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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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石より生まれる生命。
*

夜遅く地下の研究室に戻ると、人っ子一人いなかった。スタッフ全員連夜の徹夜続きで仮眠を取りに別室へ移動したためだった。
書き置き一つと冷めた缶コーヒーを手に俺はガラス越しの開発ルームへと目線を落とす。
第一チームの大工場に比べると、大学のラボほどの広さも無い空間。
牛詰めに詰め込まれた機材とケーブルの束に埋もれるように、開発用の寝台に一つの人形が寝かされていた。

ペルソナ搭載型アンドロイド。
開発経過89%。モデリングを女性スタッフの金森に任せただけあって、容姿・動作は非常に滑らかに仕上がった。
戦闘用のボディと重火器の搭載ケーブル・接続端子ほぼ完成。
後は、堂島に雛形を任せた精神思考シミュレーター搭載の簡易疑似人格プログラムを煮詰め、フェイスモデルを完成させるのみ。
まだペルソナ搭載には至っていないが、その前に、精神ではなく、実際の「顔」が必要だとスタッフ全員が思っていた。
それは、自分の担当だった。

接続用端子を組み込んだバイザーの下で、顔の無い、無貌の少女が今も眠っている。
彼女はまだ自らの意志で動いた事がない。こちらから操作して動作テストを行う事はあっても、彼女はいつも虚ろな人形のままにしてきた。
女の顔は一生ものだ。そううそぶいて周囲も自分も誤魔化してきたが、それももう駄目かも知れない。

_成瀬君、私別居してるの。もう二年になるわ。

葛センパイは桐条へ派遣社員として勤務し、今は息子と二人暮らしになっていた。

_子供生まれてから上手くいかなくなって。あの人、実の子供にまで嫉妬するの。俺より息子が大事かって。

子供がいるときには立派に母親の顔をしているのに、保育園へのお迎えの前に会うと、以前よりもずっと女性的な脆さを見せるようになった。その横顔を見ていると、時の無情さを感じた。あの人は、こんなに弱々しく笑っていただろうか。

_そのうちに、こいつは別の男の子供だろうって言い出して。後はもう、話にならなかった。…それなら離婚してって言ったのに、それは嫌みたい。絶対別れない、子供は元の男に引き渡してこいって、被害妄想で凝り固まって…。
フタバね、とっても良い子なの。かけっこも縄跳びも、保育園で一番に上手に出来るようになったわ。それに利発で、子供なのにいつも私の心配ばっかりして…こないだなんか、ウトウトしてた私に自分の小さな毛布、掛けてくれた。
でも、それが気に入らないみたい。何でも出来るこんな子供は俺の子じゃない、しかも俺に全然似てないし肌だってすべすべしてる。こんな綺麗な顔した息子はあり得ない。自分は小さい頃ずっと容姿を馬鹿にされてきたのにって…。

俺はほとんど喋らない。ただ、昔の友人として、彼女の話に耳を傾けているだけ。
それだけなのに、この腹の奥でうずまく赤黒い情念はどうして日を増す毎につのり、激しくうねるのだろう。
今日、彼女の横でおとなしくプリンを食べていた少年の名札が、何故か目に焼き付いて離れない。
黄色いチューリップの名札には「ひむかい ふたば」と、彼女の綺麗な筆跡で丁寧に書いてあった。

日向双次郎の妻。彼女の肩書きが、子供の名札から透かして見える。
それが、たまらなく辛かった。

何であんな奴が、彼女の人生に関わってる。
何であいつが、あの人の人生に暗い影を落とす?いたたまれない。
彼女が自ら選んだと言うかも知れないが、そうさせたのは自分かも知れない。

日向は、今も家族を放り捨て、ほったらかし、自分の好きな研究に没頭し現実から逃げている。
欲しいのは彼女だけ。自分に尽くす、他人に自慢出来る、最高の会社がくれた最高の妻だけが欲しいと駄々をこねるクソガキめ。
ああそうかい。なら目を覚ましてやるよ。
俺の、やり方でな。

そんな事を考えていると、俺はいつの間にか寝入っていたらしい。
夢を見た。

俺はピグマリオン王になって、無心でアトリエに籠もり岩を削っていた。
岩はみるみるうちに削れ、次第に人の姿を為していく。
足。ふくらはぎ。ふともも。悩ましい腰つき。肉付きの丁度良い胸元。
俺は掘る。掘り進む。
顔を掘り終わった時、石像の長い髪の根元をかすめるように一匹の青い蝶がアトリエをはばたいていた。俺がほんの少しそちらに気を取られていた瞬間、背後からほっそりした腕が、俺を抱くように伸びる。

「あなた」

白い石の中から乙女が誕生する。
彼女そっくりの、美しく気高い女神。

目を覚ますと、俺は決心し研究室から開発ルームへと降りた。
どうせ、もう手を伸ばしても届かない、愛しいひと。
こんな所にいる時点で、俺も日向も同類だ。まっとうな生活になど、戻れないだろう。だがせめて、その思いと過去を偲ぶくらいは許してもらえるだろうか。

俺は、ずっと作っては消していた、3Dモデリングのフェイスデータを立ち上げ、最後の仕上げに臨んだ。

十日間、夜通し一人で作業を続け、「彼女」は完成した。

後の対シャドウ兵器・ペルソナ搭載型アンドロイドの「初号機」_ガラティア。
俺の、最初の「娘」だった。












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