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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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おかえりなさい。
*
ゆっくりと歩む僕らの隣を、生き生きと見知った誰かが駆けていく。

あくびしている友近。制服姿の宮本。伸びをする結子。
泣きすぎて鼻水を噛む平賀先輩の隣に困り顔の小田桐。
今日一時帰国したばっかりのベベ。
Y子…鳥海先生は、今日は心なしかメイクばっちりだ。

千尋。感動した様子だ。少し涙ぐんでハンカチを目に当てている。

見知った顔が、先生が、通り過ぎていく。
生者の気配に紛れ、背後の死の化身が意識の狭間に溶けていくのを感じた。
僕は思い出したように一度だけ振り返り、屋上を仰いだ。

大人数の動く気配にあちらも気付いたらしい。柵越しに階下を覗くみんなの顔が、はっきりと見えた。

順平。ゆかり。風花。
桐条先輩。真田先輩。
天田。コロマル。
アイギス。

みんな、有難う。

見えるはずのない姿の僕は、彼らに大きく手を振って、再び校門へ向かった。

校門の前に立つと、一段と全身の重力が消失していくのが分かった。

「ここを出たら、本当にお別れだ」
「うん、なんとなく分かる」
感慨深くて、地面に立つ自分の足先を、ブーツの先を見つめていると、父の大きな掌が僕の頭を優しく撫でた。

「ああそうそう、お客さんも来てるんだぜ。ずっとお前を待ってたぞ」
「え?」
「顔、上げてやれ。早くツラを見せてやんな」

そこには女の人がいた。微笑む、美しい人。
その足下に隠れて、くっつくように初等部の制服姿の少年が立っていた。

その首元には、いつか無くした黄色いマフラーが巻いてあった。
少年の目元にある泣きぼくろを見つけた瞬間に、僕は飛び上がるように校門を駆け抜け、彼を抱きしめていた。

「お帰りなさい、僕のママ。僕の兄さん」
少年はそう言うと、本来在るべき身の丈の姿に変わり、僕と変わらぬ青年の姿で両手を広げ僕を包み込んだ。
背後で、僕らと同じく父と母がそっと寄り添うのを感じて、僕は僕の判断が間違いでなかったと確信した。

「おかえり」
僕は泣いていた。僕は笑っていた。僕は再び、ここから産まれ、また帰る。
だけど、この手を離さない。
愛した人の手を。
導いてくれた人の手を。
愛しい幼子の手を。

神よ、有難う。僕は父母と共に、この子と共にそちらに行きます。

眼前が真白な光に包まれる。
僕らを包む優しい光は、今僕らを抱きしめるあの人と同じ温かさだった。

〈了〉













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