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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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駅前の桜。
*

駅前まで続く桜並木の歩道を歩く。

自転車で、中学生の集団が笑いながら横を通り過ぎていく。
ジョギングする老夫婦が見える。
小学生がお花見の話題を持ち出して、横を歩く母親に甘えている。

幸せな桃色の空気と春風が、心を躍らせる。
来週にはどこも満開だそうだ。
あっちへ行っても、桜が見られるといいな。
そんな事を思いながら、双葉は自然と自分の足取りが軽くなるのを感じていた。

*

「来たね」
駅前のロータリーで、榎本が手を振っているのが見えて駆け寄る。
隣には、黒いスプリングコートを着たスーツ姿の堂島もいた。

「わざわざ来てくれたんですね…有難うございます」
頭を下げる双葉に、保護者二人は静かに微笑み返す。

「これから、しばらく電車の旅かあ…いいね」
「忘れ物は無いか」
改札前の公衆電話の前を行ったり来たりと、なんとなく気もそぞろな榎本をよそに、堂島は普段通り至極冷静である。

「はい、何度も確認したので多分大丈夫だと思います」
「長旅だろうから、弁当買っていっておけ」
「はい」
「地図持ってるな」
「はい、ここに」
「かいがいしいですね堂島さブボッ」
全て言い終わらぬ間に堂島の裏拳が顔にめり込め、榎本はその場で地団駄を踏んで悶絶する。

苦笑する双葉に視線を落としながら、堂島は「頑張れよ」と肩を叩く。
双葉は静かに微笑んだまま、「はい」と答えて頷いた。

「それじゃあ、そろそろ行きますね」
丁寧な一礼の後、荷物を抱えて改札へ向かう双葉に、鼻を押さえていた榎本が手を振る。

「何かあったらケータイにメールくれたらいいからね~」
「頼りにならないようなら俺に言え」

「はーい」

にこにこと笑って手を振って去っていく双葉の背中が遠のくを見送りながら、年長者二人はそっと顔を見合わせる。

「…行った、な」
「そう、ですね…」

これから先、少年の先行きを思うと不安ばかりが募る。
さしあたっては、SEESの勧誘。そして、ペルソナ能力の程度。
ペルソナが発動しないなら、それでもいい。
あれだけ家事が出来るなら、影時間にだけ適性のある者として、他のペルソナ使い達の生活面をサポートするだけでも重宝されるだろう。
仮にペルソナを使えるようになったらなったで、それを自力で使いこなせるようになってもらわなければ。
死神が封印されている間に、出来ることなら死神を覚醒させる事無く死神以上のペルソナ能力を身につけてもらわなければならない。
幾月へも、いつまでこないだのハッタリが通用したものか。
シャドウよりも、人間の方が恐ろしく感じられるのも可笑しなものだが。

重い沈黙が、二人を包む。
あの日から、フィレモンの言葉が、堂島と榎本の耳元から離れずにいたためだ。

世界の選択。世界の生死を決める、選ばれた存在。
もし、それならば…。

「…出来ますかね、双葉君に…タルタロスを、消す事が…」
「さあな。だが…もしも可能性があるなら…あいつの宿した「原初のペルソナ」の力…そして死神の母胎…。
もし、世界の滅びがタルタロスから始まるなら、あいつは人類にとっての死神でなく、シャドウにとっても存在を滅する死神になれる…
そんな気がしただけだ」

その身に眠るペルソナは、あいつの命の灯火を宿しているのだから。
最後の言葉を飲み込み、堂島は双葉の去っていった改札の向こうを見つめながら、先日届いた手紙を思い出していた。

十年前の、成瀬陽一から届いた手紙。
内容は、一文で簡潔なメモ書きだった。

「何やってるか分からないが、皆で飲みたい。幹事よろしく」

たったこれだけ。
分かりやす過ぎて、涙がこぼれた。

「それでは、後は夜までゆっくりするか。今日は夕方から空けてるな?」
「ええ、勿論です。明日も休みを頂きましたから、潰れても平気でーす」
「大きく出たな。楽しみだ」

今日は、花見酒になりそうだ。
堂島は駅の外を眺め、桜を見て久しぶりに心地よい風を感じていた。













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