背中に武器を持つ男。
*
「あ、………あ、晶」
「やあ。庵君、こんなところで何やってるのかなあ?」
ニッコリと笑ったまま、突如人混みのなかから現れた晶の姿に、庵は硬直したまま、みるみるうちに顔面真っ青になっていった。
「部屋のカードキー探しに行ったまま戻らないから心配して来てみたら、何この騒ぎ」
「えー、えーとうーんと」
「君言ってたよね。もうクイズ止めるって。そのために、この大学に行くって」
「あ、あきら、違う、これには理由が…」
庵はあわあわと唇を震わせながら、違う違うとぎこちないボディランゲージを繰り返すも、晶の引きつった満面笑顔は崩れない。
非常に慣れた動作で、晶の右腕が自分の背中、ジャケットの襟首にかかる。と、Tシャツとジャケットの間からどこかで見たような紅白の物体がスルスルと…。
「男が言い訳するんじゃない!問答無用!!!!躾ぇえええええええ!!」
「イヤダーーーーーー!!ハリセンはイヤーーーーー!!!!!」
慌てて腰を浮かせて逃げだそうとするも、時既に遅し。
晶の見事な手さばきで、ハリセンスマッシュが庵の尻めがけ三発連続で炸裂し、2階全体に乾いた音が響き渡った。
「うわぁ凄いー!!高校生クイズ名物だった、安住先輩のハリセン生で見ちゃった~」
その場にいた全員が一瞬の出来事に硬直した中、呑気に敦だけが手を叩いて喜んでいた。
「あー、そういやあったな。安佐の失敗制裁の名物、ハリセン安住」
「すげー懐かしー!あれ、マジでやってたのか。テレビのネタじゃなくて」
「なんか、すっげー痛そうなんだけど…あれ、音だけじゃなかったんだ…」
「つーか、未だに背中に収納してるのか?ハリセン…」
ざわざわする観衆の中で、突っ伏してケツを突き出した状態で半べそな庵を見下ろして、晶は深々と頭を振って溜息をつく。
「ふう、今日は公開処刑でひとまずこのくらいにしておいて上げるよ。後で反省会ね」
「い、いたい…腫れてる、絶対腫れてる」
「 お 返 事 は ? 」
ギロリと、今にもビームが放たれそうな晶の突き刺さる視線に、庵は間抜けな体勢のままひいい、と首をすくめる。
「つ、謹んで承りました。もうしません。反省しております」
「はいよろしい。…ったく、学長に知れたら、自分が一番やばいのに…」
自然な動作でハリセンを元通りに背中へしまうと、晶はパン、パンと柏手を二回叩く。
「はーい、今日はもうおしまいでーす。庵君がここで暴れてたこと、あまり人に言わないであげてくださいねー」
「え、どうしてー?」
観客からのブーイングに、晶は至極丁寧に「ごめんね」と頭を下げる。
「万一、又取材やマスコミが来ると、また色々と都合が悪いんだ。あれでストレスやショックに弱いタチだし…悪いけど、口外しないであげてくれるか?」
「ううん、何か訳ありなのか…」
「それはいいけど、また講義の後でも説明しろよー」
「何だ、今日は終わりか…つまんねーなー」
観衆の中にいたアン大生達から順番に人垣は店外へ流れ、角刈りはアメゾウら物陰で事の成り行きを見守っていたスタッフの手によって運び出され、人混みがかき消えた後には庵達数名と壊れたくずかごが残されるばかりとなった。
よろよろと庵は立ち上がると、涙目でしょぼんと頭を垂れて「ゴメン」と晶の背中に呟いた。
「謝るくらいなら、最初から騒ぎなんか起こさなければいいのに」
「ゴメン、本当にいつもゴメン」
「全く、一体どういうつもり…」
晶の細く整った眉が吊り上がるのを見て、「違うんです!」とのどかが割って入る。
「庵君、悪くないんです!私が絡まれてるのを、助けてくれようとして…」
「ああ、そういえば君は…」
「安西和、と言います。のどかって呼んでください。…で、さっきの不良みたいな大学生にゲームしてたら絡まれて、それを助けてもらったんです」
へえー、と晶は庵のションボリ顔とのどかの顔を真剣に交互に見つめ、のどかの話が嘘で無い事を悟る。
「そうだったの?でも、それなら何でクイズ勝負に?」
「おおそれそれ、俺にも是非聞かせてくれ」
「僕も聞きたいです!是非是非」
やたらと食い付きのいい夏彦と敦に、のどかは思わず苦笑をこぼした。
「あ、………あ、晶」
