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少年二人。

*

榎本のペルソナ能力は、すぐに実力を発揮した。
後の桐条美鶴に移植された「探索」能力のベースは彼のペルソナのものだが、これは普通の戦闘型と異なり「探る・避ける・逃げる」に特化したタイプだった。研究所の地上から地下最深部に至るまで、彼のペルソナ=シーサーの探索能力を使えばごく数十秒で把握出来、なおかつ場所と位置を特定すればその場にいる生命反応や物質、エネルギー反応の数量・性質までも事細かに調べる事が可能になった。現在で言う所の「サーチ」や「アナライズ」能力である。
当時、まだそういう探索向けなペルソナは非常に珍しく、彼の能力は後々まで桐条内部で非常に重宝された。
そんな彼のペルソナに誘導され、「計画」の前に成瀬は地下の研究所へ子供を救助に向かっていた。
あまり時間は無かった。数日内にも、最終実験が行われると囁かれていたからだ。
探索用のイメージを得るため、どんな子供なのかと榎本に問われ、成瀬はあえて答えなかった。堂島もまた、彼のそんな奇妙なそぶりを問いただしはしなかった。そのため、榎本は研究所の図面を頼りにサーチを繰り返し、やっと答えらしい小さな存在を図面上の何もない空間に見いだした。

セオリー通りに周囲の警備兵を峰打ちにして掃除道具入れに押し込め、カメラの監視をしていた研究員をはり倒し口を塞いで別の部屋にまとめて押し込むと、成瀬は榎本の指定した地下室に足を踏み入れた。通信機を頼りに、遠隔から堂島に防犯カメラとセンサーをハッキングさせ機能麻痺させると、金森特製カードキーを用いて、分厚い鉄板扉を開く。
第一チームの兵器格納庫に隠れるように、作られた小さな隠し部屋。
その中に、少年は…いや、少年「たち」はいた。

一人は小さなベッドの上で顔を膝に埋めて、声を殺し泣いている。黒い髪、実験用の白衣、小学生になったばかりの小さな男の子。
一人はそんな彼をいたわるように傍らに腰掛け、肩を抱き膝をさすっている。金髪、白い微笑みをたたえた仮面、古代ギリシア人を思わせるローブに、片手には小さな竪琴。姿形や背丈は、黒髪の少年と酷似していた。

「うう……ひっく…お………うさ……ん…おか……さん…」
『泣かないでフタバ、元気出して…』

その場にいた成瀬同様、堂島のハッキングした映像を介してその光景を見たチームの全員が驚きを隠せなかった。
まだ年端もいかない、自我の確立されたばかりであろう幼い子供が、ペルソナを喚んでいる。
しかも、ペルソナが自発的に喋っている。
何かに触発されて姿を現し言葉を介すとは話に聞いていたが、これは非常に珍しい光景だった。
少年が成瀬に気付くと、ペルソナの少年=吟遊詩人も同様に彼をきょとんとした眼差しで見つめていた。

