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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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思いは見えず心に聞こえ。
「榎本、相手はどこだ」
「…すぐそこです。こちらの様子を伺ってるみたいな…何だか、出てくるのを待ってる感じですかね」
「そうか。なら真正面から出迎えてやるか」
「成瀬さん」
「うん?」

「…負けないで、下さいね」

気の利いた事、言えなくてすみませんと榎本は口をつぐんだ。
横目でそっと見ると、叱られたガリ勉小学生みたいな顔をしていた。
ズクズクにカシミヤのコートの袖を濡らし、めそめそ泣いている。

ふと、思う。
他人より多くの悲しみに気がついてしまうペルソナ、というのはどれだけ辛かったのだろう。
堂島の憤怒に触れ、榎本の中にもどれだけの悲しみがあっただろうかと思い、陽一は自嘲する他なかった。
肝心な事にばかり愚鈍であった自分。仲間と己を天秤に掛け、我が身の苦しみから逃げる方を選んでしまった自分。
隙だらけだった榎本の性格に幾度救われていただろうかと思い、陽一は自分が榎本を気に入った理由がはっきり分かった気がした。
誰に対しても、素直で、バカが付くほど正直な気質。
裏表も無く誠実に他者と向き合おうとする姿勢。不器用さ。
他人と馴れ合いでしか触れあえなかった適当な自分と、全くの対極に生きていた存在だったから。

「お前もな」

自然と口をついて、出てきた答え。
それは、本心の底から出てきた偽らざる思いだった。
二人に背を向け駆け出そうとした瞬間、背後で双葉の声がした。

「…おとーさん!…僕、おとーさんが何者でも、僕はおとーさんが大好きだ!だって、だって…いつも、いつも途切れた記憶の最後で、悪夢の終わりで、いつも僕を助けてくれるのは…お義父さんだった…真っ黒いお化けに襲われても、包帯を巻いた透明人間に襲われても、ついさっきだって!…いつだって、泣いてる僕を助けてくれるのは…成瀬のお義父さんだった…………だから、だから」

鼻をすすり上げる音がする。
声は続いた。

「……大好き…お義父さん…僕の、僕の…おとーさん…は、家族は、成瀬の、おとーさんだけだから…」

掠れた声に、いじらしさに、胸が詰まる。
涙が一筋こぼれた。拭う事はしなかった。












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