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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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己の立ち位置と、友の居場所。
*

ハリセンを手にしたまま腕組みして黙然と考えている風な晶の横顔に、別の同級生が「なあ」と声をかける。
「さっきの問題、二人ともスルーしたけど答え分かった?」
「ああ、エンタメの?…多分(小声→)ピチカート・ファイブだと思うんだけど…」
「ナニソレ?」
「僕たちが幼稚園くらいの時代に流行ってた、いわゆる「渋谷系」ミュージックの代表格…だったかな?実家の兄ならもっと詳しく分かっただろうけど、僕はそんなに知らないんだ」
「つーか、名前は知ってるんだな…」
「名前だけね」
「へー…」
どことなく、言葉の端々から確信めいたものを感じさせる晶に、同級生が「じゃあさ」と更に突っ込んでくる。

「何枚目くらいで分かったよ」
「さっきの?…二枚目の【トゥイギー】くらいで何となく。七枚目から出てきた歌手三人は、ボーカルとして一時期でも所属してたはずだから間違いないと思う」
「ふーん。普段は大体何枚くらい開いたら分かるもんなの?」
「一枚目でも分かることはあるよ。ジャンルで大体推測つくから」
「へえ…」

同級生二人の口元ににやーっと笑みが浮かんだのを見て、「なに?」と晶は顔をしかめる。

「いやなんつーか、詳しいな~と思って」
「た、たまたまだよ」
素知らぬふりを決め込む晶に、同級生は意地悪く「隠さなくたっていいのに」と笑い合う。

「何笑ってるんだよ」
「いやー、お前も変なとこで格好つけるよなーと」
「どういう意味だよ?」
珍しく食ってかかる晶に、同級生は二人とも苦笑いを浮かべる。

「別にゲーセン来てるからって、もてなくなることはないぞと地元関東人は思うんだぜ」
「そういうところで澄ました顔して意識し過ぎるから、逆に振られるんじゃね?と本場の関西人も同意してみちゃうんだぜ」
「う、う、うるさいなあ!!」
声を荒げた晶の顔が一瞬で紅潮したのを見て、「図星だ」「図星だな」と、同級生の口元からはニヤニヤが止まらない。

「まーったく、黙って普通にしてればいい男なのに、変なとこで見栄っ張りなんだよな晶は」
「で、今これどんくらい強いの?後で対戦しよーぜ?」
「もっ、もう、別に僕はいいだろ?」
「ええ~」

試合終了の鐘の音が画面から聞こえ、三人ははたと我に帰り、ある事に気付いた。

「あ」
「庵の早押し見損ねた」
しくじったあ、と悔しがる同級生を横目に、晶は「(僕はいつも見てたからいいけど)」と、心中でこっそり呟く。

「そんなに見たいの?早押し…」
何気なく尋ねると、二人とも顔を見合わせる。
「ん?いやあ、やっぱ昔テレビで見たものを生で見る機会なんて滅多にねえし」
「それに、こないだ見てた奴らがやたらと凄かった凄かったっつって騒いでたからさ」
その程度のものらしい。

「そんなら心配いらねえよ~」
二戦目を終え、庵が背後に顔を向ける。目が大きく見開いたままだ。口調は軽いが表情から感情が汲み取れない。
まばたきも極端に減っている。

「次はまんま早押しクイズだから」
指差したローディング画面では、右端三枚目のクイズ形式「早押しクイズ」がオープンされていた。

「さっきはどうなったの?」
「俺が40対20で勝った。点差もイーブンだから、次が本当の勝負」
「って、事になるな」
画面を直視したまま手首を軽く振ってほぐす大輔の隣で、庵も表情が徐々に固さを増していく。
「ライブラリ」の回転数が上がってくると、庵は顔に表情が出なくなってくる。
内面に意識を向けるせいなのか、その間はライブラリを解除するまでニコリともしない。

ああ、入り込んでるな、と晶は確かめるように思う。
正直なところ、その「無表情」は、普段の落ち着きない庵とは全く真逆の、異質な存在感を際だたせた。
クイズ以外の時、例えば勉強中や読書の時、庵のそんな能面にも似た横顔を見ていると、昔は時々怖くなった。
その「恐怖感」も、今では庵の能力低下で薄れてはいるものの、それでも時々足下から立ち上ってきては、記憶の中にあるまだ幼い庵の「完全な無表情」を思い起こさせた。

まだ小学生だった頃、いつもはバカな事ばっかり言ってるくせして、進学塾も通信教育もしてないのにテストで満点ばかりだった庵を、皆が不思議がってその秘密を尋ねた。

庵は、至極当然と言わんばかりに「自分の見えている世界」をこんこんと説明した。
その時に初めて、庵は自分と他者との見え方が全く異なっている事を知ったと言っていた。

そして、それは口では説明が出来ない、又理解してもらえないという事も。

だから庵は、面白半分で問いかける同級生や上級生、先生にも商店街の人にも、何のてらいもなくその能力を見せた。

問われれば答える。答えられないと悔しいから、何でも覚える。覚え続ける。

そうやって浴びるように本を「見て」、テレビを「見て」、雑誌の紙面を、まるで指先でさばくような高速スピードで「閲覧」して、覚えていった。

庵が、自身の記憶に問いかける姿を人に見せ、その一種異様な様に周囲が奇異な視線を向けるようになるまで、それはしばらく続いた。
焦点のおぼつかない、虚ろな目。硬直したままの表情。動くのは口元と双眸の奥で揺れる、引き絞られた瞳孔だけ。

何でも答える、血の通ったロボット。

商店街のクイズ大会からテレビ出演へとスカウトされ、テレビでますます「天才」と持ち上げられて、庵は止めどなく覚え続け、機械じみた無表情が進んで…。
庵の両親が息子を好奇の視線に晒す事へ危機感を抱き、テレビ出演を止めさせた後、庵の周りに残っていたのは僕と数人の友達だけだった。
他大勢の同級生たちや大人達は、庵を「宇宙人」のように、遠くから眺めては囁きあうのが聞こえた。

「薄気味悪い化け物みたいだ」と。

自分と同じく、庵をごく普通の同級生と捉えていた当時の数少ない友人たちも、高校・大学とで別れてしまい、今ではほとんど音沙汰もない。
晶も度々、中学高校と入学し直す毎に遠巻きから同級生に「何であんな変人と付き合うのか」と尋ねられたものだったが、自分の複雑な生い立ちを気にせず、むしろ進んで自分を友人として受け入れてくれた庵の存在にどれだけ助けられたか分からない。お偉い政治家先生の次男坊なんて、なるもんじゃないなとつくづくその度に思った。

でも、だからこそ。
常人離れした記憶力と引き替えに、それを使う度に、庵は何かしら感情が削られているのではないかと、高校の頃、本当に心配した時期さえあった。
ただ、いつも終わった瞬間には顔元へ表情が戻ってくる。その屈託無い表情を見て、晶は安堵する。

…クイズとか勉強とか、勝負事でいがみあうのではなくて、純粋に能力開発を進めて欲しいなとも、実は未だに思っている。
また高校の時みたいに、他人との勝負ばかりで神経を磨り減らして、いつか疲弊しきってしまわないかと心配だから。
…そんな風に、他人事ばっかり気にしてるから、自分はいつまで経っても腐れ縁を切れないんじゃないかと、つくづく思いもする。
まあ、面と向かっては言わないけど、一番の友達だから放っておけないだけなんだけど…。

晶のそんな心配をよそに、第三試合を告げる脳天気なナレーションが二つ並びの筐体画面から同時に聞こえた。

【続く】












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