久々更新です。遅くてすみませんすみません…。
並び立つ二者。
*
大学町アン大前コンビニ隣、ゲームセンター「ピンポンDASH」。
2階奥のクイズゲーム「アンサーアンサー」の四つ並びサテライト・その奥席二つに、神妙な面持ちで並んで座る男二人。
左席、逆立ったソフモヒ青年の背後には複数、右席の黒髪ツンツン頭の青年にはすぐ背後へロングヘアの青年が一人。
背後には数名の、やはり同世代風の若い男が数名。
アン大と瀬賀大の、はなきん満喫中な暇を持て余した学生が、それとなく台の左右に別れて状況を窺っている。
瀬賀大とアン大は、そもそも隣町同士の大学なのだが、アン大創立当時からあまり良い関係ではない。
少子化に加え、学部が多く被っている事や偏差値的にも拮抗しているで生徒の取り合いになっている事などが主な原因と言われているが、一番の違いは校風であろうと思われる。
質実剛健、実直、誠実を掲げ、古式ゆかしい保守的な教育方式を重んじている瀬賀大にとって、自由な発想と研究を尊び、個々人のスタイルに合わせた自主性を尊ぶアン大のスタイルは鼻持ちならなく映るらしい。
瀬賀大生曰く、「遊んでる奴が行く大学」「金持ちのボンボン学校」等々。
アン大生も、瀬賀大の古めかしい校舎やキャンパスに通ってる生徒がアン大の先進的でオープンなキャンパスを羨んでるとか、「ダサイガリ勉の行く大学」「男臭い大学」「名ばかりの化石国公立」等々、どっちもどっちな言い分が聞こえてくるだけで、互いにいつしか敵対心を抱いては実のある会話に発展しないのが両大学生の現状であった。
それは今でも変化はなく、現役の生徒同士が双方の大学名を聞くと、相手は「あー…」と、何となく険悪な空気が漂う、そんな間柄なのである。
なので、双方の大学生は公共の場で遭遇すると、互いに空気を察し、それとなくぶつかり合わないように見えない線引きを引き調和を保っている。
そうした背景があるため、当初はゲーセン内で見慣れない顔を見かけた際に「ケンカにならなきゃいいけど…」と警戒していた晶だったのだが、今日の瀬賀大生=聞けば、大輔の元サークル仲間らしい=は敵意どころか庵と晶の顔を見た途端「ああ!」と得心した様子で笑みをこぼした。
「おー、生アンアンだ」
「ハリセンも込みだ、すっげー」
…過去のプチ有名人に会って興奮している風な後輩二人に「どーも生安佐と安住君でーす」と庵が答えると、「生!」「ナマきた!」とノリの良い返事が返ってきた。二人は敦と同じくまだ一年生で、入ってすぐにサークル潰れたっすよと苦笑いを浮かべた。
「割とあっさりしてるね…」
「え?ああはい、同じ学部の先輩とかはアン大生ってだけでものっそい嫌がる人いるけど、俺等別にどこそこの生徒だからって嫌ったりしませんよ」
微妙な面持ちの晶を察して、大輔と話をしていた青年が話に割って入る。
「…話、聞いてたんだよ。ダイちゃんの因縁の相手なんでしょう?しかも顔忘れられてたってすっげーキレてたし(笑)俺等みたいな元クイズ高校生だった連中には有名人だし、もっと感じ悪いのかと思ってたけど、ダイちゃんが全力で否定してたからどんな奴なんだろうと思ってたんだ」
大輔とは同い年というポロシャツ姿の青年はそう言って、「でも、アン大生には負けないよ!」と明るく笑う。
大輔はサークル主催者であっただけあって、仲間内や後輩からも随分慕われているようだ。
先程も、一言「オッス」と声を掛けただけで彼らの表情が和んだのを見て、晶は少々意外に思いながらも悪い人間ではないのだな、と再確認した。
*
右座席で、黒髪ツンツン青年=庵は、久しぶりに回答席前での緊張感を思い出し、背筋にジリジリと心地よい高揚を感じていた。
背筋に立ち上ってくる、レース直前の駆け出す前にも似た筋肉の硬直の感覚。
オンラインの顔隠した全国対戦もいいけど、やっぱり人の顔見てやるのが一番だね。
やっぱりリアルも、捨てたもんじゃないな。
「安佐ぁー、今日も勝てよなー」
「俺今日バイト給料入ったから、勝ったらメガマックおごってやんよ~」
講義帰りのまったりムードなアン大同級生数名に、「覚えとくからな」と庵は歯を見せて笑う。
さっき購入したばかりの500mlミネラルウォーターのボトルを一気に半分飲み干すと、回答席にドン、と勢いよく置き直し一息つく。
「んじゃ、始めるか」
「だな」
先日なくしかけたカードケースから、一方使い込んだ黒革の財布から、互いにICカードと百円玉を引き抜くと、慣れた手つきでカードを差しこみ硬貨を投入する。
シャリーン、と軽快な接続音が互いの筐体から聞こえた。
