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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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空白の一ヶ月事件:概要2

逆転高校生。
*

十月初旬であったにも関わらず、その日は真夏のような蒸し暑い快晴であった。
岡山県岡山市・県立相仁第九高校体育館。
急遽組まれた長机二対とテレビ二台、説明用のホワイトボード、そして各報道機関の記者が座る多数の席。
その日集まった報道陣は百人以上だったという。

半ばゲリラ的な放送だったため、当日の朝に職員室へ電話があり、「体育館一日お借りします」との庵の電話を皮切りにテレビ局からも正式な申し入れが入り、既に登校していた生徒を帰宅させる間も取れず、仕方なく取材が終わるまで名ばかりの授業をしながら教員の監視下に置き、教室で待機と相成った。

晶も数日前から体調が良くなり授業に復帰していたため、教室の中で身を硬くして状況を見守っていた。
教師側も生徒の不祥事を早く終わらせて来年の受験人数に影響を与えたくなかったようで、庵の味方、というよりは早く庵を言いくるめてもらって退学なりなんなりの処分を下して追い出したかったようである。そのため、渋々承諾し場を提供し、悪く書かれぬよう校長や学年主任がへこへことマスコミや朽崎に媚びる表情が後日随分と槍玉に挙げられていた。

自分以外全部敵、という超アウェーの状態。庵は、たった一人でこれを戦い抜いた。

向かいあわせとなったデスク、左側は朽崎アナ、右側は制服姿の安佐庵。
朽崎アナが証拠として提出していたカンニング映像と、庵が持ち込んだ検証用の無編集撮影ビデオを元に互いの意見を戦わせる事になった。

朽崎アナは主張を変えず、
「局側と結託しカンニングしたのは相仁第九のみ、後は勝手に自分たちの目をごまかしてやっていた」との見解を。

それに対し庵は
「カンニングを行ったのは全部で十一校、全て局側が手回ししたキャラ的に面白い個性的なチームにばかり便宜を図っていた。それは自分たちトリプルAの三連覇を阻むためにおこなった事。そうすれば視聴率も上がり、たとえ自分たちが優勝しても視聴者の目を釘付けに出来ると考えたから。自分たちは正々堂々と戦い、一切カンニングはしなかった」と主張。
両者の主張は平行線を辿り、お互いにテープを元に反証を行う事に。

そこから、事態は一変する。
庵は、朽崎の映像テープの編集部分を次々と指摘し、不自然な編集やカットシーンを的確に指摘し続けた。
「…待った!
そこは二十分後のパネルクイズ後の映像を無理矢理くっつけてるんです。
右上部を見てください。ここに不自然な大きい陰が見えるでしょう?
これは、一番最初に現れた開局五十周年記念マスコットの「デンパ君」のトサカ部分が陰として映りこんでいるからです。その証拠に、三十三秒後に再びこっちへ映像を振った際には陰も形もありません。しかも、陰の角度から立っていて可笑しくない位置には、八台の回答席が既に据えられた後です。
あの巨体はちっとやそっとでは動けません。
この数十秒でどうやってどかしたのでしょう?
そもそも、あの回答席のどこに立てたというのでしょうか?
…これは番組冒頭の映像と、後半の映像をつなぎ合わせたために起こった矛盾なのです!」

「…異議有り!
朽崎アナが手にしている問題カードが微かに二重に映っているんです!
上は橙、下は多分濃いオレンジです。これは動画サイトでも再三取り上げられている映像ですが、ここではいつも問題視されていません。
何故でしょう?
それは、この時の問題で、最初に局側と結託しカンニングを行った疑惑の持たれている○○県の○○高が正解しているからです。彼らは問題文のある一定部分でボタンを押す、もしくはスタッフ側で押したように見せかけ、彼らは事前に知っていた答えを言うよう指示されていたからです。もし、違う高校が押して正解しても、問題が分岐して違う答えに流れて間違えたように見せかけるため、朽崎アナは二重重ねの問題文を持っていたのです。
もし、どちらに答えが言っても、手元に2種類の問題文を置いて正確な問題を読み上げられるように、ね」

…終始こんな調子で、庵は次々と朽崎アナの掲げていた動画と主張の「ムジュン」を指摘しまくり、次第に周囲の空気すらも変えていった。
朽崎アナもまた反論するものの、ことごとく庵に的確に反証され、ぐうの音も出ないほどにやりこめられていった。
考えてみれば当たり前だ。
庵の飛び抜けた映像記憶さえあれば、証拠のテープ無しでも「何分何十秒何があった」などという疑問はすぐに「こうこうでこうだった」と答えが返ってくるだろう。ただ、これは視聴者やマスコミに対し、全部スッキリと納得してもらうために、彼が自ら仕掛けた大勝負だった。
信憑性の高い「とある人物」のお墨付き映像テープと、庵の正確無比な記憶力と分析力は、朽崎アナの主張を全て打ち砕き、昼前にはすっかり立場が逆転してしまっていた。

