3373plug-in

ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
あの人を待ちながら。
「おや、あそこに人生の落伍者がいるねえ」

非常にセンスの無いイヤミを出っ鼻の先に引っかけながら、あいつは俺の顔を見る度薄ら笑いを浮かべていた。

日向双次郎。対シャドウ兵器開発部門第一チーム主任。実質的なチームの指揮官だった。
俺と歳は変わらぬはずなのに、非常に老け込んでいて白髪交じりの頭髪は既に額から前頭部まで後退しており、かさついた顔面に比べ額はいつも脂っぽく、冷めたラーメンのラー油をべっとり付けたようで容貌の薄気味悪さを際だたせていた。
小男、老人のような猫背、薄い頭髪、締まりのない薄い唇の上に、ニキビ跡だらけの赤い出っ鼻が乗っかっている。
奴は容姿に見合った陰気で嫉妬深い男だった。エルゴ研へ来る前はずっと会社で冷遇されていたらしく、桐条のジジイには随分感謝しているようだった。媚びへつらい、地位と権限を得て、奴は毎日背中に美人の秘書と部下を連れ、この小さな箱庭の中で得意げに鼻息を荒くしていた。で、普段のイヤミの矛先はいつも俺達第二チーム、もとい俺、成瀬陽一に向けられていた。

「相変わらず出来もしない非生産的な試行錯誤を繰り返しているようだね?その後どうだい?何か成果は?」
ロビーへコーヒーを買いに出ただけなのに、何故見計らったかのように奴は俺の側に近寄ってくるのか。そこからして謎だった。
「はあ、まあぼちぼち」
「ぼちぼち?やはり君らしいね?生産性がまるで感じられないよ。やる気がないならさっさと他の部門に転属届でも出せばいいじゃないか。それとタバコは止めた方がいい。頭の中までヤニが回ってオーバーヒートしてしまうよ。ヤニでニヤニヤ、なんてねえ」
どうやらここは笑う所だったらしい。言った本人は、外国の童話に出てくる醜い小人を思わせる顔面のシワをたたんで、一人引きつり笑いを浮かべている。周囲の連中は俺への卑下した笑い半分、この小人への愛想笑い半分といった所か。生憎、少し前に転属して出て行った部下がオヤジギャグの天才だったため、俺は白けた面でスルーできた。
「はあ、そりゃどうも」
「そりゃどうも!そりゃどうもってなんだい?全く、君と言う人物にはプライドというものが感じられないな。製作する代物を見ればまあ、一目瞭然だが。よくもまあ、あれだけセンスの無いオモチャのような提案を出したものだ。ペルソナ搭載型アンドロイドは君のダッチワイフじゃないんだ?人型を克明に再現し、なおかつ女性型というのが分からない。わざわざ戦車としての本来の機能と守備力を削ってまで、人型にこだわる理由でも?」
お付きのスタッフがダッチワイフにくすくす反応している事の方が、正直腹立たしかった。この男のようにあからさまではないが、奴の部下も同様に下品でいびつなプライドを抱えていた。それを巧妙に隠した気になっているのがさらに腹の立つ事で。
「理由は簡単だ。人の心は人にしか宿らない。それとシャドウの親玉は神話上の女神になぞらえた存在だと聞いた。その一部を利用するから、女性型が良いと思ったのさ」
「単純だねえ。まるで幼稚園児の作文だ。それで失敗と製作費用の言い訳が聞くとでも?本当に幸せな性格だ。総帥から日々プレッシャーをかけられる身としては羨ましい限りの気楽さだよ」
日向の顔から笑顔が消える。ぬーっと、汗ばんだ額をこちらに近づけ、薄く大きな唇を開く。口臭かと思いきや、ミントの香りが鼻をついて逆に吐き気を感じた。