「やあ。庵君、こんなところで何やってるのかなあ?」
ニッコリと笑ったまま、突如人混みのなかから現れた晶の姿に、庵は硬直したまま、みるみるうちに顔面真っ青になっていった。
「部屋のカードキー探しに行ったまま戻らないから心配して来てみたら、何この騒ぎ」
「えー、えーとうーんと」
「君言ってたよね。もうクイズ止めるって。そのために、この大学に行くって」
「あ、あきら、違う、これには理由が…」
庵はあわあわと唇を震わせながら、違う違うとぎこちないボディランゲージを繰り返すも、晶の引きつった満面笑顔は崩れない。
非常に慣れた動作で、晶の右腕が自分の背中、ジャケットの襟首にかかる。と、Tシャツとジャケットの間からどこかで見たような紅白の物体がスルスルと…。
「男が言い訳するんじゃない!問答無用!!!!躾ぇえええええええ!!」
「イヤダーーーーーー!!ハリセンはイヤーーーーー!!!!!」
慌てて腰を浮かせて逃げだそうとするも、時既に遅し。
晶の見事な手さばきで、ハリセンスマッシュが庵の尻めがけ三発連続で炸裂し、2階全体に乾いた音が響き渡った。
「うわぁ凄いー!!高校生クイズ名物だった、安住先輩のハリセン生で見ちゃった~」
その場にいた全員が一瞬の出来事に硬直した中、呑気に敦だけが手を叩いて喜んでいた。
「あー、そういやあったな。安佐の失敗制裁の名物、ハリセン安住」
「すげー懐かしー!あれ、マジでやってたのか。テレビのネタじゃなくて」
「なんか、すっげー痛そうなんだけど…あれ、音だけじゃなかったんだ…」
「つーか、未だに背中に収納してるのか?ハリセン…」
ざわざわする観衆の中で、突っ伏してケツを突き出した状態で半べそな庵を見下ろして、晶は深々と頭を振って溜息をつく。
「ふう、今日は公開処刑でひとまずこのくらいにしておいて上げるよ。後で反省会ね」
「い、いたい…腫れてる、絶対腫れてる」
「 お 返 事 は ? 」
ギロリと、今にもビームが放たれそうな晶の突き刺さる視線に、庵は間抜けな体勢のままひいい、と首をすくめる。
「つ、謹んで承りました。もうしません。反省しております」
「はいよろしい。…ったく、学長に知れたら、自分が一番やばいのに…」
自然な動作でハリセンを元通りに背中へしまうと、晶はパン、パンと柏手を二回叩く。
「はーい、今日はもうおしまいでーす。庵君がここで暴れてたこと、あまり人に言わないであげてくださいねー」
「え、どうしてー?」
観客からのブーイングに、晶は至極丁寧に「ごめんね」と頭を下げる。
「万一、又取材やマスコミが来ると、また色々と都合が悪いんだ。あれでストレスやショックに弱いタチだし…悪いけど、口外しないであげてくれるか?」
「ううん、何か訳ありなのか…」
「それはいいけど、また講義の後でも説明しろよー」
「何だ、今日は終わりか…つまんねーなー」
観衆の中にいたアン大生達から順番に人垣は店外へ流れ、角刈りはアメゾウら物陰で事の成り行きを見守っていたスタッフの手によって運び出され、人混みがかき消えた後には庵達数名と壊れたくずかごが残されるばかりとなった。
よろよろと庵は立ち上がると、涙目でしょぼんと頭を垂れて「ゴメン」と晶の背中に呟いた。
「謝るくらいなら、最初から騒ぎなんか起こさなければいいのに」
「ゴメン、本当にいつもゴメン」
「全く、一体どういうつもり…」
晶の細く整った眉が吊り上がるのを見て、「違うんです!」とのどかが割って入る。
「庵君、悪くないんです!私が絡まれてるのを、助けてくれようとして…」
「ああ、そういえば君は…」
「安西和、と言います。のどかって呼んでください。…で、さっきの不良みたいな大学生にゲームしてたら絡まれて、それを助けてもらったんです」
へえー、と晶は庵のションボリ顔とのどかの顔を真剣に交互に見つめ、のどかの話が嘘で無い事を悟る。
「そうだったの?でも、それなら何でクイズ勝負に?」
「おおそれそれ、俺にも是非聞かせてくれ」
「僕も聞きたいです!是非是非」
やたらと食い付きのいい夏彦と敦に、のどかは思わず苦笑をこぼした。
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