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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

花見と言えば。
*

【十二時過ぎ:大学町商店街ショッピングモール中央・噴水広場付近】

手際よく部屋の片付けを済ませると、外に買い出しへ。
昼飯はバーガーのセットメニューで簡単に済ませたが、ここは夏彦が出資。
恩義でも何でも、もらいっぱなしというのが許せない性分故である。
その後は予定通り商店街で買い出しを行い、あっという間に夏彦の両手は紙袋と食材満載のエコバッグで満杯になった。

「…しっかし、大荷物ですな」
「あらそう?だって十人前よ、しかも茜ちゃんの話だったら庵君って相当な食いしん坊だって」
「あー…あれなら、そう気にせんでも良かったのに」
ありゃあちょっと常軌を逸している、とは言わず、夏彦はそのまま別の話題へとスライドさせる。

「あのショートヘアの茜坂…と言いましたか。彼女とはいつからのお付き合いで?」
「以前、お話したクイズ好きのお友達が彼女ですよ。そういえば、夏彦さんとも茜ちゃんとも個別ではよくクイズの話してたのに、三人で顔あわせしてお茶した事なかったわね」
「ああ!あれがあの…いつだったか、会う機会があったのに俺の都合が悪くて…申し訳ない。それに出不精なもんで」
「いいんですよ、むしろいつも同じ場所に居るから探しやすいですし☆」
「痛み入ります」
以前から、麻美がクイズや知識を語るのが好きなのは時折交わす談笑で知っていた。
彼女とは、クイズの面から見ると共通の悩み「クイズサークルが作りたい!」という願いを持つ同士だった事が今回の事で互いに知れて(いや、麻美は知っていて自分にはそれとなく隠していたようにも思うが…それはまあいい)夏彦は今回の両大学クイズサークル立ち上げに妙な因縁を感じずにはおれなかった。
麻美もそれは同じようで「これから長く良いお付き合いになればいいわね」と素直に喜んでくれているようだ。
やっぱり、共通の趣味を持つ誰かが側にいてくれるのはいいな。
しみじみと、夏彦は幸運続きの現状が嬉しく思えた。

「じゃあ、これで重箱作りましょうね。後寄りたい所はあります?」
「ええと、じゃあまんじゅうを買いに」
「お饅頭?」
「はい。お花見に饅頭は必須ですから!」


【一時前:和菓子専門店「餡庵」(あんあん)大学町筋店】

アーサー大前の坂を少し奥へと下って、分かれた小さな路地の一角。
閑静な住宅の立ち並ぶ緩やかな坂道のふもとに、その小さな和菓子屋はあった。
時代を感じさせる古びた木造建築。
毎日朝一番に磨きぬかれるガラスの自動ドア以外は、創業以来の樫材が柱にも表札にも使われ、黒々とした艶を放っている。
下町の小さな和菓子屋は今年で三代目を数え、数年前から始めた小さな喫茶室は近所の住民の憩いの場となっていた。

「…じゃあ、よろしくお願いします」
ぺこりぺこりと、敦は見送りに店先まで出てきた店員に何度も頭を下げる。
と、相手も「いやいいですよ」と困惑気味に頭を掻いて苦笑いを浮かべた。
「…んじゃ、また店長と相談してこちらから連絡いたしますので」
「はい、有難うございます!」
もう一回、反射的に深々と百二十度のお辞儀をしたところで、「敦か?」と背後から聞き慣れた声が聞こえた。

「…あれ、安藤先ぱ…」
振り向いて、敦は思わず絶句していた。

見知らぬ知的で清楚な美女が、ヒゲ先輩とごく自然に並んでいる。
それだけで、敦的には今日一番のビッグバンであったらしい。一瞬、頭が真っ白になったようで、目を見開いたままキョトンとしている。

「ん?どうした敦、お前も饅頭か」
「え?あ、いや、僕は面接で…」
スーツとまではいかないまでも、ワイシャツにグレーのスラックスと、リクルーターのような敦を見て、夏彦の傍らに立っていた麻美はふふふ、と微笑んでいる。

「こ、この方は一体…」
しどろもどろに夏彦へ問いかけながら、敦は麻美に微笑まれたような気がして、耳まで真っ赤になってしまう。
失礼とは思いながらも、いつも薬品臭漂う研究室に籠もりっきりの夏彦にどうしてこんな美人の知り合いがいるのか…と思ってしまった。

「私?妹よ」
「えええええ!!!先輩の!!?」
糸より細い目を思いっきり丸くして驚く敦に、思わず「義理だ!」と夏彦は叫ぶ。
「兄貴の嫁さんの妹なんだよ。で、今日の花見にも来るぞ。金曜に言っただろう?アン女には同じ趣味の知り合いがいるって。で、これからお重を作ってくださるってんで、買い物に付き合ってる」
「で、今は夏彦さんの買い物に付き合って、お饅頭買いに来たところなのよ。私は朝宮麻美よ。よろしくね」
「あ、阿南、敦です…よ、よろしくお願いします…」
この人が先日夏彦の言っていた「頭の上がらない相手」だったのか…と敦は思いながら、同時に別の考えも頭によぎる。

「あ、あの先輩」
「なんだ?」
「あ、あのあの、もしかして、ご兄弟揃ってお付きあ…」
「ねーよ(笑)十人中、十人がそう聞くが、無い。そんな事してみろよ、兄貴に絶交されるっての!…ああ、今日は俺が饅頭くらいおごってやるから。お前は昨日言った通り、ゴザだけ頼むぞ。たんまり買っていくから、しっかり食べろよ!」

兄貴はともかく俺の無精ヒゲ面じゃあなあ、と苦笑いでぼやく夏彦に、なんとなく納得がいかない敦であった。

【続く】












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