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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

鉄の乙女が踊る庭。
*

「レベル2へ移行する。次のシャドウは女教皇のアルカナだ。魔法攻撃、状態変化に注意」
「了解です」「イエス、マスター」
ガラティアが、襲い来るティアラの群れを機敏にかわしながら視覚モニターで敵をアナライズする。
「テテュス、これらの敵には氷結が有効です。ペルソナを使用するのが望ましいと思います」
「確認、ガラティア姉様は補助をお願いします」
「了解です」
その場にいた全員が、一瞬息を飲む。彼らは、この時を見るためにこの場にいたからだ。
『ペルソナ・レイズアップ!』
乙女の掛け声がシンクロし、力強い少女の声色がドームに響きわたる。
瞬間、彼女達の全身から精神の一部が青白いオーラの欠片となって放出され、それはすぐさま頭上で像を為した。

黒髪の乙女、ガラティアの頭上にはブロンズの肌とヴェールを羽織った地母神の石像が、金髪の乙女、テテュスの頭上には鉛色の鱗で覆われた半人半竜の女神が姿を現す。

「デメテル、タルカジャをテテュスへ」
地母神の指先から光がほとばしり、テテュスの全身を包み込む。
「攻撃力向上確認。ステュクス、マハブフーラを詠唱」
テテュスの頭上で竜の女神が咆吼を放つ。凍てつく冷気が宙を漂うティアラを飲み込み、一瞬にして霧散させた。

「二連勝、であります」
ガラティアは、そう呟くとほんの少し微笑み、また元の基本表情に戻ると右手の銃器を回転させ弾丸を再装填させた。
その瞬きのような笑顔は、若い頃の彼女そっくりだった。

その後は、終始乙女達の独壇場で戦闘実験は進んだ。

レベル3・4・5と、軽快にシャドウを掃討していく。ガラティアは砲撃とアナライズ、回復を担い、テテュスは肉弾戦と攻撃魔法を担当し、互いに弱点を補い、労り合うように互いの次回動作を確認し、目も眩むようなスピードで理路整然と眼前の敵を屠る。その間、俺は一切指示出しをしていない。


「レベル6へ移行する。次のシャドウは恋愛のアルカナ。状態変化、特に悩殺、混乱に注意」
「了解です」「イエス、マスター」

「ステュクス、マハブフーラによる氷結攻撃で敵殲滅を確認。マスター、次の指示をお願いします」

シャドウのランクが上がっていく。7・8・9…。彼女と、彼女の妹が、第一チームの戦車達が手こずり、危うくスクラップにされかかった相手を、有無を言わさず粉砕していく。


「レベル10へ移行する。次のシャドウは運命のアルカナ。弱点はまちまちだ。アナライズして確認」
「了解です」「イエス、マスター」

「砲撃及びデメテルのジオンガによる電撃で殲滅完了いたしました。マスター、次の指示をお願いします」

ドーム全体がどよめく。
今回、第一チームの戦車は、ガラティア達と同じく「黄昏の羽」を核にして製作された、いわば「同じ素材」の代物だった。だが、第一チームはあくまで戦車という「形」にこだわり、結局ペルソナの搭載には至らなかったと聞いている。
当たり前だ。戦車のナリした奴が自分は人間です、などと言えるはずがない。そこに、自我が芽生えるなど、到底あり得ない話だ。
桐条の総帥様には、ペルソナの代わりにここに新機能を付けた、あそこの動きが向上したなどと逐一報告しては、主任自ら出向いて必死に体裁を取り繕っていたのだろう。「黄昏の羽」は貴重品で、未知の永久エネルギー・あらゆる機器の高レベル原動力になる素材だ。もし対シャドウ兵器にたいして羽を有効利用できないと思われれば、折角の研究材料を他の主要部門に取られるのは明白、私欲の強い日向には耐えられない屈辱だろう。
俺にしてみればどうでもいい…と思っていたが、ちょっと惜しい気もしてきた。他の素材は在る。核の部分さえ手に入れば、彼女たちに次の妹達を作ってやれる。そうすれば、きっとあいつらも喜ぶだろうし、前に冗談でのたもうたレンジャー計画も、夢ではなくなるし。
彼女達の、特に長女の横顔を見ていると、俺は何でも与えてやりたい気持ちになった。

