その仮面の名も答えるにあたわず。
その力を汝が手に入れし時、砕けた滅びの欠片は再び覚醒し、統合の輪に入り互いを呼び合うであろう。
さすれば汝にも分かる。滅びの目覚めが。
全ての仮面が集結する時、我は目覚め、汝を出迎えよう。
そして、再び世界は我が母胎に眠り、我は汝と永遠を契るで在ろう、と…」
日向の口元に、うっすら涎と灰色の濁った泡がぷつぷつとこぼれ汚らしさを倍増させる。
その口元は、緩みっぱなしのまま、ふひふひと汚らしく下卑た笑みをこぼし続ける。
周囲に鏡が無いのが残念なほどの、醜悪な面構え。人は、自尊心でここまで醜くなれるのかと陽一は吐き気がした。
「 …ああ、なんといい響きか。永遠の契り…永久に寄り添う…これぞ私の命題と知り、私は女神の言葉に報いる事にした。
そのために、私は黄昏の羽の欠片を用いてまずはロンギヌス・コピーに記録されていたガキ共のペルソナを回収し、
次に島内のシャドウを全て吸収し尽くした。
材料を調え、最初に葉子の姿を模した「ニュクス」の雛形を製作し、奴らの中心となるシャドウとして育成を開始した。
これは効果的だったな。
お陰で、すぐに取り込んだガキ共のペルソナは私の分身…作りかけのニュクスを「ママ」と仰ぎ崇拝するに至った。
奴らは「ママ」「ママ」とうるさかったからな。偽物の声と姿でも効果大だった。
私の創造した「ニュクスママ」に命令させながら、私は「ニュクスママ」の内部で奴らを操縦する。
実にいい気分であった!!
…多少、女の声色を研究する必要があったがな。あれは最初苦労した。
それは島の外部に出て、深夜ほっつき歩いているメス豚共の精神を喰らえば幾らでも事足りた。
最近のOLや女子高生は男とよろしくする事しか考えちゃいない。
だから、あんなのは私の研究材料になってむしろ幸せなくらいなのだよ。
無気力症になったらなったで、犯罪を起こす前に死人同然となるのだから、むしろ感謝してほしいぐらいだなぁ!
だが、あんまり集め過ぎるとやはり愚民共から徴収した精神だ。すぐに反抗し始める。
シャドウの長となるは私なのだ。何故って、私はニュクスの夫になる存在なのだからね!
だが、それすらも私は克服した。天才だからねえ。
…流石に、天才と言えど男の私が女神のふりをし続けるのは無理というものでな。
…作ったのだよ。第二の「ニュクス」の雛形を、な。
…それには、コレクションの中でもとびきり強く、美しいペルソナを用いた。
今、ガキ共を指揮していたのはそいつだ。
私の言うことを聞くようになるまで骨が折れたが、実現してしまえば、後は楽なものよ。
…見ただろう?エウリュディケ。あれは素晴らしい代物だったよ。
あれを用い、私はワガママで自分勝手なガキ共のペルソナはもとより、体内に取り込んだシャドウをも完全制御するに至った。
…見たいか?見てみたいだろう!そうだ、見せてやろうなあ!!そしてひがみ嫉妬に狂うが良い!!
地に伏し、哀れな羨望の視線と苦々しい嫉妬の情を浮かべ、我が最高傑作の雛形を拝むが良いわ!!」
叫び声にも似た男の宣言により、男の顔に、うっすらと卵の殻に似た灰色の外殻が形成される。
それは無数の細長いトゲを模した冠となり、男の頭部に装着され、その肩や背中を覆うように灰色の陰が姿を現した。
「 …いいかね?私は神の代理人となったのだよ」
人でなくなった男は、そう高らかに宣言すると黒々とした汚泥色の両腕を天上の満月に向かって突き上げた。
「全ての『生』に『死』を与える、滅びの母神ニュクスの!!」
男は煌々と世界を濃緑色に照らす、霞に淀んだ巨大な満月へと吠える。
その顔は、今までにないほどの恍惚と高揚、そして果てることのない自尊心が滲み、歪んだ醜い笑顔を形成する。
男は、影時間の主人で在るかの如く、己と対峙している脆く弱い人間達を見下ろし、そして嘲笑した。
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「 …知っての通り、私は既に死んだ身だ。死神の暴走のせいで、そこのお前の息子に殺されたのだがね。
だが、それが私に力を与えるきっかけとなった。私は生死の狭間、暗い精神の海の底で女神の声を聞いた。
そして私は死して生まれ変わったのだ。選ばれたのだよ」
びくり、と背後で双葉が身を震わせたのが分かった。
ふひふひと、さも嬉しそうに、陰と化した男の薄気味悪い鼻息が、顔面の中央でいびつに膨らんだ鼻の穴から抜けていく。
本能的な寒気が、陽一の全身をも震わせる。
背後で身構える双葉を庇うように、陽一はそっと前へ歩み出て日向を牽制すると、日向はヒキキ、とひきつれた笑みをこぼした。
「 …最初は曖昧に そして 次第に意識がはっきりするにつれ、私は私を呼ぶ声に気がついた。
それは、女の声だった。最初は私の死を悼む妻の嘆きか叫びかと思ったね。
だが違った。それは死んだ不貞でふしだらであった妻とは違う、もっと荘厳で気高く優しい響きだった…」
今になってもまだ彼女を、葉子を逆恨みするか。
陽一は、この醜悪な小人の塊を蹴飛ばしてやりたい衝動を必死にこらえ歯噛みする。
「 …ニュクス。私に第二の生と使命をお与え下された死の女神。彼女は私の額に埋まったほれ、こいつ…
黄昏の羽の欠片を介し私を蘇生させ、あまつさえ私に力と重大な使命をお示し下された。
…それはすなわち、女神の雛形の精製。
…ニュクスは私に言った。
…お前にこの欠片を与える。これに在るは、今し方お前の息子より解き放たれ、崩れ去った心の仮面の欠片。
これらを持ち寄り、寄せ集め、唯一無二のシャドウを精製せよ、と…。
私は息子などいない。私の血の通った息子などいなかったが、私の息子を名乗る浅ましい子供ならいた。
その子供はその身に罰を受け、ペルソナを剥奪されたらしい。自明の利だな。悪しきは滅びるが常よ。ほふひっひ」
「そうだな。お前はまだ天罰が足りないようだが」
皮肉も気持ちいいらしい。ひひひひ、と奴の笑みは垂れ流されたまま止まる気配すらない。
「 …ほひひ、薄ら馬鹿はまだ分からないようだねえ?
