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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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※前日二日分の記事は畳ませていただきました。ご迷惑おかけしますが、ご了承下さい。
リハビリがてら、小説復帰中。

六月中旬の空の下。
*
「今年ってぜってえ空梅雨だよなぁ」
まだ六月中旬だというのに、今日は今年3度目の夏日を記録したと、さっきヤフーのトップにも出ていた。
前日は雨だったせいもあり、高温高湿度炎天下の帰り道は地獄だ。学生寮へと続く緩い坂道も、アスファルトから立ち上る湿気が酷い。スニーカーの中はむくんで重く、ポロシャツはおろかインナーまでじっとりと汗ばんでて気持ち悪いことこの上ない。

シャワー浴びたいなぁ、と僕がぼやくと、傍らの親友は風呂がいいやと滝のような汗を流してぼやき返す。
あー…と、力無くだらりと舌を出して、そんで風呂上がりにアイス食いてぇよぉーと、庵はのろのろ歩きながら死にそうな声で呻く。

「ボクもかき氷食べたいですぅ」
僕と庵の背後から三歩分遅れて、敦もか細い声で庵に同意を示す。
ここ二・三日の登下校で摂取する水分の大半を搾り取られているらしく、敦のげんなり具合は部内でも飛び抜けている。新潟に比べたら、確かに地獄の釜ゆで状態だろうなあ、とぼんやりと熱された頭で思う。
新潟は行ったことないから、あくまで想像の範疇だけど。

「何で東京ってこんなあっついんですか~…」
「知らねーよ敦、つーか俺の地元だってこんなもんだぞ?お前の地元が涼しげってだけなんじゃねーの?」
「庵先輩のとこだって海近いじゃないですかー」
「ばーか、俺んちは内陸部だっつの。しかも無駄に晴れてばっかだし。超蒸し風呂。新潟いいなあ新潟~行きてー超行きてー」
「それでも夏はやっぱり暑いですよ…あーどこでもいいからここより涼しいとこに行きたいですー…」
二人ともさっきから呪文のように暑い暑いばっかりだ。目が泳いでるし。まあ、かくいう僕も溶けそうだ。

「今日おそうめんでもゆがそうかな…めんどいし…」
「あーじゃあ俺アイス持ってってやっからそうめん食べさせて晶くん…揖保の糸?かも川そうめん?」
「殴るよ庵君。どうせ徳用ソーダアイス一本なのは目に見えてるんだよ。ハーゲンダッツかレディーボーデンなら考えてあげてもいいけど」
「鬼!鬼だ!つめてーつめてーよ」
「僕はどうしよう…イタリアンでも作ろうかな~…」
「イタリアン?…へえ凄いね敦、イタリア料理作れるんだ。何?リゾット?」

「え?」と何故か敦が素っ頓狂な声を出したため、振り返ると敦はキョトンとした面持ちで「イタリアン知らないですか?」と首を傾げた。

…その後。
庵と一緒に新潟ご当地フード「イタリアン」を敦にごちそうになった翌日。
何も特別な事もないままに、前日とは対照的な梅雨空の薄暗い雨の朝に、僕、安住晶はめでたく二十歳の誕生日を迎えた。

*
講義も無く、庵も個人用の特別講義で出かけている日は、完全なフリータイムになる。
特別講義の日は大抵、庵は夜遅くなるため外食している事がほとんどだから、食事の心配も無い。となると、ご飯もカップ麺で済ませてみたり。
友達は多いけど、正直なところ庵以外で気のおけない親友、というのがいない僕は、出かける用件がないと途端に出不精になる。

いや、少し違うか。

お誘いが来れば、ああいいよと二言返事で遊びに行くし、そうでなければジムに行っても良し、ゲーセンで気晴らししても良しだ。
社交性はある方だと思ってるし、庵のように空気が読めないなんて事もない、と、思ってはいる。
ただ、自分から誘う、という事はあまりしない。というよりも、恋人(もしくはそうなってほしい女性)以外を電話で誘ったりというのが面倒なだけ。
それでも、無駄に友人知人は多いから娯楽に事欠くことが無いのが助かる。愛想を振るのが上手なのは、きっと父の遺伝子なのだろう。

そこまで思い至り、ごろ寝したままベッドに顔を突っ伏す。
誕生日の前後は、いつもメランコリックになる。憂鬱だ。

誕生日。
それは僕にとって毎年僕の立場や将来を想起させる日であった。特別な祝いの日でなく、己の立ち位置を自覚させられる日。

気怠さに瞼を閉じると、五歳の誕生日の事を思い出す。
外から微かに雨粒がベランダのサッシを叩く音がした。まだ午前中。僕は朝ご飯も食べないままに、二度寝に入っていた。

*
呼び鈴のチャイムで目を覚ますと、既に昼は過ぎているようだった。
枕元の時計を覗き込む。午後三時半。
間食のタイミングも逃し、お腹もすかないからどうしようかななんて思いつつ、寝癖がついたままの髪を掻き上げ、ドアを指二本分だけチェーン付きで開くと、…庵が立っていた。隙間からむあっ、とクーラーで除湿をかけっぱなしにしていた室内にむせるような熱風が入り込む。薄暗いし雨音も聞こえるから外は完全な梅雨空なのだろうが、酷い暑苦しさに顔をしかめると庵はションボリ顔で僕を見上げた。

「…どうしたの?講義は」
「すんだ」
へえ珍しい、と僕が呟くと庵は無言でこっくり頷く。

「で、どしたの」
「はらへりー」
「………」
庵はドアの隙間に茶碗を覗かせる。用件はそれかい。

「悪いけど、僕今日なんにもしてないから。冷蔵庫も空っぽ。残念、また来週~」
「はらへりー」
「外食すればいいじゃない?」
「はらへりーはらへりー」
「…だから。呪文唱えても何もないの!」
「はらへりーはらへりーはらへりー…」
「だ・か・ら!!ゲーセンで無駄遣いするからそうなるんだって僕何回言ったよ!
…あーもう呪文唱えるなっ、僕までお腹がすくっ!!この歌うポリゴンめ、ドアを閉めさせろっ!!」
涙目で腹減りを訴える庵を強制退去させようと、ドアの前で四苦八苦する事数分。
夕飯には呼んであげるからと説得を繰り返しどうにか隣の自室に退散させると、僕はハアアー…と深く深く溜息を吐き出し、買い出しのためにそれなりな格好に着替えて身だしなみを整え、傘を片手に雨の街へと出かけた。
憂鬱な長雨。むんと鼻を突く湿り気も気鬱にさせる。もう少し、二週間後くらいの夏空に生まれたかったな、となんとなく思った。

【続く】












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