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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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迷える糸目。
*

数日後。
花冷えとも言いたくなるような、少し肌寒い春の日の昼下がり。
校門から続く桜並木を歩く別の人影があった。
「…あーと、えーと、こっちがこっちでこうだから~…」
ほぼ真ん中分けでクセの無い猫っ毛。丸顔の中で細い糸目がきょろきょろとせわしなく動いては、眉間にシワを寄せている。
おそらく高校時代に着用していたのであろう、使い込まれたクラシックな薄手の黒いダッフルコートをもっさりと着込み、おろしたての革靴を履いた大人しそうな青年が、かれこれ一時間以上、何度もここへ戻ってきては学校案内とにらめっこを続けている。

「この大学、敷地が広すぎるよ…別棟って言われても全然わかんないや…」

オープンスクールにも来て下見もしたのになあと、糸目の青年=阿南 敦(あなん あつし)は疲れ切って肩を落とした。

某米所から上京してきて早二週間。
入学式、最初の授業までは順調にこなしてきたのだが、今日の講義のために向かうはずの別棟にたどり着けず、グルグルと大学敷地内を迷走して終いには校門へ戻ってしまう、という半ループ状態の中にいる。同じ高校からこの大学に受かったのが自分一人、しかも大人しい性格のためにまだ友人らしい友人もいない敦は他の人に尋ねる事も出来ず、半ば自力に拘って意地になり学校の関係者にも聞けず、無駄な時間を費やしてしまった自分にがっくりと肩を落としていた。

「…あーあ、もう今日の講義は無理だな…帰ろうかな…」
「ねえ君、道に迷ったの?案内してあげようか?」
「へ?」

唐突に声をかけられ振り返ると、そこにはいかにも遊んでいる風な上級生の男が三人。
全員、小柄な敦よりも背が高く、体格もがっしりとしている。にじり寄られるだけで、圧迫感を感じて後ずさると相手の二人が構わず背後に回り込む。
「え、えっと何でしょうか」
「そう怖がらなくて良いよ。俺等合コンサークルのメンバーなだけだから。あっちでちょっと話しない?五分だけでも、損しないよ?」
「あ、いえ結構でぷふ」
回れ右して引き返そうとした退路を三人の中でも一番肉厚な体格の男に塞がれ、思わず顔から胸元に突っ込み、つんのめって仰け反る。
「うわ、何するんだよ。ブランド物のシャツに鼻水ついたじゃんか」
「え、嘘?!僕はそんな…」
「嘘じゃねえよ、さっき絶対湿っぽい感触したし。
…ほれここ、なんか汚ねえし!お前いいからちょっと来いって。弁償な」
「う、嘘です!僕、鼻風邪なんか引いてません!おかしな因縁つけられても困ります!」
必死に食い下がる敦の腕を、いつの間にか左右に立っていた他の二人が掴み上げて宙吊りにする。ふいに足下が空を切り、ジタバタともがく敦を見て三人ともへらへらと薄ら笑いを浮かべている。
「だーから、因縁じゃなくて、クリーニング代?ちょっと、あっちで、頭冷やして話そうか」
「嫌です!僕お金なんか全然無いし…」
「分かってるって。でも、それチョー高いぜ。ウン十万のヴィンテージだから今ならこのくらいで…」

「そこまでだ!」
聞き慣れない野太い声がしたかと思うと、突然目の前の屈強なブランド服の男が後方へと殴り飛ばされた。

ゴン!「ごふっ」
ベキ!「プゴッ」
バゴ!「おごぅ」

突如、背後からにゅっと突き出た太い腕が、瞬く間に男達の顔面や後頭部を捉えて一撃でノックダウンさせていく。
男達が仰け反る隙に力任せに腕を振りほどいた敦は、反動で立ち損なって地面へしたたか尻餅をついた。

「あ、あいたたた…」

転んだ拍子に、まだ新しいノートや資料集が道に散乱する。
かき集めようと手を伸ばした先に、白衣の男が立っていた。

ぼさぼさの角刈りに、無精ヒゲ。
二の腕まで捲り上げた袖ぐりから、骨張った手の甲が見える。
しかし、薬品臭のする白衣を着ている割に、ブランド男たちよりも随分と引き締まった筋肉質な体躯であるのが、着衣の輪郭から見て取れた。

「ウチの学生を騙るちんぴら共だな?また別の新入生に手を出すとはけしからんな」
「お、お前は…」
「俺は一度見た顔は覚えるタチでな。こないだのサークル入部説明会の時にも居ただろう!…まだ懲りてなかったか」
「ちっ…行くぞ」

舌打ちだけを残して男たちがそそくさと立ち去ると、呆然と背中を見ていた敦はやっと我に帰り一礼する。

「あっ…あっあっありがとうございました!あの…」
「大丈夫か?あいつらは外部の人間だ。ウチの大学はだだっ広いから、時々ああいうのが紛れては小銭を掠めようとする。お前さん、上京してきたクチか?」
「え?あ、はい。新潟からです」
「そうか。俺は近畿だが…まあいい。今後は気をつけろ。身なりや振る舞いにも気を付けた方がいい。こんなナリの俺が言うのもナンだが、お前さん田舎風情丸出しだぞ?そういうのを狙って強請ったりするのが居るから、少し場慣れ…っていうのか?注意しとけ」
「はい、ありがとうございます!…あの」
教材を拾って集め、コートの埃を払うと、敦はおずおずと立ち去りかけていた白衣の男に話しかける。
「ああ、礼なら要らん。毎年ああいうのが居るから、ボランティアで助けてるだけだ。後、最初は学内マップ見ても分かりづらいから、道なら人の良さそうな学生に尋ねた方が早い。やせ我慢はためにならんぞ」
「あ、そう、ですか…でも、あの、良ければ珈琲でも」
「うん?いや、試薬の溶液を攪拌してる途中なんだが…」
「で、でもでも、その…やっぱり何か、御礼を」
「いや、別にいいんだが…」
「………」

「気が済まんか?…まあ、どうしてもっていうなら、そうだな、研究棟まで来るか?ビーカーでいいならインスタントを入れてやる。どうせ実験以外は暇なんで、ちょっと話に付き合ってくれると嬉しいんだが」
「それでいいんですか?」

めんどくさそうに頭を掻きながらも、白衣の男は「ここんとこずっと、人とろくに口を聞いてなくて」と苦笑いを浮かべる。
「僕も上京してからずっとです」と、敦が人懐っこい笑顔を浮かべると、男も気を良くしたらしい。にかっ、と白い大きな歯を見せて笑い返した。

「ええと、僕阿南と言います。阿南、敦。
「山月記」の中島敦と同じ字の、あつし、です」

「俺は安藤だ。安藤、夏彦(あんどう なつひこ)。
どっかの妖怪好きと同じ夏彦だが、俺は妖怪研究じゃなくて環境科学研究をやってる。
今は院生だ。よろしくな」












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