「………おじちゃん?」
「…覚えてたか。かあちゃんに頼まれて助けに来たぞ、ボウズ」

真っ赤に泣きはらした目が、おどおどと成瀬を見上げる。怯えた様子のフタバと吟遊詩人の頭を、成瀬は同時になでなでしてやり、目線を幼い二人に合わせる。

「…おじちゃん、おかあさんは?」
「研究所の外だろう。おじさんな、悪い奴と戦うための機械を作ってたんだ。それで、お前がこの研究所にいる悪い奴に捕まったってかあちゃんからメールが入ってな。もの凄く心配してたぞ」
「おじちゃん、せいぎのみかただったの?しらなかった」
「ああ、まあ…これから成りに行くところ、かな?ともかく、お前達を地上に連れていかねばならん。そこのお前も、協力してくれるだろ?」
『そういう事でしたら』
吟遊詩人の少年は、立ち上がるとぺこり、と礼儀正しく一礼した。成瀬は、ポケットにたたんで入れておいた紙切れを取り出す。
「これ、お前さんだろ?かあちゃんがメールと一緒に、宅配便でこっそり俺宛に速達で研究所へ送ってくれた」
広げて、フタバと吟遊詩人の少年に紙切れを見せる。それは画用紙にクーピーペンシルで描かれた吟遊詩人を模した可愛らしいイラストで、隅っこに「ともだち」と描いてあった。
「うん、そうだよ。この前、おかあさんに見せてあげようと思って描いたの。おかあさん、見てくれたんだ」
『よかったね、フタバ』
「うんっ」
はじけるように笑う少年と、穏やかに微笑むもうひとりの「少年」が、ごく自然に対話している。自分のペルソナでは、まずあり得ないやり取りに成瀬は奇妙な感覚を覚えた。吟遊詩人の少年が、成瀬に向き直る。仮面の奥の青い瞳がこちらをじっと見ている。
『…もう一人の貴方と対話させていただきました。信頼できる方だと判断します。どうか、僕らを光の差す場所へ導いて下さい』
「心得た。おまえさん、名前は?」
『オルフェウス。アルカナは0番・愚者です。私は歌う事、心の海を渡って伝え聞いた話を語る事以外、能の無いペルソナですが…』
自嘲気味に、吟遊詩人=オルフェウスはうつむく。すると、かばうようにフタバが「ちがうよ」と割って入る。
「ぼくがいけないんだ。おとうさんの言うとおりに、ぜんぜんできないから、おとうさん…」
『そうじゃない、フタバが悪いんじゃないよ。僕に力が無いから…』
我が汝を互いにかばっている。どういう事かと成瀬が眉をひそめると、オルフェウスが重く口を開いた。
『…フタバはずっと一人でした。母親はいつも仕事か人に会うために出かけて、いつも家に取り残されていました。留守番のために友達とも遊ばず、誰もいない家でずっと母親の帰りを待っているだけの生活。そんな時に、私は彼の心の海から喚ばれました』
「………お前、ばあちゃんいないのか?」
「うん、いないよ。今老人ホームにいるって。でもね、おじちゃんが教えてくれたおまじないで、オルフェウスが来てくれたんだよ」
沈黙している成瀬の暗い横顔に、誇らしげにフタバはにこにこと笑ってみせる。
『私は彼の望み通り、友達になりました。寂しさをまぎらわせるため、歌を歌い、古い昔話や英雄の話を語り、母親の帰る時間までずっと行動を共にしました。ですが、私の存在を伝え聞いた彼の父親が私達を言葉巧みに誘い、騙してこの場所に閉じこめたのです…』
「…おとうさん、オルフェウスのこと、めんたるへいき、だって言ってた。これはすごい力があるんだぞって、早く使ってみせろって…」
明るくなりかけていたフタバの表情が、再び暗く沈んでいく。
『…彼の父親は、私に地を裂くような魔法や、雷鳴を呼ぶ魔法、何でもいいから多くの物を一度に破壊できる魔法を使って見せろと強要してきました。ですが、私は彼の友達になるために喚ばれて来たのです。彼が望んでいたのは、人を傷つけることではなく、人と繋がりあうこと。そのため、私には戦うための能力は全くこの身に宿していませんでした。火の玉一つ使えないのです』
「それで、おとうさん怒ったの。ぼくがそんなのヤダって言っても出来るって…それでもヤダって言ったら…いっぱい叩いて…」
ぽろぽろと、大粒の涙がフタバの両目からこぼれ落ちる。
「でもね…ぼくが……じょうずにできたら、お、とうさん…おかあ、さん、と、…またくらすって……いっしょに…くらすって…なのに、なのに…」
『フタバは全然悪くないんです。私が至らぬばかりに、このまま閉じこめられ続けるのかと思って悲観していた所でした…』
なきじゃくるフタバをよしよししながら、オルフェウスは申し訳なさそうに成瀬を見上げる。
オルフェウスのアルカナから察するに、まだ生まれたばかりの自我で生み出された未成熟なペルソナだったのだろう。
自分の実の子と、幼い子供が純粋に望んだ「友達」としてだけの能力しかない存在に、ガラティアのように死と隣り合わせの戦闘をさせようとしていたのかと思うと、成瀬は心底日向が憎らしかった。
「…そうだったか。よしよしお前達、もう泣かなくていい。もう大丈夫だからな。俺と一緒にかあちゃんとこへ帰るぞ。ほれ、これでも口に入れておきな」
滝のように涙を流すフタバの頬や鼻の下を白衣で拭ってやると、成瀬はフタバの口にポケットに常備しているコーヒー味のソフトキャンディを含ませる。オルフェウスにもアメ玉を見せたが、彼は微笑んだまま首を振る。やはり、飲食まではしないようだ。それでも不安そうな少年と、友達のペルソナを一緒に抱きしめて成瀬は彼らをなだめすかす。こうして抱きしめていると、どっちも本物の子供のようなしっかりした抱き心地がした。
それほど、この子は寄り添う誰かをずっと求めていたのか…。そう思い、成瀬は今更ながら少年に申し訳なく思っていた。
『成瀬、その子供と面識があったのか。道理でやけに肩入れすると思った』
通信機を通じ、堂島から連絡が入る。ふと我に帰り、成瀬は現実に引き戻された。
「ん…ああ。悪い、話し込んだ。後どれくらい保つ」
『幾らでも、と言いたいが急げ。安全なポイントに今人員を向かわせている。後は手はず通りに彼らの手で脱出させ、親元に帰す』
「心得た。では同時に計画を進行させる。戻り次第、最後の仕上げに入るとしよう」
通信を切断すると、成瀬は背負っていた小さな鞄から衣服を取り出す。
「お前のかあちゃんに頼んで、一着だけ服を送ってもらった。随分とかっこいい、余所行きのだ。これにすぐ着替えてくれ。友達の分は、勘弁してくれな」
少年の身の丈にぴったりな黒いジャケットや白いワイシャツを取り出しながら、成瀬は着替えの段取りをしているフタバとオルフェウスを微笑ましく眺めていた。












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