戦闘実験は大成功だった。
特にガラティアとテテュスの成功はいたくジジイのお気に召したようだった。
後で俺と彼女たちは他のスタッフと共にVIPルームへと呼ばれ、直々にお褒めの言葉まで頂戴した。
ジジイの話に寄れば、本家の南条家もペルソナ研究を進めており、何としても鼻持ちならない本家の鼻を明かしてやりたかったそうだ。
「…して、褒美は何が欲しい?言ってみろ」
ジジイの太っ腹な発言に、迷わず俺は答えた。
「製作費用と、次回製作機用のコアが。後、ガラティアとテテュスは今後も俺達のチームで面倒を見させて欲しいですね。ペルソナの能力等、未開の部分が大きいものですんで」
ジジイは満足げにたるんだ頬をなぜると、すぐ側の秘書にあごをしゃくった。どうやらオッケーらしい。
出入り口の脇では、第一チームのスタッフと日向が隅に並んでこちらをうつむきながら見ていた。じっとりとした視線を感じるが、あえて無視した。
だが、日向の付きまとう視線だけは、俺の目線から離れなかった。

世界の全てを呪うかのような、濃厚な悪意を貼り付けた憎悪の相。
あれほど醜悪で、思い出すだに寒気のするような表情は見覚えがない。だが、その時の俺は、何とも思わなかった。
全てが上手く行き過ぎる程上手に運んで、顔にこそ出さないよう努めてクールを装っていたが、俺はきっと上機嫌だったろうから。

その日はガラティアの雄志を眺めながら、ずっと思っていた。
どうだい日向。
お前の惚れた女そっくりの人形に、お前の精魂込めて設計した戦車以上の働きをされる気分は。
こいつはお前のキャタピラがのそのそ動いて食い尽くされる間に、髪一本奪われる事なく敵を粉砕できるんだぜ。
人間様のお前にも出来ない、魔法の力も発動できるんだぜ。
お前、ずっと「どうしたら発動できるんだ」って、一月部屋に籠もって考えたんだって?目の前の図面は戦車だらけだったって聞いたぜ。
お堅い頭の奴は気の毒だよな。全部都合の悪い事はカミさんや息子や周りのせいにしてきたから、バチが当たったんだよ。
それでも戦車作りしか脳のないお前だ。この先、どうするか、ちゃんと見ておいてやるよ。

お前が、俺とあの人の目の前から消え失せるまでな。

*

研究室に戻ると、ガラティアがメンテナンスの前に自分の元にやってきた。
「お疲れ様でした、マスター」
「お疲れサン、今日はクールダウンして、ゆっくり休めよ」
はい、とガラティアは爽やかに微笑む。つられて、俺も頬がゆるむ。一瞬、昔に戻ったような気さえした。
親バカだな、と堂島が背後で吹き出す。
「そう言ってくれるな。お前だって、気になってたくせして」
「バカ言え。俺のプログラムは完璧だ。な?」
堂島の隣に控えていたテテュスは「はい」と凛々しく返事を返す。ガラティアと同時期に同一の疑似人格プログラムを組み込んだのに、双方で性格に差異さえ生じている。ガラティアは何故か彼女に似ておっとり、テテュスはクールで軍隊向けの規律正しい性格に育っている。
やはり、この二体…いや、二人は普通の機械などではない。
ヴィーナスではなく、青い蝶に授かった大切な娘。俺は、まるで葛センパイとの間に出来た子供のように、二人を愛し、そして慈しんだ。












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