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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

【宴席編その3】

宴席編最終です。

「米芋戦争」
「ところでアイドルはどうした」
「最終兵器開眼」

の三本立てでお送りいたします。
(今回ちょっと長めです。ご了承下さいませ|;ω`))
*

晶「杏奈さんこっちのくず餅どうですか」
大輔「喉乾いてないか?」

静かに殺気だった男に挟まれ、流石に杏奈も紙コップを手にしたまま困惑の相を浮かべる。

杏奈「あの~…」

茜「はいそこまで」
散れ散れと言わんばかりに大手を振って晶と大輔を威嚇すると、杏奈の横へ割って入り豪快に座り込む。

茜「お前等杏奈に群がりすぎ。そして鬱陶しい。ここを合コンと勘違いすんなっつうの」
晶「ぐっ…」
胡座のまま、一升瓶片手に立てた親指を首元で横一文字に掻き切る仕草を見せる茜に、男二人は絶句し言い返せない。

茜「そしてそこのタマネギ。お前は酒のチョイスすら分かってない」
大輔「なっ!!!」
茜「神聖な花見の酒は大吟醸一択に決まってるだろ常識的に考えてっ!!」
大輔「うるせえな俺がなん飲もうと勝手だろうが!それに俺の名前はネギじゃねえ!」
茜「ん?じゃあはなわ
大輔「もっと悪いわ!!」
茜「うっせえ!そんならてめえなんか「ちくわ」で充分だよ!最近流行りの焼酎がナンだ!安っぽい発泡酒がなんだってんだ!日本のトラディッショナルな酒と言えば日本酒!日本酒だろ!」
大輔「かーっ、これだから頭の固いのは嫌いなんだよ…日本酒なんて水だろ?水!お上品な味しか知らん奴に芋焼酎の良さは分からん!」

茜「あーあ、これだから九州の奴と酒飲みたくないんだよ!特に鹿児島人!すぐに酒つったら芋芋うっせえし!!」
大輔「んだよケンカ売ってんのかコラ!芋焼酎の美味さと味わいが分からない奴に言われたくないわ!…ちんくしゃのチヂレマイマイが、秋田美人とか笑わせるなよ!今日は都市伝説の肩すかしばっかだったけど、ホントに秋田美人なんて都市伝説ったい」
茜「なんだとこのー!これでも、ボクは地元じゃ評判の天然美白もち肌だって有名なんだからな!(今は土方のバイトで日焼けしてるけど)しっかし、福島のばっちゃが言ってた通り、薩摩の男は声とカラ威張りが大きいだけでろくなもんじゃねえな!」
大輔「うーわー超嘘くさーい…ってオイコラァ!今なんつったか!

「ちょっ、ちょっと怖い、怖い事になってきた…」
のどか「あーあ、お二人とも顔真っ赤だし…絶対飲み過ぎてる…」
麻美「茜ちゃん、緊張してたのかしら…ちょっと、呑むピッチが早いなとは思ってたけど。さて、どうしましょ

茜「とりあえず、酒は何でもコメだ!コメ!」
大輔「いや芋だ!芋!」

「コメ!」「芋!」
「コメ!」「芋!」
「コメ!」「芋!」
「コメコメ!」「芋芋芋!」

「こ、米米倶楽部…」
『黙れコラア!!』

「ひっ」

夏彦「何の言い合いだ…」
「あ、あの…」

茜「あ」大輔「そうだ」
二人「あんたに決めてもらおう!!」
茜と大輔、目の据わった二人にびしり、と指差され、「え?俺?」と夏彦は困惑する。

茜「ヒゲのオッサンなら、酒の味も分かりそうな面構えしてるし」
大輔「リーダーに査定してもらえば白黒はっきりつくだろう?ささ、ぐいっと」
「あの…すみません、こっちにお水下さい喉が…」

ずっと藍子の話し相手をさせられていた敦が何事か主張するものの、全員の視線と意識は夏彦へと向けられたままである。
彼の前に用意された二つの紙コップ。粛々と注がれる、大吟醸辛口と芋焼酎。
夏彦は、左右の神妙な後輩達を見渡し、頭上の桜を見上げ、また紙コップの澄んだ液体に視線を落とし。

実は、今夏彦は心中非常に焦っていた。
ちらり、と双方の持つ酒瓶を確認。
大吟醸、アルコール度数20%。芋焼酎、アルコール度数25%。

大吟醸+芋焼酎×チャンポン= …吐く。もとい、迫り来る急性アル中の陰。
下戸なのに、味なんか分かるはずねえだろうがよおおおお!!!!
…と叫びたい。説教してやりたい…。