「次の視察の際には、私は最高の完成品を総帥にお見せする準備が出来ている。…次の要望はもう決まっているよ。第一と、第二の併合だ」

チーム統合とは名ばかりで、暗に俺達第二チームのメンバーを自分の権限でリストラして、追い出そうとしてるとすぐに分かった。自らの手で、自分よりも明らかに劣る男を、自分と張り合う立場の研究者を、閉め出してスッキリしたいというだけだ。日向は、技術者としては優秀だったが、人間関係においては劣等感を常に抱いているようだった。少しでも自分に害を為す、又は気に入らない言動をしたスタッフは皆いびり抜かれた後に桐条から追い出されたと聞く。一日中必要の無い演算を手動でさせたり、狭い小部屋に何日間も押し込んだり…こと、陰険さは研究所全体でも有名だった。奴は俺の変わらぬ白けた表情を見て、やや不満げにその場を後にした。奴にしてみれば、正義の味方が悪人に見栄を切って颯爽と去っていく場面でも想像していたのだろう。似合わなすぎて、失笑すら口元に浮かんだ。

偶然、榎本がその一部始終を見ていたらしい。コーヒーを一杯おごってやると、温厚な草食動物は「むかつくっすね」と、珍しく鼻息を荒くしていた。
「いいじゃないのさ、言わせておけば」
「で、でも僕先輩のがずっと凄いと思いますし、かっこいいですよ。いつも、なに言われても唯我独尊、我が道を行く、って感じで。…正直、日向は大っ嫌いなんすよ僕。生理的にも精神的にも、あのねちっこい言動と喋りが医務室に接近してくるだけで僕はぞぞ気が立ちますよ。あの額だけ汗ばんでる顔、ぬらりひょんみたいだし…」
「言うてやりなんなよ。お前、医者だろ?カウンセリングついでにあの出っ鼻どうにかしてやんなって」
「無理です。無茶、無謀、ダメ絶対です。シーサーも絶対召喚以前に僕の中から出てこな…」
シッ、と指を立てると、榎本は慌てて自分の口を塞ぐ。
「…すいません、『アレ』の話題は研究室だけで、でしたね」
「そういう事。天下の桐条だ、どこで誰が聞いてるか分からん。モルモットになりたくなけりゃ、静かにしてろよ」
「…はい」
「つう訳で、俺は久しぶりに外の空気を吸ってくる。外出許可が降りたんでな」
「え?そうなんですか?…いいなあ、僕もまたダメ元で届け出出そうかな」
「堂島にはエスプレッソの豆を頼まれてる。お前も、要るモノあるなら買ってきてやるよ」

*

研究で地下に籠もる事が多かったが、時々思い出したようにお日様が恋しくなって外出届を出しては港区をぶらぶらしていた。主軸の研究員は半年待ちの状態らしいが、俺のような窓際族にはそんなお構いも無く、研究所を取り囲む分厚く高いコンクリートの壁と物々しい通用門脇の勝手口を抜け、気が向いた時にはふらりと埃っぽい地下から外へ出かけた。

本当は偶然を装って、俺は在る場所へと、いつも寸分違わぬ時間に、定期的に時間と間を置きながら、その場へ向かった。
駅前のカフェ。そこの昼下がりに、時々足を運んでは、ある人物を待った。通り過ぎる人の間に、さりげない再会を演出するように。

「あら、今日は来てた」

人妻になった葛センパイが、幼い我が子の手を引いてカフェの中に入ってくる。今日は、保育園に行った後だったようだ。

「ご無沙汰です。一月ぶりですかね」
「三週間よ。地下で研究に没頭しすぎなんじゃない?日付の感覚が狂うなんて、貴方らしくないもの。さ、フタバご挨拶は」

「…こんにちわ」

母親の手に連れられ、紺色のスモックを着た愛らしい少年ははにかんだ笑顔をこぼすと、恥ずかしがって母親の背後に隠れた。
足下から覗く横顔でもすぐ分かる。男の子は母親に似るというが、これは見事にそっくりだった。

「向かいの席、座ってもいい?」
「構わんですよ。…ボウズ、プリンでも食べるか?」
「うんっ」

彼女と再会したのは、本当に偶然だった。
だから三度目の正直くらい、こんなつまらない人生の中で一回くらい在ってもいいじゃないか。
いつも一人の客が四人用の席に座っていても、店主は何も言わなかった。俺が、誰かを待っていると、そう思っていただろう。
そうだ。俺は彼女を待ってた。
彼女だけが来るのを、いつも、待っていた…。












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://3373plugin.blog45.fc2.com/tb.php/23-f55f3a28

| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。