渡りに船。
*
「まあ、それではクイズ研究サークルを立ち上げるんですか?偶然、こちらと同じですねえ」
杏奈が嬉しそうに手を叩くのを見て、男衆は「?」と目を丸くする。
「同じって…」
「ん?ああ、僕んとこもこれから立ち上げなんだよ。
クイズ研究サークル・イン・アナマリア女学院大学」
茜の言葉に、アーサー大陣営の男四人は一斉に「おおっ」と色めき立つ。
「め、メンバーは」
「私たち三人と、あと他に二人います。今度、立ち上げの記念にお花見へ行こうかな、なんて計画中なんですよ」
「ああでも、藍子は来れそうにないって言ってなかったか?あいつ、これから忙しくなりそうだし」
「へえ~」
「へーっ」
「ほお~」
合わせてもいないのに、食べるのに必死な庵を除く男三人の呟きが与作の掛け声の如く並ぶ。
その後に続くであろう語彙は、推して知るべしである。
「で、では、もしよろしければ、その、今度…」
「あ、それなら一緒に行く?お花見」
タイミングを計りつつ言い淀んでいた晶の言葉に、庵のマイペースな発言が被る。
隣でちょっとカチンとした晶に気付いて、庵は肩をすくめるも、のどかのほころんだ表情がぱあっと場の空気を明るくした。
「いいんですか?!…わ、私は賛成です!こちらからお誘いしたいくらいだし!ね、茜先輩いいでしょう?」
「えー…でもなあ、最初は仲間内だけが良くないか?他の二人もどういうか」
渋る茜に、のどかと並んで杏奈も「え~」と肩を落とす。
「私もいいお話だと思いますよ、先輩?…それに、私も庵さんたちと、アカデミッククイズの話なんか出来たら嬉しいですし。上京してから、同じ趣味の人って全然いなくて、先輩とののちゃんたちに会うまでずっと寂しかったですもの」
「むむ、まあ、気持ちは分からなくもないけど…ちょっと、ふ、二人ともそんな目で見るなって!」
「じぃぃぃぃっ」「じーっ…」
「むむむっ…」
後輩二人のダブル上目遣い視線に気圧され、さしもの茜もやれやれと頭を振った。
「わ、分かった、分かったよ!ったく、しょうがないなあ」
「やったあ♪」「まあ、嬉しい~」
「僕らも嬉しいです~♪」
女性陣に釣られて思わず鼻の下を伸ばしてしまった晶には茜の情け容赦ない警戒殺気視線ビームが突き刺さり、瞬く間に「す、すみません」と肩をすくめるに至った。
「俺も楽しみだなあ。本戦出場者やクイズ好きと同窓会みたいな事出来る機会って滅多にないしね」
サービスの冷水をまったりといただく庵も、機嫌良くニコニコしている。
「まあ、そうなるのかな?僕なんかいつも予選落ちだったけど」
「ショート先輩そうだったんですか?一体どちらの会場で…」
「茜坂だ!安佐、も、元クイズ王だからって馴れ馴れしくすんなよな!