庵は昼食も取らず、ぶっ続けで朽崎アナを問いつめ、自分がのし上がるためにスタッフやスポンサーと結託し不正を行った事を認めるよう詰め寄った。
そのために、クイズに参加していた高校生を甘い言葉でヤラセに巻き込み、神聖な番組を汚した事を謝れと。
しかし、朽崎アナも食い下がり、最後まで譲らなかった。
お前のアキレス腱、天才でない証拠をこれから証言してもらうと、証人を呼び出したのだ。
庵も、視聴者も、その場にいた誰しもが、阿古屋か番組スタッフだろうと思っていた。が、それは意外な人物だった。

庵の父親だった。

庵が、どれだけ動揺したかは言うまでもないだろう。父親を見た瞬間、顔色は青ざめ、表情を失っていた。
彼は、いつも「父親を尊敬している」と常に人前で公言していたのだから。
スーツ姿の父親は、小さく一礼した後、庵と対峙し、阿古屋から受け取ったという庵のカンニングの証拠をマスコミに公表した。

皆さん聞いてください。家の息子は天才などではありません。
これを見てください。これは息子の友人が勇気を持って提示してくれた、動かぬ証拠です。
現に、息子は高校二年の秋、中間テストで散々な成績を持って帰りました。
ですが、それこそが真の姿なのです。
そのまま、己の愚かさを噛み締め恥ずかしくとも努力してくれていれば、こんな事態を招く事もなかったではと思うと…。
父親として、恥ずかしくてなりません。


…勿論、庵は反論した。
だが、頑として父親は聞き入れなかった。
父さん、どうしてこんな事をするんだ。どうして信じてくれないんだと泣き叫ぶ庵を、父親は殴り飛ばした。
床に叩きつけられ、呆然とする庵に向かって、父親はこう吐き捨てた。

お前は家の恥だ。
努力もせず、テレビに持ち上げられたくて、褒められたくてまだ嘘を重ねるのか。
いつからカンニングをしてテストで満点をもらっていた?
どうせ、小学生の頃からだろう?

俺の息子がこんなに頭が良いわけないんだ。

テレビではいつもクイズの答えを教えてもらっていたのだろう?
人が見ていないと思って、不正を正当化しようと人を貶めるなどもってのほかだ。
こんな出所の分からないテープの方が、よっぽど怪しいさ。
事実を認めた朽崎さんだけでなく、涙ながらにお前の不正を訴えてくれた阿古屋君までも、お前は卑怯者と罵るのか!

恥曝しめ。
お前のせいで、母さんや明日香がどれだけ苦しんだ事か。
自己中心的なわからずやめ。
お前など、俺の息子じゃない!!


一方的に罵られ呆然とする庵を、父親は無理矢理土下座させようとさえした。
庵はそれをはねつけ、泣きながら叫んだ。

…父さん。
俺が何でずっとクイズ番組に出てたか分からないの。
俺がどうして、こんな事までして無実の罪を払おうとしてるか分からないの?
…皆、お父さんのためだよ。
…俺、ずっと父さんに悪いなと思って生きてた。俺、父さんの夢だったプロ野球選手になれなかったから…野球の才能全然なかったから…。
…俺が小二の春に野球止めたいって泣いた時から、父さんずっと俺を無視してた。ずっと、居ないものみたいに扱って…。
…だから、俺ずっと得意な事で褒めてもらいたかった。俺が勉強頑張って良い学校にいったら、学歴をバカにする上司に何を言われたって、俺の息子は凄いんだぞって、自慢してもらえるかな、って…。
…でもダメなんだ。野球出来ないと、ダメなんだね。分かったよ父さん。
…だけど。俺は一度だって不正なんかしてない。するわけない。だって、あなたに一番迷惑かかるのが分かってるから…あなたがどれだけ不正を嫌ってるか、俺は知っているから…。
だから…だからテレビにも出た。目立てば、誰かが一緒になって褒めてくれたらと、父さんもそうかな、凄いなって言ってくれやしないかなって。
そんな浅はかな事を考えました…。
それでも、これだけ言っても、俺の言葉はあなたに聞こえませんか。
ずっとずっと言いたかった。愛して欲しかった。俺を見てくださいと。

それでも、俺の言う事じゃなくて、俺の友人だという誰かの言う事をあなたは信じるんですね。

…それなら、もういいです。
俺、あなたの視界に入らないよう、あなたのいない場所に行くよう、努力しますから…。


肩を落とし、大粒の涙をこぼす庵に、周囲のマスコミはおろか、父親ですら言葉を失った。
それが、何よりも強い真実だと、その場にいた全員が、テレビを通じて見ていた視聴者全てが察していた。

