彼にだけ「見える」世界は。
*
「さて二回戦目のお題目は」
【早押し連想クイズ】九つのヒントから答えを導き出せ!直感と発想が勝負のカギだ!
庵「やっと早押し来たな」
大輔「よしよし」
双方満足げに手首を回したり手の甲をならしたりと、入念にウォーミングアップ。
向かいの閑散としたMJの二人用長座席を陣取って、まったり観戦中の大学生たちも早押しが見たいらしい。
「お、早押し?」
「鬼早押し来る?」
と、はやしたり画面を覗き込んだりと、先程よりも食い付きよくクイズに見入ってくる。
「安佐次勝てよお~クイズ王の名が泣くぞ~」
「ストレート負けしたら俺等にもモツ鍋とビール奢りな~」
アン大の誰かが冗談交じりにそう呟くと、「それはマジ勘弁(∩;´ω`)」と庵は苦笑いを浮かべた。
【ジャンル選択】
庵「んじゃ次は本気で」
→ジャンル選択:【漫画・アニメ・ゲーム】LV4
大輔「俺はこれでいいか」
大輔→ジャンル選択:【語学・文学】LV4
スロットル→【アニメ】×1、【語学・文学】×1、装填完了。
ふいに会話が途切れ、辺りから声が消えると、ゲームからこぼれる効果音のみが耳を騒がせる。
自分たち以外に、誰も入っていない2階の片隅が、しんと静まる。
何故、皆一斉に口を閉ざしたのかは、対戦している大輔が一番肌で感じ取っていた。
庵の双眸が、見開かれている。
「ライブラリ」が解放されている証拠。庵が己の脳内知識の海に入り込むと、瞬間的に周囲には形容しがたい静寂が走る。
それは、周りにいる者に畏敬にも似た感覚を起こさせた。
あの静寂は、自分の脳内へ向かって、庵の脳内に在る「図書館」から発せられてる「電波みたいなもの」の働きかけなのかなと、晶は思っている。
そして「それ」は、常々庵自身が呟く口癖を思い起こさせた。
「どうして、皆俺とおんなじように「見えない」んだろう」
そう呟くと、必ず「俺の脳みその中身、皆にも見せられたらいいのに!」と言うのだ。
覚えたもの全てが、望めば「見る」だけで「答え」として浮かび上がってくる世界。
英文の単語も、難解な数式も、手招きするように、早く書き起こせと言わんばかりに浮かび上がってくる、たった一度見た夕焼けを、真夏の海を、浮き輪の模様から新緑に羽ばたく燕の羽の色まで克明に描き起こす庵の「図書館」。
興味はあるが、生憎未だに彼の脳と自分の脳とでは周波数が合わないらしい。
彼だけが受信・記録再生出来ている「何か」は、今のところ腐れ縁の晶ですら、解析出来ていない。
*
第一問:【語学・文学】連想問題
【東京生まれ】 → 【前は法律事務所勤務】 → 【…】
「あ、わかった」
ほんの僅か、ちょこん、と晶の指先が庵の背中をかすめた。
「…あっ!」
…と同時に、庵の手が反射的にボタンを強打していた。
回答文字制限:表示無し
回答文字群【き】【お】【み】【い】
「え?えっえっえ、ちょ、俺まだ分かってないっての!」
絞られていた瞳孔が元通りのサイズに拡張し、途端おろおろと指先がボタンの頂をこするように何度も弾く。
チッチッチッ… ブブー!
「あーーっ!」と画面に叫ぶ庵の代わりに、画面内では既に青毛のヒーローがしょんぼりとバッテンマスクを装着していた。
「晶!背中つっつくなよ!思わず押しちまっただろ!」
「ご、ごめん悪気はなかったんだよ!後ろに立ってたからついクセで!」
「クセ?」
隣の席で「?」となっている大輔に、庵が「アカデミッククイズの時の!」とすかさず答える。
「俺が一番早押し強かったから、押し負けそうな時は晶は俺の背中つっつくようにしてたんだよ。分かった瞬間に俺がすぐ叩けるように」
「なるほど戦略の名残りか。あ、二人羽織やスタンドは禁止な」
「そりゃもちもち」
スッ、と再び潮が引くような気配が庵の背中から発せられると、二人は瞬く間に画面内の試合へと戻っていった。
一問目→七枚目「模倣犯」で大輔回答【みやべみゆき】 ○ 正解!+10pt
やむなく半歩後方へと引き下がって観戦中の晶に、「怒られてやんの」と小声で同級生が脇腹を突く。
「うるさいな、時にはこんなこともあるよ」
「普段は逆なのにな」
「まあね。庵も早押しボタンの前に座ってる時みたく普段もしっかりしてくれたらいいのに」
「でもしっかりしてる安佐って、ある意味『きれいなジャイアン』並にレアじゃね?」
「あー…まあ、落ち着きないからね…」
ふうやれやれと言わんばかりに頭を振る晶だが、視線はしっかりモニタ画面を凝視している。
五問終了→庵30pt・大輔10pt 残りリザルト4問…
【続く】
「さて二回戦目のお題目は」
【早押し連想クイズ】九つのヒントから答えを導き出せ!直感と発想が勝負のカギだ!
