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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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長くなりすぎて小さくなっているハチヤですこんばんわ。

ひとまず四月編が済んだらしばらくアンアン書きためしようかな…とか思ってます。
つか、続きのストックが切れかけ(ry
その前にもう少しまとめる技術を身につけろと小一時間(ry

明快なショートショートが書ける子になりたいものです。
こんなgdgd野郎ですが、暇なときにでもお付き合いいただければ幸いです。

下に前回カットした続きを。
*

学生寮のカードキーを入れた革のケースを受け取り、庵は晶と一緒に銀杏の街路樹が並ぶ帰路をとぼとぼと歩いていた。
「全く、君幾つになってもそそっかしいよね」
「ゴメン」
「いいよ、慣れてるし。思いがけず、今年最大級のラッキーがやってきちゃったしね」
杏奈の清楚な笑顔を思い出し、無意識にデレっとしてしまう晶の隣で、庵はどこか上の空である。

「どうしたの、庵」
「いや、何も」
「本当に?」
晶は聡いと、庵は幼い頃から思っていた。
気遣いが細やかなのも、注意力が自分よりもずっと優れているのも、他者の感情を察して汲み取るのが上手だからだ。少しでも落ち込んだり、気分が塞ぐとごまかしてもすぐにバレてしまう。隠し事が出来ない、いわゆる「気の置けない友人」である。
それに加えて世話焼きな性分だから、それについつい甘えてしまう自分がいる。

「いや、ちょっとさ。思ったんだ。ご褒美かなって」
「何が」
「内緒。でも、神様ってやっぱりいるのかなって、今日少し思った。少しだけだけど」
「ふーん」
あまりはっきり言いたがらない庵を見て、晶は取り立てて追求もせず並んで歩く。
庵の曖昧な言動は今に始まったものでもないし、言動の端々にどことなく幼なさを感じるのも、個性だと思っている。
幾つになっても、どこかしらイノセントで幼さが抜けきらない友人だが、内在している知識や知性と反比例した純粋さが晶は時折羨ましくもあった。

「学長から許可もらっても、クイズはほどほどにしなよ」
「分かってるって」
「でも、少しほっとしたかな」
「何が?晶」
「君、てっきりもうクイズ嫌いになったかと思ってたから」

庵の足が止まる。
並んで、晶も歩みを止めた。

「この二年間クイズのクの字も出してこないから、これは本当に嫌気差したかなーって。ちょっと安心してたけど、正直心配もしてたんだ」
「色々ありすぎたからな」
俯いた庵の横顔に、微かに陰が落ちる。
ここ最近、ずっと見せていなかった暗い過去の残滓が顔を覗かせる。

「本当、色々あったものね。高二の夏から卒業の年の春まで」
「お前にも随分迷惑かけたよな」
「それは言いっこなしだよ。君の方が僕より何十倍も辛い思いしたのに」

「俺の痛みは俺のもんだ。お前の痛みとは比べられないよ。

…でも晶。
俺未だに感謝してるんだぜ。
あの頃学校行っても、側にいてくれたのはお前だけだったから」

「それを言うなら、僕が一番辛かった時に一番に探しに来てくれたのは庵だったよ」
「当然じゃん。友達なんだから」
「嬉しいな、僕も同じ意見だね」
顔を見合わせて、アハハ、と笑って学生寮前の坂道を並んでまた歩き出す。

「さっき、カードケースの中見た時、偶然見えたんだよね、コレ」
そう言って、晶は自分の財布から一枚の写真を取り出す。
「あっ…」
「ケースの底に突っ込んでたから今まで気付かなかったよ。まさか、庵も同じようにして持ってるとは、思わなかったけど」
言われて、庵も革のカードケースから同じ写真を取り出し視線を落とす。

それは、一番世界がキレイだった頃の思い出。
高校二年生、アカデミッククイズ二連覇の時の記念写真。
周囲は祝福で満ちて、自分たちは大きな事を成し遂げたんだと胸を張っていられた頃の残り香。

色褪せた写真の中央で、高校二年生の自分たちが、決勝大会の客船上で撮影機材のセットを背に最高の笑顔で笑っている。
中央には司会の福盛アナ、その右側に優勝トロフィーを抱えた庵が、晶と肩を組んで立っていた。

だが、どちらも左半分はキレイに切り取られた写真。
福盛アナの右肩口からすっぱりと切り落とした写真の左側には、思い出したくない「あの日の傷痕」があった。

「あいつ、今なにやってんのかな」
「さあね。関西の大学に進学したって聞いたけど?」
「そっちじゃない。…カズミ」
「ああ、…ごめん。彼女の噂は全然聞かないから、僕も知らない」

仲違い、というにはあまりに長い時間だったように思う。
腹の底に様々な感情を抑え込んだまま、高三の大会に並んで回答席へ立っていた自分たちは、視聴者にはどんな風に見えていたのだろう。
時々、過去の古傷を見つけては痛みを懐かしむように、そんな事へ思いを巡らせていた時期が、確かにあったのだ。

写真を互いの財布やケースにしまい、溜息を長く吐き出すと、深く春の息吹を吸い込む。
鼻孔の奥へと抜けていく温い大気は、あの日の潮風にも似た優しさを含んだ若葉の匂いがした。
ふう、と息をついて空を見上げと、霞に煙る上弦の月が見えた。

「青春の延長戦、か。僕も乗っかってみようかな」
「乗ってみちゃう?」
「でも本当に大丈夫なんだろうね?これで万一駄目出し喰らったら、最悪杏奈さんとのお花見もパーになりかねないんだから」
「それはへっちゃらだよ。俺、あれから確信無いと大丈夫って言わないようにしてるから♪」
鼻の穴を膨らませて自信満々な庵に、晶は逆に不安を感じて顔をしかめる。
「それこそ本当かなぁ~…まあいいや、さ、早く帰って寝よ!」
「だな!…よし、やってやるぜ!とりあえず、ゲームの中でもっかいクイズ王になってやる!」

2008年初春。
彼らの激動の一年は、まだ始まる直前の余韻の中にあった。

【その3へ続く】












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