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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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笑顔の裏に立つ陰は。
*

夕方五時過ぎ。
研究棟で寝泊まりしている夏彦に「今バタバタしてて外出出来ないから、届を持ってきてくれ」とメールを受け、再び三人揃っての帰途となった。
研究棟は一旦校門を抜けて、大学本棟裏手、丘の裾野にそびえる大学病院側へ出なければならないため、一般の生徒は普段寄りつかない場所である。

先日敦が夏彦に連れられて行った際には、院生御用達の病院裏手の生け垣脇にある小さな石段を突っ切る裏道を通ったため随分早く着いたが、自分の方向オンチを自覚している敦があえてその事を黙秘していたのは懸命な判断と言える。
事実、彼は数日前に一度夏彦の所に遊びに行こうとして、裏道を見失い、数時間後に涙目で病院の看護婦に研究棟の正面玄関までわざわざ送ってもらうという誠に不名誉な方向オンチぶりを発揮していたが、やはりこれも夏彦以外には内緒である。

「お前さん、なんていうか【方向オンチ超人】だなあ」とは、最近アンサーアンサーを息抜き程度に始めた夏彦の談である。
いつか、この不名誉な称号を返上しようと、夜な夜なこっそり「方向オンチの治し方」という本を熟読している敦もまた、最近同じゲームをし始めて今では初段にまでなった。

「(今、庵先輩ってどのくらいなんだろう…段、にはなってるのかな…)」
前回のプレイはゲストプレイでの対戦だったため、庵の現状での実力は分からない。
しかし、備えあれば憂い無し、である。
今日くらい対戦申し込もうかなぁ、などとタイミングを推し量っている敦の気配など、庵は全く気付いていないようである。

「今日の講義も終わり~、バイトも連休に詰まってるから今月末まで休み~♪しばらく遊べるぞ~」
「お金の利用は計画的に、ね。ゲーム金欠にはご飯分けてあげないよ」
「分かってるよぅ晶くーん♪」
手にひらひらと「サークル入部届」をつまんで、足取りも軽やかに上機嫌で研究棟へと向かう庵の背後で、敦はふと思い立ち「あれ?」と首を傾げる。

「…庵先輩、連休って五月の?」
「ん、そうだよ」
「帰らないんですか?実家…」
「もち。だって稼ぎ時だしね~♪」
それ以上何も言わず、またクルリと踵を返して前を行く庵に再び声を掛けようとした敦に、晶が「敦」と言葉を遮る。

「君は一時帰省する派なんだね」
「あ、はい。…弟にも、妹にもせっつかれて。僕もバイトしようかなとは思ってたんですが…」
「感心だね。僕は仕送りでスネかじってるからなぁ…もうどこか決まったの?」
「いえ、まだです。連休明けには決めておきたいのですが」
「そうしなよ。ゆっくり、いいところ探すといい。
高給でなくても長続きするとこを、ね。…で」

それとなく、そっと小声で耳打ちする。

「庵に実家の話は禁句」
「え?」
思わず素っ頓狂な声を出しかけた敦の喉が、晶の厳しい表情で固まる。

「…庵の機嫌が良くて良かったね。普段話を振ったら十中十アウト。途端にダークに入って何も言わなくなるから」
「何で…」
「それはまた、話せそうな時にでも教えてあげるよ。…君は信用出来そうだからね」
「え、あの」
言いかけて、晶の表情が申し訳なさそうな苦笑に変わるのを見て、あ、と敦の脳裏に小さな閃きが起こる。

「(…もしかして、高校三年生の時の、庵さんの『空白の一ヶ月』事件…かな…)」
ぽ、と頭に連想クイズのように答えがぼんやりと浮かんで、敦は「ああ」と心中呟く。

「(有名になりすぎて、マスコミに自分や身内を中傷する捏造記事を載せられて、お二人とも相当参ってたはず…)」
「(…それと『三人目』…お二人を裏切って、マスコミに尻尾を振った…)」

晶の苦笑いに、彼の言わんとする「事情」が透かして見えて、敦は申し訳なさそうに頭を垂れた。

「あ、……はい。ごめんなさい、僕も何となく分かっててもいいようなのに…」
「ご、ゴメン。そんなに恐縮されると、逆に悪いよ。今の言葉はやっぱり忘れて」
「そんな、僕の方が恐縮してしまいます。それに僕も、もっとお二人と仲良くなりたいですし」
「そっか、…有難う」
にっこりと敦が笑ってみせると、晶もやっと穏やかな笑顔を浮かべた。

「おーい、どーかしたか?」
向こうの方から聞こえた大声で二人とも我に帰る。
気がつくと、庵は随分向こう、桜の並木道を抜けて既に校門前でうずうずとしていた。

「早くヒゲ先輩のとこ行こーぜー!部長に届出したらいいんだろ?その後は久々にゲーセン行きたいしさー」
背中に愛用のノートパソコン入りのバッグを背負ったまま、軽々とぴょんぴょんジャンプして手を振る庵に、晶が慣れた様子で手を振り返す。

「はいはい、今行くからねー」
「そうなんですか?僕も行きまーす」
駆け出そうとした二人の視界、庵の背後に、ふとどこかで見たような人影がちらりと飛び込み足が止まる。

「あ」「あれは」

ほぼ二人が何事か言おうとしたのを察して「?」と庵が首を傾げた瞬間、庵の背後で「その人物」は「よお」と低い声色を発した。

【続く】












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