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空白の一ヶ月事件:概要3

事実と真実についての友人の見解。
*

「…あの時の報道って、どんくらい本当だったんだ?」
時計は二十五時。既に深夜。ぼんやりと窓を行き過ぎる防音壁沿いの外灯を横目に、高速道をひた走るタイヤの静かな音だけが暗い車内に響き渡る。
少しも眠くならない。
晶も大輔も、中央中程の席にいてまんじりともせず橙色の車内灯を見上げる。

「…僕から見ても、庵の家族は庵に対して酷い事をしているようには見えませんでした。僕の母も庵のお母さんと親しくしてますから、ある程度内情は漏れ伝わってたんですが、別に大した事なんかなかったように思ってたんですが…」
「…だったら、庵の奴、すんなり家に帰ってもおかしくないんじゃ…」

大輔の疑問はもっともだった。
晶も答えに窮し、俯いて握った拳に視線を落とす。

高校三年生の秋。
「空白の一ヶ月事件」が収束し、庵が正式に天才だと公の機関に認められてから、庵の周囲にはまたしばらくマスコミが張り付くようになっていた。
まるで、今まで書き連ねた罵詈雑言を帳消しにするために、庵の美点をつぶさに探そうとしているようで、その意地汚さに強い不快感を覚えた。
あれだけ酷い事しておいて、何を今更。気持ちは、晶も庵と同じだった。
庵はマスコミを無視し続け、本当に必要な時以外口を開かなくなった。
あまりの強情さに、マスコミ各社も本人から何も情報が出ないと知るや、今度は家族に矛先が向かった。

庵の父親叩き。
真面目一辺倒で子煩悩であると思われていた男の非情な一面。
マスコミは周囲の人物、例えば庵の姉・明日香の元彼氏や近所の住人から聞いたという愚にも付かぬような噂話を一斉に書き立てた。

庵は、父親からずっと疎んじられて育った。
野球一筋でスポーツ推薦で大学野球に進んだ父親は、ドラフト最有力と目されながらも練習過多で大怪我をし再起不能になり、失意のまま就職した。
そのためプロ野球に強い未練を残し、やっと産まれた息子に夢を託すも庵には才能が無く、息子の意志で止めてしまった事で、以来彼を「根性無し」と切り捨て見捨てたと。
酷いものでは、庵は高校二年生の夏、クイズ大会で優勝し帰ってきた際に賞金をどう使おうと無邪気に両親や姉に問いかけ、父親に殴られたという。
「どうせイカサマを使ったのだろう」と怒鳴られて…。
そのため、精神的なスランプに陥り一時期「ライブラリ」が機能しなくなったのだと。
母親と姉も父親に迎合し、彼を家庭内で無視し続け、ここ一年は食事も出さず洗濯も別々、そのため彼は毎日近所のスーパーでバナナやリンゴを買い足し食事の代わりにして味気ない夕飯を済ませていると、どこからそんな情報集めたのかと目を疑いたくなるような記事さえあった。

あの穏和なおばさんがそんな酷い事するはずがない。
果物は大食いな庵の事だ、夜食に買っていったものだろう。
おじさんだって、きっと朽崎と阿古屋の口車に乗せられただけ。
心ない三文記事を読む度に自分の事のように憤りを覚えた。

庵は、そんなマスコミの「悲劇のヒーロー風持ち上げ」にやんわりと否定の言葉を繰り返した。

俺の父はいたって普通です。
あの場では興奮してあんな物言いになりましたが、どこの家だって俺ぐらいになると父親とぶつかったりするもんでしょ?

そう言って、少し困った様子で肩をすくめて見せたり。
身を案じる晶に対しても、その姿勢は崩さなかった。
「あんなの全部デマだから、全然心配ねえよ」
そう笑い飛ばしながらも、庵は次第に口数が少なくなり、そのうち学校を度々休むようになって…。

そして、その年の冬。
庵の父親が突然亡くなった。

庵の目の前で、彼を庇って居眠り運転のトラックに跳ねられ、壁面のブロック塀に挟まれての圧死。

即死だったのが幸いだっただろうと、人づてに聞いた。
親族だけの葬儀の後、しばらく庵は体調を崩し学校も休みがちになり、僕も受験を控えていて彼に回すほどの気持ちの余裕も無くなり、あまり話すこともなく、互いに気にかけながらもすれ違う日々が過ぎた。
母づてに、庵の具合が随分悪いという事だけは聞いていた。
学校では元気に振る舞っていたけど、家に帰ると、あの大食いな庵がろくに食事もとらず、部屋に引き籠もっているという。
「自分の事に集中しろよ」と、力無く笑う庵の言葉を、余裕のなさから真に受けて、愚痴の一つも聞かず。
どれだけ思い詰めていたのか、どれだけ苦しんでいたのだろうか。その頃の僕に、それを思う余裕があれば良かったのに。
思い返す度に、晶はそう強く思った。そんなだから、自分の事ばかり考えていたから、本命の大学受験に失敗したんだと後悔ばかりした。

次に面と向かって話をしたのは、僕が最初の大学受験にしくじった直後の事。
思い出深い東京のお台場で、冬の寒空の下、二人肩を並べてオイオイ泣いた。
でも、それはまた、別の話。

【続く】












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