言っただろう?私は選ばれたのだと。
ニュクスは私に言った。
未だ我の姿は暗き精神の海の中。未だ、我再生に至らず、又我に見合う滅びも形を為せず。
しかし。
もし、私に見合うシャドウを作り出せたら、そなたは私の夫たるエレボスの雛形となり、永久に我と寄り添うと。
…分かるか愚民よ。滅びの母たるニュクスが、世界で唯一無二の大賢人たる私を夫にと言うたのだ!!
しかも、その後こうも言った。
時間はたっぷり与える。そのためには、まず幾千幾万の仮面、そしてシャドウを集め、汝の思うように形成せよ。
…そうなのだ。私の好みの姿にして良いとまで言ってきた!!
これを天恵と言わずして何と言おう!私はニュクスに選ばれ、しかも伴侶として姿形まで創造する権限を与えられたのだ!!
そして、時満ちた後お前の息子を探し、息子の宿した『もう一つの仮面』を得よ、と。
その力はもはや言うに及ばず。その仮面の名も答えるにあたわず。
その力を汝が手に入れし時、砕けた滅びの欠片は再び覚醒し、統合の輪に入り互いを呼び合うであろう。
さすれば汝にも分かる。滅びの目覚めが。
全ての仮面が集結する時、我は目覚め、汝を出迎えよう。
そして、再び世界は我が母胎に眠り、我は汝と永遠を契るで在ろう、と…」
日向の口元に、うっすら涎と灰色の濁った泡がぷつぷつとこぼれ汚らしさを倍増させる。
その口元は、緩みっぱなしのまま、ふひふひと汚らしく下卑た笑みをこぼし続ける。
周囲に鏡が無いのが残念なほどの、醜悪な面構え。人は、自尊心でここまで醜くなれるのかと陽一は吐き気がした。
「 …ああ、なんといい響きか。永遠の契り…永久に寄り添う…これぞ私の命題と知り、私は女神の言葉に報いる事にした。
そのために、私は黄昏の羽の欠片を用いてまずはロンギヌス・コピーに記録されていたガキ共のペルソナを回収し、
次に島内のシャドウを全て吸収し尽くした。
材料を調え、最初に葉子の姿を模した「ニュクス」の雛形を製作し、奴らの中心となるシャドウとして育成を開始した。
これは効果的だったな。
お陰で、すぐに取り込んだガキ共のペルソナは私の分身…作りかけのニュクスを「ママ」と仰ぎ崇拝するに至った。
奴らは「ママ」「ママ」とうるさかったからな。偽物の声と姿でも効果大だった。
私の創造した「ニュクスママ」に命令させながら、私は「ニュクスママ」の内部で奴らを操縦する。
実にいい気分であった!!
…多少、女の声色を研究する必要があったがな。あれは最初苦労した。
それは島の外部に出て、深夜ほっつき歩いているメス豚共の精神を喰らえば幾らでも事足りた。
最近のOLや女子高生は男とよろしくする事しか考えちゃいない。
だから、あんなのは私の研究材料になってむしろ幸せなくらいなのだよ。
無気力症になったらなったで、犯罪を起こす前に死人同然となるのだから、むしろ感謝してほしいぐらいだなぁ!
だが、あんまり集め過ぎるとやはり愚民共から徴収した精神だ。すぐに反抗し始める。
シャドウの長となるは私なのだ。何故って、私はニュクスの夫になる存在なのだからね!
だが、それすらも私は克服した。天才だからねえ。
…流石に、天才と言えど男の私が女神のふりをし続けるのは無理というものでな。
…作ったのだよ。第二の「ニュクス」の雛形を、な。
…それには、コレクションの中でもとびきり強く、美しいペルソナを用いた。
今、ガキ共を指揮していたのはそいつだ。
私の言うことを聞くようになるまで骨が折れたが、実現してしまえば、後は楽なものよ。
…見ただろう?エウリュディケ。あれは素晴らしい代物だったよ。
あれを用い、私はワガママで自分勝手なガキ共のペルソナはもとより、体内に取り込んだシャドウをも完全制御するに至った。
…見たいか?見てみたいだろう!そうだ、見せてやろうなあ!!そしてひがみ嫉妬に狂うが良い!!
地に伏し、哀れな羨望の視線と苦々しい嫉妬の情を浮かべ、我が最高傑作の雛形を拝むが良いわ!!」
叫び声にも似た男の宣言により、男の顔に、うっすらと卵の殻に似た灰色の外殻が形成される。
それは無数の細長いトゲを模した冠となり、男の頭部に装着され、その肩や背中を覆うように灰色の陰が姿を現した。
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