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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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あの日の約束。
*
「…キミも、こっちにおいで」
双葉が前方へそっと右手を差し出すと、その場で微かに揺らめく陰が少年の指先の向こうに現れた。
その陰は青白く、少年の半分ほどの大きさの人影だった。
小さなウサギの刺繍が施された白いパジャマに、リンゴ柄のウッドサンダル。
右頭部に小さなおさげを揺らす、幼い少女。
成長していれば誰もが振り向くような美少女になったであろう、大きな濃茶の瞳とつぶらな口元が震えている。
少女の幻は、その場でぼんやりと浮かんだまま双葉に向かって小さく首を振った。

『ごめんなさい…』
「…どうして」
『だって…だって…私が皆を苦しめた…私のエウリュディケ…その力を日向に利用されて…』
「ユキちゃん…」
大好きだった少年に名前を呼ばれて、少女の幻=雪は目に溜めていた雫をぽろぽろと零す。
『それだけじゃない…私…私なの…フタバちゃんのオルフェウス…とったのは私…』
「…どういうこと?」

俯いたまま、雪の亡霊は腕に抱えていたテディベアに顔を埋め、恥じ入るように顔を隠そうとする。

『私…死んでからもずっと、フタバちゃんの側にいたわ…。
死ぬ直前に、自分のペルソナへほんの少し、自分の心を分けておいたの…。
そうして、フタバちゃんの心の海にずっといたわ。
気持ちよかった…とっても綺麗な海で…私、ずっとそこにいたかった。
本当は、天国へ行くために思いを捨てて心の海に帰らなければならなかったのに、私はそれが出来なかった…』

俯く彼女にそっと双葉が一歩近寄ると、雪は「来ないで!」と声を荒げた。

『だけど私…まさか、自分のペルソナがあんな使われ方するなんて思わなかった…。
でも、一番辛かったのは、フタバちゃんが苦しんだ事。
いっぱいいっぱい苦しんだ事。
日向の作った機械で、
私のペルソナの歌声が改造されて、
そのせいでフタバちゃんもお友達もみんな苦しんで…。

日向が死んだ後、フタバちゃんとエウリュディケ、
ふたりっきりの時、幸せだったけどずっと謝りたかった。

死神もいたけど、
あのとき、私はフタバちゃんが死んだら一緒に天国へ行こうと思ってた…。

だけど、そうならなかった。

フタバちゃんが生きて帰れて嬉しいはずなのに、
私は死んで消えなければならない…。

離ればなれになりたくなかった。
だけど、別のペルソナ使いのおじさんが来て、私だけじゃなくて皆の心が残ったペルソナも消そうとしたわ』

「う…」
気まずそうに、榎本は顔を背ける。

『だから…せめてペルソナだけども、と思って…。
私はあなたの心の海から、あなたのオルフェウスを…ペルソナを奪ったの。
オルフェウスは、封印していたお友達のペルソナは全て剥がれ落ちていたけど、
皆の痛みや憎悪が一杯こびりついて、既に仮面がひび割れて壊れてた。
それでも満足だった。
大好きな人の一部だけでも、ずっと側に居て欲しかったから…。

人としての死を受け入れるべきだったのに、私たちは怖かった。
一度死ぬ恐怖を味わってるのに、そんなに簡単に心の海へ帰れるはずないじゃない!
…だから、私たちはシャドウのママの声、ニュクスの声に従ったの。
ペルソナとしても存在を消され、心の海に帰るはずだったけど、
消えずに、燃えた研究所の片隅で思いの残骸として、シャドウとして生き返って…。
だけど、次に気がついたらそこは真っ暗な闇の中だった。
私たちと同じように、日向もシャドウとして生き返らされているなんて知らなかった。あいつは、黄昏の羽を使って私たちを飲み込んだのよ。
それから後は、ずっとあいつの言いなり…。
私たちは、自分にもう一度この世界に生きるチャンスを与えてくれたニュクスと、
ニュクスの選んだ上位シャドウ…日向に従う他なかった。
私や、お友達の皆は完全にシャドウになり、
私は日向の意識にずっと支配されてた…。
心の救いは、ずっと側においていたオルフェウスの壊れた仮面だけだった…。
…フタバちゃん、ゴメンね。私、ずっと会いたくて、あんな姿になっても貴方を探してた。
皆と一緒に、貴方もシャドウに変えてずっと側に居て欲しかった。
身勝手で…傷つけてゴメンなさい…』

俯いて、しゃくりあげる少女の幻影に、双葉はそっと跪き、優しく壊れ物へ触れるようにそっと抱きしめる。
驚いた眼差しで見上げる少女に、双葉は優しくほほえみかけた。

「いいよ、雪ちゃん…僕も君や皆の事、忘れてた…ゴメンね」
『なんで?何でフタバちゃんが謝るの?
…私だけじゃない、皆あなたをいじめたし、傷つけたのに…』
「もういいよ。…皆、少しずつ間違えただけだから…僕も弱くて、皆不安で、一人になりたくなくて…だから、行き違いが起こっただけ。…雪ちゃんこそ、僕が怖くないの?僕が嫌いじゃないの?
僕は弱い。
だから、こんな不幸の真ん中にいて、何も出来なかった。かっこわるいよ」
『そんな事ない!だって、だってフタバちゃん、優しいもん…。
私が、私が一番知ってる…』
「僕も、知ってる。君が優しかった事。僕を慰めて、励ましてくれたこと。
オルフェウスだって、そう思ってる。僕には分かるよ。
…だから、あの時言えなかった言葉、言うね。
…ありがとう。僕を好きだって、言ってくれて、ありがとう…」

双葉の目頭に、うっすら涙が滲んでいるのに気付いて、雪は抑えていた感情がプツリと切れてしまったようだった。
少女の幻は、愛した少年の胸の中で、あらん限りの大声で泣き叫んだ。
乾いた心を癒すように、少年の目にも透明な雫がこぼれ落ちる。
流した涙は少女の頬に当たり、少女の幻影は徐々に輪郭をおぼろげに曖昧に変えていった。

『有難う…有難う、フタバちゃん…私もやっとパパやママのいる所に行けそう…』
「よかった。…今度は、気をつけていくんだよ」
『うん…私、ずっとフタバちゃんを見守ってるから…』
少年が頷くと、少女の幻影は、にっこりと愛らしい笑顔を浮かべ、そして細く長い光の帯となり、天上へと消えていった。

「さよなら…雪ちゃん…」

異形達の狂宴は終わり、長い沈黙と冬の北風が周囲を洗い、撫でていく。

双葉は顔を上げ涙を拭うと、まっすぐに心配そうな陽一に向き合う。
その目には、普段と変わらぬ優しい光が映っていた。












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