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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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ありふれた人生。
*

2008年、日本のどこか。
今日もどこかで誰かがクイズゲームのプレイ筐体に向かっている。
彼らは機械の中のCPUと戦っているのではない。

遠いどこかで、
自分と同じように、
同じ仕様の筐体に座って向かい合った誰かと、
クイズでの真剣勝負を行う為に。

そのゲームの名は【Answer×Answer】。
日本全国のゲームセンターに設置された、オンライン型クイズゲーム。
全国のプレイヤーからランダムに最大で四人同時にマッチングされ、
一対一の勝ち抜き戦を三回行い、上位二名がプレーオフで優勝を争う。
早押しクイズ有り、選択問題ありと実に単純明快なクイズゲームなのだが、
その単純明快さと「一対一」の真剣勝負が人気を呼んでいる。

彼らプレイヤーは、筐体に着座した瞬間から、
そのゲームタイトルと同じ「アンサー」=回答者となり、
見たこともない、知りもしない、
ただ「同じゲームを同時刻にプレイしている誰か」の分身=アバターを介し駆け引きを楽しむ。

相手よりも早く、
相手よりも正確に、
誰よりも強いアンサーに。

ただ、それだけのため。

遠い日本と日本のどこかを結んで、今日も絶叫と歓喜がこだまする。

*
関東地方某所。
四月を迎え、どこも新入生の放つ初々しい雰囲気に色めき立つ春。
私立アーサー国際大学、通称アン大に彼=安佐 庵、は居た。
数年前に創立したばかりの真新しいキャンパス。
庭には知恵の神を象ったモニュメントがあり、周囲は噴水や生徒達の憩いのスペースとなっている。
整備の行き届いた芝生に沿うように配された白いベンチに座って、一人黙然と皮カバーに包まれた哲学書を読んでいる青年。
ややくせがある堅そうなツンツンの短髪、ロンTにジーンズ、スプリングコートと普段着の出で立ちをした、ごく普通の容姿。

「(…早いもんだな。俺ももう二年、か)」
何度も読み返したニーチェの哲学書を掌でパラパラと弄びながら、彼=安佐 庵はふと思う。

彼は、かつて一番好きだったものから最悪の形でしっぺ返しを喰らい、今それを反省し第二の人生を模索していた。
それは、かつての得意分野を一切封印し、別の形で自分の将来を模索する道。
あまり裕福でもない自分が、無理して高偏差値の私大に通えているのも、それを信じて支えてくれている家族や友人が居るからだと深く自認している。

「(…うん、ばれてない。今日も、誰にもばれてない)」
視線を感じ、右を向き、左を向き、一応上も確認してホッと胸をなで下ろす。
以前ほどではないが、時にそう思っては自戒し、そして安心し視線を冊子に落とす。
それの繰り返し。
平穏で、静かで、波風の立たないゴクフツーの大学生活。
そんな、人と同じ、ありふれた人生に憧れていたはずなのに。

おーい、と遠くで友人の呼ぶ声がした。
手を振り返すと、庵は本を無造作にデニムのショルダーバッグへ放り込んで友人の方へと駆け寄っていく。
今日はこれから合コンだ。

特にどきどきもしないが、びくびくもない日々。
それが続く毎日が幸福なのだと信じていたかった。そんな退屈な、毎日だった。












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