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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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花見二景。
*

その日の夕方…と言うには、日はとっぷり暮れている。日に日に陽気と共に陽光も長くなり、肌寒さも消えてくる春の夜。
大学の学生寮からは、川沿いの土手に連なって咲く桜並木が見えた。夜には地元の自治会が吊り下げた提灯に灯りがともる。
食卓を窓際に寄せて、それを見ながら食べる夕食は田舎の食卓とはまた違い、なかなかの風情があって良いものだ。

「桜も七分咲きくらいかな?来週にはお花見に行きたいな」
「うんうん」
「食べるのに必死だな。そんなにお腹すいてた?」
「カレーおいしいです」
「…うん、ゴメン。食べてるときはいつもそうだったな…。
いや怒ってないから。おかわりしていいから」
「ありがたいです。おいしいのでおかわりです」

何故か庵は美味しいものを食べていると、ですます調になる。
理由は未だによく分からない。
そして大抵→(*´ω`)こんな顔をしている。
なんとなく、ムカツクが叱れない。

部屋が隣同士のため、時々どちらかの部屋に集まってメシを食ったりするのだが、大抵自分の部屋に庵を呼んで…いや庵が勝手に来て何故かメシを食っている。
しかもとても美味しそうに。
いい加減きつく言って自炊させた方がいいのだろうか…。

隣室からゲテモノの異臭が放たれるのを覚悟で。想像したくない。

「ごちそうさまでした」
ぱちんと柏手を打って深々と頭を下げる庵に、合わせて晶も一礼を返す。

「はいよろしいおあがりで。…で、どうする?誰か誘っていく?お花見」
「そーだなあ、同じゼミの奴にでも声かけてみる?…出来れば女の子がいればな~」
「庵が学内の女の子に声かけてくればいいんじゃないか。いい加減ナンパの一つでも成功させてみなよ」
「お前みたいにモテるなら苦労しない!…本に書いてある通りしたって、俺にナンパのセンスは無い!………あ、やばい、言って悲しくなってきた…」
落ち込む友の肩をそっと叩くと、その後はダラダラととりとめの無い話をし、真面目に講義を振り返り、そして眠くなったら解散。

普通の大学生生活を送る彼らの眼下、宵闇包む同時刻に桜並木を歩いている二人の女性がいた。
来週予定している、花見の下見に来たのである。

上品なワンピース姿の女性が周囲をきょろきょろと見回し、うーん、と首を傾げる。
すらりと背筋の伸びた、均整の取れたスタイル。立ち居振る舞いで、育ちの良さが透けて見えるポニーテールの美女。
「ののちゃん、ここが穴場スポット?何だか、まだ七分咲きなのに結構人がいるけど…」
「え?ああ…大丈夫だよ!杏奈ちゃん心配し過ぎだよ~」
と言いつつ、本人も自信なさげなのが不安を誘う。
何よりも、ポニーテール美女=安城杏奈(あんじょう あんな)は土手下へ降りている友人のよそよそしさが少し気がかりであった。
「ここでなくても、別にいいんじゃないでしょうか?アナマリア女学院大側にも、桜の咲いてる場所はあるし…」
「う、ううん、ここがいいんだよ!あっちは絶対ナンパしにくる連中でごったがえすし」
「でもここ、アン大に近すぎて、逆効果なんじゃあ…」
答えに窮し、杏奈の横で跳ねっ髪の快活そうな女子大生=安西 和(あんざい のどか)はむぐぐ、と口ごもる。

「…やっぱり。何か理由があるんでしょう?教えてののちゃん」
おっとりとした性格ながら、しっかり者で勘の良い杏奈を前にしては、のどかもシラを切り通す訳にはいかず顔を真っ赤にして口を開く。
「ゴメン。…いや、彼に、会えないかなって」
「彼?」
「………あんさ、いおり」
ああ、と杏奈もぽん、と手を叩く。安佐庵の話なら、以前に幾度も彼女から話を聞かされていたからだ。
「ネット掲示板の噂じゃあ、アン大に在籍してるんですってね」
「うん、そう。偶然とはいえ近所の大学にいるなら会う機会もあるかな~とか思って早二年、未だ巡り会えず」
そう言って肩を落とすのどかを、杏奈はそっと肩に手を置き励ます。
「大丈夫。縁があればきっと会えるわよ。いっそのこと、一度アン大に行ってお会いしてくるとかは?」
「いや、ストーカーと思われたくないもん。それに今更ファンです、って押しかけても迷惑がられるだろうし。…でもなあ…」

思い出される、高校時代の淡い思い出。
きっと、相手は覚えてはいない。
敗者一人一人のことなど、きっとすぐに忘れているだろう。
頂点に立った勝者なら、なおのことだ。
だけど、自分にとっては一生ものの思い出だった。
セピア色の魔法だとか、脚色された思い出と言われても、未だのどかにとって安佐庵は初恋の相手に変わりなかった。
もうテレビに出なくなって久しいのに、ネット上では酷評も絶えず聞く。
傲慢で、世間知らずで、ワガママな暴君。自分の知能に驕り高ぶっていたイヤミな男。
しかし、自分が出会った同い年の少年はそんな世間の評判とはかけ離れた、穏和で優しい人物であった。
あの時の王者の横顔を、のどかは今も街のどこかに探している。

「会えないかなあ~…イオリ君にもう一度」
視界外でのニアミスを繰り返し、すれ違いつつ、二人が出会うのは、ほんの少し、先の話。












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