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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

昨日の続きです。
これ以上続きませんが。


*
幼かった僕は、デスに頼んで適当に他人から金を巻き上げて生活していた。
その惨めな境遇から僕を救ったのは、僕らを押し込めていた研究所に関わっていた幾月という男だった。
他の三人はいけすかないようだが、別にどうでもいい。
金にならなくなったら、殺せばいい。
制御剤ももらえるし、住み家も確保できる。桐条に近づくチャンスにもなる。
何より普通の人間なんだし、せいぜい利用しよう。むしれるものを、とことんむしってから。
そう言い含めておいた。

彼に命ぜられるまま、彼にとって、彼のパトロンにとって邪魔な人間を、殺し続けた。
ほとんど、死刑執行は僕がやった。
時々タカヤやジン、チドリにも手伝ってもらったけど、あの三人はまだどこか非情さが足りない気がする。
他人は他人じゃないか。殺せば単なる肉だ。
幾月さんは、僕の仕事に見合った報酬をくれた。
その金で、僕ら四人は生計を立てている。
気前よさそうに聞こえるかも知れないが、ケチなクライアントの仕事を量でこなした結果だ。
住み家も、最近また新しいマンションの一部屋ぽんと与えてくれた。
これは、来るべき計画のため、と取った方がいいんだろう。どうでもいいけど。
それでも普通のサラリーマンよりも、ずっと手取りは良い。真面目に働くのも、つまんないものだな。
そう思わない?

あくせく働くより、今一番大事なもののために僕は短くパッと散って死ぬ。
吹けば飛ぶような命なら、僕は大切な坊やのために死にたいんだ。
影時間にあの子が来る度に、胸にひしとかき抱く度に思う。
僕は、この坊やのために自我と全ての能力を与えられたのだ、と。

*

そんな僕だが、現在はタカヤたちと離れて単独行動に移っている。
幾月さんの計画が実行に移されたためだ。

かつて桐条の実験で精製された巨大シャドウ「デス」の復活。
ちりぢりになったデスの欠片=12体の巨大シャドウを目覚めさせ、その力を集める事。
これは坊やの願いを叶える事にも繋がっているようだ。坊やの喜ぶ顔は、何より嬉しかった。
二言返事で引き受け、僕はシャドウ討伐のために結成されたSEESというチームのリーダーになるために、この春に月光館学院に編入し、高校二年生というのを満喫している。
義務教育なんて受けてないけど、はっきり言ってつまらない。勉強なんて、どれもこれも独学で勉強済みな事ばっかりだ。
知っていること、学ばなくても理解できること、学ぶ必要のないこと。どれも退屈の極みだ。
どうでもいい。
だけど、それ以上にどうでもいいのがSEESの連中だ。
幾月さんが、僕を呼んだ理由が分かった気がした。

弱すぎる。
雑魚以下の能力で巨大シャドウに突っ込もうとしていたらしい。
どうやら、僕らが思っていた以上に桐条の人間は頭が悪いようだ。
特に元リーダー桐条美鶴の頭の悪さは度を超している。
本気でタルタロスを消滅させる気でいる。
沸いている。間違いなく。

幾月さんの苦労が偲ばれる。中間管理職はいつだって辛いものだ。

時々、タカヤたちも様子を見に来てくれてる。
幾月さんにシナリオを書いてもらい、タカヤたちには悪の手先ストレガになってもらった。
今まで小遣い稼ぎに行っていた復讐代行の肩書きを使って、タルタロス消滅を阻止しようとする悪のペルソナ使いという設定で、僕らを付け狙ってもらうことにした。その方が、SEESのメンバーも弱いなりにヒーロー気分が味わえ、モチベーションも上がって寮内はやる気に満ちて良い感じである。
そうした訳で、時折学園内の天文台を借りて三人を呼び寄せ、お芝居の打ち合わせ、反省会、仕事の請負状況の確認なんかもやる。
最近は信頼されたもので、夜に出歩いても尾行すらされていない。なので、合間を見てはマンションに赴き三人に手製の肉じゃがやカレーを差し入れている。三人とも料理は苦手だから、出来合いの弁当よりも手製の料理の方が喜んでもらえる。
サイトや生活管理全般はジンに任せれば大丈夫。タカヤはああ見えて芝居がかった演技が上手い。
チドリは最近順平が気になっているようだ。あんな雑魚の何がいいんだ。女は分からない。

坊やは、寮に移り住んだ僕と相変わらずずっと一緒だ。
最近は毎晩現れて、僕の側にいてくれる。
添い寝して、影時間が明けるまで語り合う。
賢くて、優しくて、可愛い坊や。彼は僕の家族。兄弟。
抱きしめた冷たい肉の感触が、愛しくてたまらない。
世界が終わって二人きりなら、きっと最高に幸せだろうな。
広いおでこにキスしたら、坊やは嬉しそうに微笑んだ。
死神なのに、天使の笑顔だ。
きっと、本物の天国の天使は皆不細工に違いない。

だから、死神をあんなに醜く描くように仕向けたんだ。間違いないね。

二人してくすくすと笑いあって、影時間が収束する前に僕らは眠る。
抱き合ったまま、寂しさが隙間に入ってこないようにぴっちりとくっついて。
互いが存在している。それを確かめ合うように眠り、また次の日を思う。
今このときだけが。影時間だけの世界があったら。
その願いだけを胸に、僕は退屈な日々を過ごしている。












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