沈黙を破ったのは、晶だった。ひそかに教室を抜け出し、部室に忍び込んで携帯用の液晶テレビから全てを見ていた晶は、庵の父親の愚行に耐えかねて体育館へ飛び込んできたのだった。晶は庵の父親を非情だと責めたてると、彼が持ち込んだカンニングの資料を一瞥するなり、爆笑した。

「これは庵のものじゃない!庵の筆跡をまねてるけど、見れば分かるよ!…こんな薄い濃さのシャーペン、庵は絶対に使わないからね!」

晶の指摘によって、阿古屋海人の提出したカンニングの証拠は即座に偽物と判じられた。
文字の書き間違いや計算間違い、カンペならあってはならない間違いが次々露見したためである。
何より、庵が普段使用している「2B」もしくは「B」の濃さ以下の非常に筆圧の薄い筆跡は、本人の筆跡を真似て阿古屋と彼の取り巻きが作った偽物だったと後日正式に判明した。庵は、視認しやすい濃さのものを好み、何でも印字がはっきりしているものを好んだため、付き合いの長い晶には一目で分かったのである。

その直後、アカデミッククイズロゴのボディーペイントを施したトレーラー二台とバスが高校のグラウンドに到着し、事件は佳境を迎える。
バスからはアカデミッククイズのOB会のメンバーが数十人と、謹慎中の身であった福盛アナが降りてきた。
彼らは、事前に庵から連絡を受け応援に駆けつけた有志のメンバーだったのだ。
解放されたトレーラーの荷台に急いで設置された回答席に立つと、彼らは全国各地で事態を見守る後輩たちの苦悩を代弁した。

「本当の事を言えば、内申書に響くぞ」
「本当の事を言えば、今後お前達の高校は予選会から外す。後輩に恨まれてもいいのか」と、脅され泣き寝入りした後輩達=庵と同じ大会に出た高校生たちの声をマイク大音量で大声クイズよろしく訴えると、「朽崎出てこーい!」とシュプレヒコールを上げた。

校舎からは、福盛アナ見たさに顔を出す生徒、写メを撮ろうとする生徒、騒ぎに驚いて飛び出す生徒で事態収拾は混乱を極めた。

「晶、一緒に行こう。最後のクイズが待ってる」
「ええっ、僕も?」
「勿論!俺の相棒はお前だけだよ。さ、行くぞ!」
「…分かった!内申書がなんだ、くそくらえだ!行こう!一緒に行くよ!」

庵は声に答えるようにして、晶と共にグラウンドへと出て行った。
後ろで立ち尽くす父親には、一度も振り向く事無く。
やむなく出て行った朽崎アナを待っていたのは、午前中の不正疑惑に関する十五問のマルバツクイズだった。
正解は全部マル。問題は全て、庵の主張を元にしたもの。
つまり、正解するという事はイコール不正を認めるという事だった。
とうとう進退窮まり、朽崎は全ての問題を答えずして、生放送のカメラが回る中、回答席に並んで立つ庵と晶、そして周囲を囲むOB達に泣きながら頭を下げた。俺がやった、やりました、と。

勝敗の決した瞬間だった。
庵は親友と仲間、そして恩人である福盛アナに祝福され、歓喜の中で拳を天に突き上げた。
こうして、アカデミッククイズ最大の危機は回避され、翌年は「足腰立たなくなるまで面倒見てやる」との宣言と共に福盛アナが総合司会に復帰、番組は例年と同じくクリーンで堅実な造りへと戻されたのであった。

朽崎アナウンサー以下、不正やカンニングに関わったスタッフには全員処分が下り、直接関わったとされたスポンサー企業三社でも制裁人事がなされた。
阿古屋海人は一転、「裏切り者」の非難を浴び、学内での処分はなかったものの高校卒業まで庵や晶と一切言葉を交わす事はなかったという。

庵はその直後に過労で倒れ、快復後入院先の病院から東京の専門施設に転院し、厳戒態勢での複数回にわたる知能テストの結果、正式にIQ200以上の天才児であると国際機関からお墨付きをもらうに至った。
彼への疑惑は完全に解け、これにて事態も収束するように思われた。

しかし。
ボロい造りのカンニングペーパー一つ見抜けなかった庵の父親に、今度は世間の厳しい視線が向けられた。
幼馴染みの親友よりも、一緒に暮らして同じ食事を食べているはずの自分の息子の事をまるで知らない無理解な父親。
庵の家族に視聴者やマスコミの疑念が集まり、歪んだ形で注目を浴びるのに、さしたる時間はかからなかった。

「…お前は、お前だけはやっぱり俺の味方だった。ありがとな」

生放送終了直後に、庵が傍らで見せた泣き笑いが晶は未だに忘れられない。
あの時見た笑顔を最後に、庵はずっと心から笑っていないように思えたからだ。

【続く】












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