が!…それをやっては今後の威厳と沽券に関わるし…。
今までだって、口にしても年に一・二度、新年になる度にザルの兄貴におちょこ一杯飲まされて死にかけてた俺だ。

どうする俺。
どうなっちまうか俺。
ちょっと気の利いたとんちも、思いつきやしねえし!
やばい、背中に嫌な汗かいてやがる。

麻美「あ、あそこの木陰に岸部一徳」

全員「ええ!!」「どこですか!!」

全員の視線が瞬間的に逸れたその時、麻美の手先が素早く動いた。
あ、と夏彦が言う前に、紙コップの大吟醸を自分の水が入ったコップにすり替える。

夏彦「麻美さん…」
麻美「コレで大丈夫」

ごめんね、と茜を横目に肩をすくめて見せる麻美に、夏彦もすんません、と小さな声で苦笑いを浮かべた。

「岸部一徳見損ねた!」「見たら幸運になるらしいよ」「マジかよ!?」

麻美「と、この隙に芋焼酎いただきっ!」
見事な手さばきで、夏彦の前に据えられた紙コップをひったくると、麻美は豪快にぐいっと一気に飲み干す。

麻美「………あーっ!今日一杯目!なあんだ、結構美味しいよこれ茜ちゃん」
茜「マジかよ!お前、結構味には辛いからな…おいチクワ、ちょっと酒瓶貸せよ」
大輔「大輔だ!…ふん、最初からそうやって殊勝にしてればいいのによ」
茜「なんだとこのぉ!」

「ああもうダメだ…喉ガラガラで大きい声出ない…すみません、どなたかちょっと飲むもの…」
藍子「アイアイも喉乾いた~そっちばっかり盛り上がってずるいよ~!…あ、麻美先輩ちょこっとお水下さい~」
藍子のマシンガントークに尽きっきりで、ろくに食事もできずヘロヘロになっていた敦の目の前に、藍子が麻美の隣にあった紙カップを差し出す。

藍子「はいどうぞ~」
「ああ、有り難うございます…」
一口飲もうとした瞬間、勘の良い彼は芳香で既に気付いていただろう。それが何の液体であったか。
しかし、喉の渇きと精神的疲労で気が緩んでいたのだろうか。
麻美が慌てて制止する間もなく、一連の動作を止めることができず、それを一気に飲み干してしまった。

敦「!!・・・・・」

敦の穏やかだった表情がみるみるうちに赤くなり、青くなり、そしてまた真っ赤になったのを見て、その場に居た彼以外の全員が戦慄した。

夏彦「おい、敦…」
庵「まさか」
晶「藍子ちゃん、それお酒じゃ…」
藍子「え?ええええ?!アイアイ知らない!水だと思ったんだよぉ!!」

ごくごくごふごきゅ、と液体を飲み干しきった音が聞こえた。
紙コップを口から放し、手に握ったまま、真っ赤に染まった敦の顔面は無表情のまま弛緩しきって「くぱぁ」と奇っ怪な言葉を発した。

夏彦「おい敦…」
「すんばらしい」
夏彦「へ?」
敦「味、立ち上るほどよい芳香、爽やかなキレ、口全体にふわっと広がるスッキリとした旨味…これはウチの蔵でも滅多にできない!すんばらすぃ!すんばらすぃぃぃぃ!!ここの杜氏は良い仕事してます!!金賞狙える一品に違いありましぇん!!」
いつにないハイテンションな敦に、全員やや引き気味に顔をしかめる。

茜「…く、蔵?」
庵「ああそうか、言ってなかったっけ…敦の新潟の実家は日本酒の蔵元なんだって。ショート先輩のウチと同じかな?」
茜「新潟…という事は、有名な越後杜氏の家なのか?」
晶「確か、そんなような事言ってたよ」
庵「あいつ言わないけど、後でググってみたらかなり大きな蔵元だったぞ敦ん家」
夏彦「とりあえず、あいつ未成年なんだし水を大量に飲ませた方が…」

大輔「(…何だかよくわからんが、こいつイケル口か…?)おう、それならこれも一杯いっとくか?」(カップ→注ぐ→芋焼酎)
庵「だ、大輔さんそれは火に油どころじゃない!ガソリンになりそうな予感gあああああいっちゃったあああ!!!」

敦、手渡された芋焼酎を一気に飲み干す。
桜の木の下、腰に手を当ててもの凄い勢いで芋焼酎を飲み砕く、蔵元跡取り糸目、敦十九歳(未成年)。

「かぱぁ」と緩みきった口元から、またもや奇っ怪なキーの高い声が放たれる。

「あーじーわーいふかあああああいいいい!おっいすぃぃぃぃいいいいい!!!」
大輔「よーしやっぱり!お前は酒が分かる口っぽいな!」
庵「いえそれ以前に」
晶「敦君が挙動不審な動きをしている点に気付いてあげてください…」

敦は 口を半開きにしたまま タコのように揺れている!

敦「勿論です!!蔵を継ぐ身れすからね!おめれたいひは、利き酒解禁デー!のんでのんで味をおぼえないろ!!」
大輔「おお、すげーなおい!で、さっきの水みたいな日本酒とこれと、どっちが美味かったよ?」
敦「はあ?」
大輔「へ?」

ついさっきまで異様なほど上機嫌だった敦の顔もとが、みるみるうちに不機嫌な凶相へと様変わりし、大輔を射殺さんばかりに上から睨め付ける。

敦「水みたいな日本酒、水みたいな日本酒、日本酒は水みたいとな!!となっ!!………これだから!!これだから!!最近ちょっとばかし流行ってきた焼酎飲んだだけで分かったような気がしれっから困るんれすよお!!…ちょっとそこへお座んなさいな。正座で」
大輔「へ?ちょっ、俺これでも結構酒は…」

敦「お行儀ぃ!!!」
説明しよう!敦は体内アルコール度数が一定割合を越えると、先祖代々受け継がれてきた血と共に雑学アイへと開眼し、周囲の全くなっちゃいない呑んべえを所構わず説教し続ける「日本酒の蘊蓄超人」と化すのだ!!