大学町アン大前コンビニ隣、ゲームセンター「ピンポンDASH」。
2階奥のクイズゲーム「アンサーアンサー」の四つ並びサテライト・その奥席二つに、神妙な面持ちで並んで座る男二人。
左席、逆立ったソフモヒ青年の背後には複数、右席の黒髪ツンツン頭の青年にはすぐ背後へロングヘアの青年が一人。
背後には数名の、やはり同世代風の若い男が数名。
アン大と瀬賀大の、はなきん満喫中な暇を持て余した学生が、それとなく台の左右に別れて状況を窺っている。
瀬賀大とアン大は、そもそも隣町同士の大学なのだが、アン大創立当時からあまり良い関係ではない。
少子化に加え、学部が多く被っている事や偏差値的にも拮抗しているで生徒の取り合いになっている事などが主な原因と言われているが、一番の違いは校風であろうと思われる。
質実剛健、実直、誠実を掲げ、古式ゆかしい保守的な教育方式を重んじている瀬賀大にとって、自由な発想と研究を尊び、個々人のスタイルに合わせた自主性を尊ぶアン大のスタイルは鼻持ちならなく映るらしい。
瀬賀大生曰く、「遊んでる奴が行く大学」「金持ちのボンボン学校」等々。
アン大生も、瀬賀大の古めかしい校舎やキャンパスに通ってる生徒がアン大の先進的でオープンなキャンパスを羨んでるとか、「ダサイガリ勉の行く大学」「男臭い大学」「名ばかりの化石国公立」等々、どっちもどっちな言い分が聞こえてくるだけで、互いにいつしか敵対心を抱いては実のある会話に発展しないのが両大学生の現状であった。
それは今でも変化はなく、現役の生徒同士が双方の大学名を聞くと、相手は「あー…」と、何となく険悪な空気が漂う、そんな間柄なのである。
なので、双方の大学生は公共の場で遭遇すると、互いに空気を察し、それとなくぶつかり合わないように見えない線引きを引き調和を保っている。
そうした背景があるため、当初はゲーセン内で見慣れない顔を見かけた際に「ケンカにならなきゃいいけど…」と警戒していた晶だったのだが、今日の瀬賀大生=聞けば、大輔の元サークル仲間らしい=は敵意どころか庵と晶の顔を見た途端「ああ!」と得心した様子で笑みをこぼした。
「おー、生アンアンだ」
「ハリセンも込みだ、すっげー」
…過去のプチ有名人に会って興奮している風な後輩二人に「どーも生安佐と安住君でーす」と庵が答えると、「生!」「ナマきた!」とノリの良い返事が返ってきた。二人は敦と同じくまだ一年生で、入ってすぐにサークル潰れたっすよと苦笑いを浮かべた。
「割とあっさりしてるね…」
「え?ああはい、同じ学部の先輩とかはアン大生ってだけでものっそい嫌がる人いるけど、俺等別にどこそこの生徒だからって嫌ったりしませんよ」
微妙な面持ちの晶を察して、大輔と話をしていた青年が話に割って入る。
「…話、聞いてたんだよ。ダイちゃんの因縁の相手なんでしょう?しかも顔忘れられてたってすっげーキレてたし(笑)俺等みたいな元クイズ高校生だった連中には有名人だし、もっと感じ悪いのかと思ってたけど、ダイちゃんが全力で否定してたからどんな奴なんだろうと思ってたんだ」
大輔とは同い年というポロシャツ姿の青年はそう言って、「でも、アン大生には負けないよ!」と明るく笑う。
大輔はサークル主催者であっただけあって、仲間内や後輩からも随分慕われているようだ。
先程も、一言「オッス」と声を掛けただけで彼らの表情が和んだのを見て、晶は少々意外に思いながらも悪い人間ではないのだな、と再確認した。
*
右座席で、黒髪ツンツン青年=庵は、久しぶりに回答席前での緊張感を思い出し、背筋にジリジリと心地よい高揚を感じていた。
背筋に立ち上ってくる、レース直前の駆け出す前にも似た筋肉の硬直の感覚。
オンラインの顔隠した全国対戦もいいけど、やっぱり人の顔見てやるのが一番だね。
やっぱりリアルも、捨てたもんじゃないな。
「安佐ぁー、今日も勝てよなー」
「俺今日バイト給料入ったから、勝ったらメガマックおごってやんよ~」
講義帰りのまったりムードなアン大同級生数名に、「覚えとくからな」と庵は歯を見せて笑う。
さっき購入したばかりの500mlミネラルウォーターのボトルを一気に半分飲み干すと、回答席にドン、と勢いよく置き直し一息つく。
「んじゃ、始めるか」
「だな」
先日なくしかけたカードケースから、一方使い込んだ黒革の財布から、互いにICカードと百円玉を引き抜くと、慣れた手つきでカードを差しこみ硬貨を投入する。
シャリーン、と軽快な接続音が互いの筐体から聞こえた。
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