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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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時と共に重ねた思い。
*
「おとーさん…僕、ずっと怖かった。ママ、っていう響きが、ずっと…。
何でなのか、ずっと分からなかった。僕に、母親がいないからかなって、思ってた…」
「………」

『まま』
遠い日の死神の囁きが、双葉の耳の奥にこだまする。

そう、坊やは、僕のこども。
ぼくは…あの子の、ママ。

「…でもそうじゃなかった。
僕、思い出したくなかったんだ。自分が、殺意を持って誰かを殺した記憶。
僕は出来損ないの未熟な存在だから、誰かを憎んだり、呪ったり、恨むようなこと、してはいけないとずっと思ってた。
そんな普通の人が抱えている、負の感情すら、あってはいけないと…。
どうしてか分かったんだ。
僕は、あなたに嫌われたくなかった。
だから、ずっと完璧な子供でいたかった。
心も行動も言動もみんな清らかで潔癖で、勉強も家事も何もかも出来る子供になれたら、愛してもらえると思ってた。
だから、知りたくなかったんだ。自分が、どれだけ醜い心を持ってたか。どれだけ、世界を憎んでたか…」
だんだんと、声に苦渋と涙がからんでかすれていく。
陽一は、うつむきがちになってきた双葉の言葉に、じっと聞き入る。

「僕、おとうさんもおかあさんもいなくなれと思ってた。
訳も分からず無視されて寂しくて、殴られて悔しくて、ひとりぼっちで悲しくて辛くてやりきれなくて…!
きっと僕は本当の子供じゃないから憎まれるんだって、だから本当の両親の元へ行きたい、こんな親死んでしまえばいい、って…。
…実の父さんと母さんが死んだ時、僕、喜んでたのかも知れない。
次は優しいお母さんだけが機械になって戻ってきて、僕とずっと一緒に暮らすんだって、本当に信じてた。
ありっこないのに。本当にひとりぼっちになって、初めて本当の孤独に気付いて…。
僕は、再び現れた実の父に期待した。そして、追いすがった。
不安も、孤独も、胸の穴もいつか塞がるって、愛してもらえるって、信じたかった…」

双葉の目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
それは淀んだ血の色でなく、純粋無垢な透明の光を含んだ雫だった。

「…ごめんなさい。成瀬のおとーさん、知ってたんでしょ…?
僕が、恐ろしい力を持ってる事。その力で、実の父親を殺した事。
おとーさん、それを抑えられる力を持っていたから僕の側にいてくれた、そうじゃないの?
理由は知らないけど、でなきゃこんな僕の側にいてくれるはずないもの…。
…爆発事故は桐条の会社で起こった事だったよね?だから、桐条の極秘任務か何かで…」
「ストップ」
たまりかねて、陽一は口を挟む。

「…お前ね、一体俺と何年暮らしたよ」
「…え?」
「お前はそうやって弁解したら満足かも知れんが、随分と失礼な事言ってる事に気がつけっつーの。
大体な。任務だったら、桐条なら腐るほどの資本と予算が取れるだろうから危険物は秘密裏に山奥に施設こさえて監禁して、非人道的な実験の足しにしちまうだろうさ。お前は甘いね。金持ちの残酷さを知らん。奴らは、俺達をカイロと同じく使い捨てだと思ってる。お前の推測なら、俺もお前も榎本もとっくに仏さんになってるだろうさ」
「ん…で、でも…」
「そもそも、危険物に家事買い物食事の世話掃除、その他諸々こき使ってる時点で間違ってる。そんな事させてみろ、監視がいるなら一発で免職させられて港区の海底にドラム缶詰めでハイサヨナラだよ。ああ、何か喋ってる間に整理されてきた。桐条はそういうとこだったなあ…辞めてつくづく正解だったよな。マジでマジで」
「………」
言葉に窮し口ごもる双葉の肩を、陽一はそっと叩く。

「お前。まだ俺が善人だと思ってるだろ?」
「え?………うん」
「バーカ。俺はそんな良い奴じゃねえよ。…お前を引き取ったのも、お前を育てたのも、最初は過去の清算をしたかっただけなんだ。
ペルソナ使ってる時点で何となく分かるだろ?…俺も、随分人の道を外れた事しちまったんだ。
だから、せめて恩人の子供一人くらい、立派に育てて贖罪したかったんだ。お前が気に病む事なんざない。
むしろ、これが済んで、俺の葬式が終わった頃にでも周りの奴に聞いて俺の事調べてみ。
ああなんで僕はこんな奴にいれこんでたんだろうなって、唾吐きたくなってるだろうさ。でも、それでいい」
「え、そんな…」
双葉が何事か言いかける前に、陽一は今までで一番強く、優しく、しっかりと双葉を抱きしめる。
「お、とーさん…」
「…でもな、双葉。俺、今はお前が居てくれて本当に良かったと心から思える。嘘じゃない。今回の事で思い知らされたよ…」
「………」
「俺の家族でいてくれてありがとう。一緒にいてくれてありがとな。…孤独だったのは、俺も同じだ。お前がいたから、俺はそうじゃなくなった。お前と共に過ごした時間が、俺の生きた時間の答えだ…」
「………とーさ、おとーさ…」
涙で震える声が、耳元で心を震わせる。

「何だ」
「怖く…ないの?」
「怖いはずあるかよ。自分の息子にびびってどうするんだよ」
「呼んで良いの?おとーさん、って…」
「…嫌か?」
「………そんなはず、ないよ……分かってるくせにっ…。
…………とーさん。
…………おとーさん。……おとー、さん…!!
…うっ、うう……あっ、ああ、うわああああああああああ!!」
叫び声のような激しい嗚咽を上げて、双葉は陽一の胸に顔を埋めて泣き叫んだ。
陽一は無言のまま、涙を流しながら双葉を抱きしめた。

榎本は二人の光景に感極まり、ずるずる鼻水を垂らして一緒に嗚咽を漏らしていた。
「良かったなぁ……本当に良かったぁ…」

「本当にそう思うか?」

唐突な背後の気配の出現に、思わず悲鳴を上げそうになり寸での所で布切れに口を塞がれる。
見ると、黒づくめの凶相の男が、自分の口を塞いだまま硬い表情で榎本の隣に立ち、さめざめと泣く親子の光景を冷淡に見つめていた。

「ろ…ろうりまはん」
「とりあえず鼻をかめ」

榎本は、堂島から口元へねじ込まれたハンカチを受け取り躊躇無く鼻をかむと、予想通り堂島は疲労の色濃い顔に渋面を作った。

「あ……後でクリーニング…」
「普通の洗濯でいい。しかし…あの小僧、死神を制御しているのか、それとも制御されてるのか…」
「あっ……」

どこから見てたんですか、と榎本に問われ、堂島は「死神の所行は全て」とだけ答えた。

「成瀬がこれからも側にいるならもう少し楽観出来ただろうが…もし、あいつがいなくなった後暴走したら、どうやって止めれば…」

二人も堂島に気付き、顔を上げ服の裾で涙を拭う。
堂島は仏頂面のまま、「済んだな」とだけ答えた。

「堂島、無事で何よりだ」
「死に損ねた。お前はどうだ。体調は」
「まだ平気だ、だが…」

満月の周囲を囲んでいた緑のもやが、薄まっている。
時間と空間のねじれは直に解消され、影時間は少々の遅れの後、普段と同じく元の時へと解除されるだろう。
けだるさが、増す。
命の刻限が、迫っている。

「あっ…おとーさん、あれ…」

双葉の指差す方向で、金色の光が波打った曲線を描いて閃く。
それは、夜に舞う一匹の金色の蝶であった。












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