大輔「ひぃぃぃぃぃ!!!」
あまりの目で殺させそうな迫力に酔いが一気に醒めた大輔は、ささっと身なりを正すと言われるがままに背筋に板を入れたかのような直角姿勢で正座し敦と向かい合わせに着座する。

敦「あと貴女も!!」
茜「へ?何でボクが…」
敦「合ったり前でしょうがあああ!!これだけの大吟醸を口にしながら、なして芋焼酎如きと旨味の違いとを明確に答えられねえですか!!情けねえ!!情けなくって麹菌に顔突っ込んで恥じらいたいくらいっだああ!!」
大輔「ちょ、お前今焼酎如きって…」
敦「ウチの清酒業を脅かす焼酎も発泡酒も第三の酒類も、全部ウチの敵!!!
お行儀!!

敦の開眼!目から放たれる殺気ビームが大輔と茜を射殺す!!
大輔「ヒッ!」
茜「お、お前の家の蔵、随分苦労してるっぽいな…(ウチもだけど…)」

敦「さっきからお二人の口ぶりは、味のことばっか!でなけりゃご当地の揚げ足取りばっか!なさけねえ!なんとなさけねえ!いいれすかぁー日本酒の歴史はとおっっても奥が深くてですねえー(中略)という訳でしてえ(中略)で、松尾大社はご存じれすかあーあすこはですねえー(中略)他にもちゅーしゅーなら宮崎にお酒の神様が(中略)ですから日本酒としょーちゅーはっ土地の関係でも棲み分けがあー(中略)やはり周囲の環境に左右されがちで(中略)で、そこでびぃーるさんの登場な訳ですろ(大きく略)後なんれすかねご当地ワイン?あれはー…」

顔が真っ赤な糸目先生の止めどない日本酒(&日本のご当地酒)講義に、茜と大輔のみならず他のメンバーもすっかり酔いと眠気が覚めたご様子で。

大輔「………もう、いいすか…」
「…………だ、だな…そろそろ仕舞いに、すっかな…」
糸目ビームの真ん前で睨まれたままの二人、既にアルコールが抜けきったハニワのような白い顔には冷や汗と疲労困憊の色が浮かんでいる。
夏彦「…だな。おい敦、そのくらいで、後は次回に回せ」
敦「ええええええええええええええええ…これからがいいんだってのに…」
夏彦「次回までに、この二人にレポートでも書いて貰えよ。な?それでお開きにしようや」
「なっ!?」と二人が夏彦の提案に突っ込みを入れる前に、敦は先生気分を認めてもらえたのがお気に召したようである。レポート、の響きにニンマリ笑顔で「じゃあそれでいっかな~」と、やっと普段の聖人君子のような穏和なにっこり笑顔を浮かべ…そして、思いっきり受け身もとることなく、背面へと倒れこんだ。

庵「あ、敦ぃいいいいい!!」
晶「あーあダメだ。目が回ってるっぽい。ほーら敦、迎え酒~」
そう言いつつ、晶の手には2リットルのミネラルウォーターが。
敦「おっさっけ!おっさっけ!あきらせんぴゃいありがとーございますーあきらせんぴゃいのおさけ~あひゃはやあはは」
もはや、水と酒の区別もついていない。ごっふごっふミネラルウォーターを飲みこむ敦に、晶は夏彦へ「一晩ウチで見てましょうか?」と囁く。
夏彦は渋い面で、「いや、俺が見てるよ」と苦笑混じりに答えた。

ミネラルウォーターをひとしきり飲み干した後、再び後方へばったり倒れそうになった敦を庵が支えると、「あーいおりせんぴゃいだー」と、敦は真っ赤な顔に屈託無い童子のような笑みを浮かべた。
敦「せんぴゃ~い、いおりせんぴゃ~い、ぼくはあなたみたいになりたいんれすよ~…ぼくは~…ぼくは~…スースー」
んがっ、と短いいびきが聞こえたのを聞き取って、周囲からは安堵の空気が漂う。

庵「ホイホイ、よく寝て、明日は一日安静にしてろよ?な?全くもう…んじゃ、ヒゲ先輩どうします?」
夏彦「よし、一本締めで終わりにすっかな。はい皆さんお手を拝借」

よー パンっ。

夏彦「お疲れ!!」
茜「おう、今後ともよろしくな!…で、後そこの酔っぱらいも頼む。悪いけど。ホントに悪いけど」
夏彦「分かってるさ。さ、片付けて帰ろうや。お前等!ゴミはちゃんと分別して捨てろよ!プラ、ペット、紙全部な!…文句言わずにやる!…」

【春編終編に続く】












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