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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

かつてのクイズ少女、回顧する。
*
出会いはとても唐突で、偶然だった。

高校一年生の夏。
とんでもないほどのラッキーが重なって、私は友達二人と念願だったアカデミッククイズの本戦に出場し、見事一回戦で玉砕した。
夢であった、あの早押しボタンを一回も押すことなく。

あんまり泣き崩れて、みっともなくて、友達からも離れてロビーの片隅でしくしくべそをかいていた私に、何も言わず手渡された無地の白いハンカチ。

「使えばいいよ。来る前にオカンに持たされた新品だから汚かないし」
見覚えのない濃いネイビーのブレザーを着たツンツン頭の男の子。
その時、彼はまだ有名でもなんでもなかった。
…いや、有名であった頃の自分を封印したままだった。

「お前、予選でも一緒だったよな。香川代表だろ?俺早押しで一度競り負けたから覚えてたんだ」
「…えと、君、誰…」
「んん?俺?安佐っていうんだ。クイズネームは『アンアン』な。チーム名はトリプルAっていうんだぜ。ウチはメンバー全員『A』でイニシャル始まるんだけどさ…」
それから、二次予選が始まるまでの間、ずっと横でたわいない話をしていてくれた。
未だに、何であの時私の側にいてくれたのか分からない。
下心、と考えるには、彼の口調や話題はあまりにも無邪気で、純粋に聞こえたから。

「もう平気か?落ち着いた?」
「う、うん…」

『(おーい、いおりー。どこだー?)』
廊下の向こうから声がする。
あの向こうには、自分が見られなかった栄光の場所が待っている。
そう思うと、また涙が滲んで。

「ん?ああ、今行くー!
…と、大丈夫か?
たく、お前んとこの他のメンバーどこ行ったんだか…」

『(いおりー!オイこら、便所長すぎだろーが!常識的に考えてよおー)』

「はいはーい!…ああもう、泣くなって。お前んとこのチームの分まで、俺等頑張るから。同じ予選会のよしみだものな」
「え、あ、うん…」
「俺のチーム、絶対優勝するからさ。お前のチームの分まで頑張るから。応援しててくれよな!」
涙でぐちゃぐちゃになったハンカチを残して、彼は笑いながら去っていった。

「ああ、そうだ!それ、また今度返してくれればいいから!来年の予選会で、また会おうな!」

それから数年。
その年の劇的な優勝で、翌年・翌々年の予選会では、既に人垣で側に近寄れないほどの人気者になった彼らと再び話す機会も出来ぬまま、
あの日の思い出と共に、白いハンカチだけが私の手元に残った。












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