…僕は秋田だから、北東北大会だったけど」
「おお、秋田美人だ。どうりで日焼けの割に肌つやキレイ…」
「うるせえな!…おい、お前らはどうなんだよ。そこのヒゲとか線目とか」
いきなり話の矛先を向けられて、夏彦と敦は「うっ」と口ごもる。
「お、俺か?…あの頃は島根に住んでたから中国地区大会だったが。三年の時だけ出場して県別の決勝で負けたよ」
「安藤先輩、毎年出てそうなのに」
「夏は短期バイトの稼ぎ時だったんだよ。出たいのはやまやまだったが…敦、お前は?」
「僕ですか?僕は北陸大会になります。と言っても、僕は実家の酒屋が忙しくて出たことないんです」
「へえ、意外」
「今思えば行っておけば良かったな、ってよく思いますけどね」
表情と口ぶりから察するに、多分行きたくてうずうずしてたが実家の手伝いも断れなかったのだろう。
当時の苦悩が透かして見えるようで、親孝行な長男坊の敦に可愛げを感じる一同であった。
【続く】
「まあ、それではクイズ研究サークルを立ち上げるんですか?偶然、こちらと同じですねえ」
杏奈が嬉しそうに手を叩くのを見て、男衆は「?」と目を丸くする。
「同じって…」
「ん?ああ、僕んとこもこれから立ち上げなんだよ。
クイズ研究サークル・イン・アナマリア女学院大学」
茜の言葉に、アーサー大陣営の男四人は一斉に「おおっ」と色めき立つ。
「め、メンバーは」
「私たち三人と、あと他に二人います。今度、立ち上げの記念にお花見へ行こうかな、なんて計画中なんですよ」
「ああでも、藍子は来れそうにないって言ってなかったか?あいつ、これから忙しくなりそうだし」
「へえ~」
「へーっ」
「ほお~」
合わせてもいないのに、食べるのに必死な庵を除く男三人の呟きが与作の掛け声の如く並ぶ。
その後に続くであろう語彙は、推して知るべしである。
「で、では、もしよろしければ、その、今度…」
「あ、それなら一緒に行く?お花見」
タイミングを計りつつ言い淀んでいた晶の言葉に、庵のマイペースな発言が被る。
隣でちょっとカチンとした晶に気付いて、庵は肩をすくめるも、のどかのほころんだ表情がぱあっと場の空気を明るくした。
「いいんですか?!…わ、私は賛成です!こちらからお誘いしたいくらいだし!ね、茜先輩いいでしょう?」
「えー…でもなあ、最初は仲間内だけが良くないか?他の二人もどういうか」
渋る茜に、のどかと並んで杏奈も「え~」と肩を落とす。
「私もいいお話だと思いますよ、先輩?…それに、私も庵さんたちと、アカデミッククイズの話なんか出来たら嬉しいですし。上京してから、同じ趣味の人って全然いなくて、先輩とののちゃんたちに会うまでずっと寂しかったですもの」
「むむ、まあ、気持ちは分からなくもないけど…ちょっと、ふ、二人ともそんな目で見るなって!」
「じぃぃぃぃっ」「じーっ…」
「むむむっ…」
後輩二人のダブル上目遣い視線に気圧され、さしもの茜もやれやれと頭を振った。
「わ、分かった、分かったよ!ったく、しょうがないなあ」
「やったあ♪」「まあ、嬉しい~」
「僕らも嬉しいです~♪」
女性陣に釣られて思わず鼻の下を伸ばしてしまった晶には茜の情け容赦ない警戒殺気視線ビームが突き刺さり、瞬く間に「す、すみません」と肩をすくめるに至った。
「俺も楽しみだなあ。本戦出場者やクイズ好きと同窓会みたいな事出来る機会って滅多にないしね」
サービスの冷水をまったりといただく庵も、機嫌良くニコニコしている。
「まあ、そうなるのかな?僕なんかいつも予選落ちだったけど」
「ショート先輩そうだったんですか?一体どちらの会場で…」
「茜坂だ!安佐、も、元クイズ王だからって馴れ馴れしくすんなよな!
…僕は秋田だから、北東北大会だったけど」
「おお、秋田美人だ。どうりで日焼けの割に肌つやキレイ…」
「うるせえな!…おい、お前らはどうなんだよ。そこのヒゲとか線目とか」
いきなり話の矛先を向けられて、夏彦と敦は「うっ」と口ごもる。
「お、俺か?…あの頃は島根に住んでたから中国地区大会だったが。三年の時だけ出場して県別の決勝で負けたよ」
「安藤先輩、毎年出てそうなのに」
「夏は短期バイトの稼ぎ時だったんだよ。出たいのはやまやまだったが…敦、お前は?」
「僕ですか?僕は北陸大会になります。と言っても、僕は実家の酒屋が忙しくて出たことないんです」
「へえ、意外」
「今思えば行っておけば良かったな、ってよく思いますけどね」
表情と口ぶりから察するに、多分行きたくてうずうずしてたが実家の手伝いも断れなかったのだろう。
当時の苦悩が透かして見えるようで、親孝行な長男坊の敦に可愛げを感じる一同であった。
【続く】
トラックバックURL↓
http://3373plugin.blog45.fc2.com/tb.php/251-21524bca
| ホーム |