庵「やっと早押し来たな」
大輔「よしよし」
双方満足げに手首を回したり手の甲をならしたりと、入念にウォーミングアップ。
向かいの閑散としたMJの二人用長座席を陣取って、まったり観戦中の大学生たちも早押しが見たいらしい。
「お、早押し?」
「鬼早押し来る?」
と、はやしたり画面を覗き込んだりと、先程よりも食い付きよくクイズに見入ってくる。
「安佐次勝てよお~クイズ王の名が泣くぞ~」
「ストレート負けしたら俺等にもモツ鍋とビール奢りな~」
アン大の誰かが冗談交じりにそう呟くと、「それはマジ勘弁(∩;´ω`)」と庵は苦笑いを浮かべた。
【ジャンル選択】
庵「んじゃ次は本気で」
→ジャンル選択:【漫画・アニメ・ゲーム】LV4
大輔「俺はこれでいいか」
大輔→ジャンル選択:【語学・文学】LV4
スロットル→【アニメ】×1、【語学・文学】×1、装填完了。
ふいに会話が途切れ、辺りから声が消えると、ゲームからこぼれる効果音のみが耳を騒がせる。
自分たち以外に、誰も入っていない2階の片隅が、しんと静まる。
何故、皆一斉に口を閉ざしたのかは、対戦している大輔が一番肌で感じ取っていた。
庵の双眸が、見開かれている。
「ライブラリ」が解放されている証拠。庵が己の脳内知識の海に入り込むと、瞬間的に周囲には形容しがたい静寂が走る。
それは、周りにいる者に畏敬にも似た感覚を起こさせた。
あの静寂は、自分の脳内へ向かって、庵の脳内に在る「図書館」から発せられてる「電波みたいなもの」の働きかけなのかなと、晶は思っている。
そして「それ」は、常々庵自身が呟く口癖を思い起こさせた。
「どうして、皆俺とおんなじように「見えない」んだろう」
そう呟くと、必ず「俺の脳みその中身、皆にも見せられたらいいのに!」と言うのだ。
覚えたもの全てが、望めば「見る」だけで「答え」として浮かび上がってくる世界。
英文の単語も、難解な数式も、手招きするように、早く書き起こせと言わんばかりに浮かび上がってくる、たった一度見た夕焼けを、真夏の海を、浮き輪の模様から新緑に羽ばたく燕の羽の色まで克明に描き起こす庵の「図書館」。
興味はあるが、生憎未だに彼の脳と自分の脳とでは周波数が合わないらしい。
彼だけが受信・記録再生出来ている「何か」は、今のところ腐れ縁の晶ですら、解析出来ていない。
*
第一問:【語学・文学】連想問題
【東京生まれ】 → 【前は法律事務所勤務】 → 【…】
「あ、わかった」
ほんの僅か、ちょこん、と晶の指先が庵の背中をかすめた。
「…あっ!」
…と同時に、庵の手が反射的にボタンを強打していた。
回答文字制限:表示無し
回答文字群【き】【お】【み】【い】
「え?えっえっえ、ちょ、俺まだ分かってないっての!」
絞られていた瞳孔が元通りのサイズに拡張し、途端おろおろと指先がボタンの頂をこするように何度も弾く。
チッチッチッ… ブブー!
「あーーっ!」と画面に叫ぶ庵の代わりに、画面内では既に青毛のヒーローがしょんぼりとバッテンマスクを装着していた。
「晶!背中つっつくなよ!思わず押しちまっただろ!」
「ご、ごめん悪気はなかったんだよ!後ろに立ってたからついクセで!」
「クセ?」
隣の席で「?」となっている大輔に、庵が「アカデミッククイズの時の!」とすかさず答える。
「俺が一番早押し強かったから、押し負けそうな時は晶は俺の背中つっつくようにしてたんだよ。分かった瞬間に俺がすぐ叩けるように」
「なるほど戦略の名残りか。あ、二人羽織やスタンドは禁止な」
「そりゃもちもち」
スッ、と再び潮が引くような気配が庵の背中から発せられると、二人は瞬く間に画面内の試合へと戻っていった。
一問目→七枚目「模倣犯」で大輔回答【みやべみゆき】 ○ 正解!+10pt
やむなく半歩後方へと引き下がって観戦中の晶に、「怒られてやんの」と小声で同級生が脇腹を突く。
「うるさいな、時にはこんなこともあるよ」
「普段は逆なのにな」
「まあね。庵も早押しボタンの前に座ってる時みたく普段もしっかりしてくれたらいいのに」
「でもしっかりしてる安佐って、ある意味『きれいなジャイアン』並にレアじゃね?」
「あー…まあ、落ち着きないからね…」
ふうやれやれと言わんばかりに頭を振る晶だが、視線はしっかりモニタ画面を凝視している。
五問終了→庵30pt・大輔10pt 残りリザルト4問…
【続く】
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