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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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昼下がりの青田を抜けて。
*

新潟県のとある田舎、時刻は正午を少し回ったくらい。
車両二台分の幅広なアスファルトの農道。
その脇にある舗道を二人乗りの自転車が走っていく。
左右には青々と茂る夏の水田が広がる。
ここは地元でも有数の米所であり、右も左も青田と緑深い山裾が広がる素朴な田舎道。
だが、彼らの目の前で天に向かってすくすく育つ青田は、食用は食用でも、酒造り用の米。
酒造米の田が広がっているのだ。

「今年も順調に行けば豊作だってね」
「そうらしいねぇ」

後部座席に座った少年の言葉に、漕ぎ役の青年が嬉しそうに答える。
彼らは確かに喜んでいるのだ。
何故なら、ここら辺一帯、目に見える水田は皆彼の父親の土地なのだから。
先祖代々大切にしてきた農地。
今は親戚筋の契約農家が秋に向けて大事な米を育ててくれている。

米の出来高も含め、いつかは自分が蔵の全てを切り盛りしなくちゃいけないのか。
そんな重い将来と、覚悟が青年の脳裏をよぎる。
弟の手前、顔には出さずにいるが、上京していた時でさえ実家の事を忘れた事はなかった。

前カゴにはナイロン袋に満載した夏野菜がこぼれそうなほどに詰め込まれている。
家の買い物帰りに、二人は自分の家に関わる水田を見に立ち寄ったのであった。

「田植え、今年は手伝いしたんだって?」
「うん、したよ兄ちゃん。兄ちゃんの分も、僕がやっておいたからね」
「ありがとね」

ふふん、と嬉しそうに、後ろの少年が鼻を鳴らし青年の背中にぺったりとくっつく。
青年はただ、振り向かず静かに微笑むだけだ。
前はベージュのコットントートを肩から提げた半袖シャツの若い青年。後部座席はTシャツ姿・虫取り網装備の小学生。
二人とも、兄弟なのが見て取れる。
端から見ても一瞥して分かるくらいに、青年と少年はそっくりな面立ちをしていたからだ。

丸顔の人懐っこい顔立ちに細い目。
栗色がかった猫っ毛も、日焼け不足な透き通る白くて柔らかそうな肌も、育ちの良さそうな雰囲気も。

「ねぇ兄ちゃん~」
「ん~」
「いつまで休みぃ~?」
「大学始まるまでだよ。だから、八月中はこっちに居るよ」
「じゃあ、じゃあそれまで一緒だねぇ~」
「そうだよぉ~」
「虫取り一緒に行く~?」
「行けるねぇ。お父さんと、姉さんの手伝いがなかったらね」
「行けるよぉ。それなら大丈夫だよぉ!あとねあとね、花火も見に行こうね~」
「そうだね、行きたいね~」
「あとね~…それからね~…」
こーら、と青年がやんわりと背中の少年をたしなめる。

「もう、ネムってば遊ぶ事ばっかりじゃないか。ちゃんと勉強もお手伝いもしなくちゃ駄目だよ。お父さんに怒られるよ~」
「してるよぅ!兄ちゃんいたら大丈夫だよ!…あ、兄ちゃんあそこのお店でアイス食べたい!買って買って」
「駄目だよ。我慢。お家にビバオールも桃太郎アイスもあるんだから。アコちゃん聞いたらまた贔屓だって言ってベソかくよ?」
「あう~兄ちゃんのケチ!けちけちのケチんぼ!ケチケチケチケチ!敦兄ちゃんのけちんぼ~も~嫌~い!」
「あーもう服の裾そんなに引っ張らないの!こらっ、伸びるから止めなさい!だめってば!…ああもうっ、じゃあ後で一個だけ買ってあげるから。アコちゃんには内緒だよ?」
「うんっ!!やったあ!!!」
少年はにかっ、と歯を見せて心底嬉しそうに笑った。
「ほら、じっとしててね。ちゃんと漕げないから…」

「お~~~~いあつし~~~~……」
遠く、背後から呼ぶ野太い声に、自転車を止めて振り向く。
見れば、彼らにとっては見慣れた白いワゴン車が。
近距離宅配用の白ワゴン、側面と背面には屋号の木札そのままの筆跡を写した、達筆な「阿南酒造」の印字が施された商用車。

「ああお父さん、どうしたんですか?」
「おう敦、なんぞお前に東京からお客さん来てるぞぉ」
「へっ?」

日本酒が傷まないよう、遮光用黒シートで遮られている後部座席の窓がゆっくりと開き、中からひょっこりどこかでみた顔が。

「オイッス敦」

顔を視認した瞬間、敦の顔が文字通りポカーンとなった。

「い、庵先輩!!!?」

「こんちわー…」
「晶先輩も?!」
「俺もいるぞ」
「うわあ、大輔さんまでえ!!えっ、ちょ、新潟で何かイベントありましたっけ…?!」

嬉しいよりも驚くよりも、3人の来訪が晴天の霹靂すぎたらしい。
混乱しきりで口開きっぱなしな敦をよそに、庵は後部座席から顔を乗り出すと運転席の敦父に「そんじゃ、こっから敦と一緒に行きますんで」と、手荷物を掴んでそそくさと路肩へと飛び降りる。
「あ、待って」「お前一人だと危ないだろうが!」と立て続けに他の二人も慌てて車外に降りると、車内から「そっかあ、んじゃこっちも支度しといてやるでな~」と呑気な挨拶を残して、敦父は車を発進させ走り去ってしまった。

「あーーーっ!えっちょっとお父さんーーー!?」
「心配するな敦よぉ、お前の分の笹団子は取っておいてやるからな~」

鼻歌のようなおっとりとした余韻を残し、父の社用車が去っていった後には、取り残された困惑する息子その1(帰省中の長男)、息子その2(小学生三年生次男)。
そして、既に遠くなった社用車を手を振ってお見送りする息子その1の友人三人。

「おっじさ~ん、ありがと~ね~」
笑顔で両手を振る庵の背中に「あのー」とおそるおそる、敦が声をかける。
「庵先輩…ですよね?藪から棒に、一体どうしたんですか?それに晶先輩に大輔さん、凄い顔色悪いし…」

「それは…」
「俺等に聞くな。庵に聞いてくれ…」
もはや疲労と気疲れでぐったりしている二人に対し、庵はどこ吹く風の元気満点である。

「おお敦、ほぼ一週間ぶり~!それなんだけどさ、その前に、自転車の後ろに乗ってるお前にくりそつなちびっ子は誰?」
「え?…ああ、僕の弟の合歓(ねむ)です。今、姉さんに言付かった買い物の帰りだったんですけど…ネム、兄さんのお友達にご挨拶して」

「・・・・・」

全員の視線が集まる中、突然の事態にあっけにとられたままの敦の弟=ネム少年は、自転車から飛び降りると兄の背中に回り込んで隠れてしまった。

「あらら?」
「緊張してるのか。そりゃそうだよな」
「す、すみません…普段はきちんと挨拶出来る子なんですけど…」
「気にするなって!それに、今日お前のウチに泊めてもらう事になっちゃったし~」
「あーそうなんですか、ウチにお泊まr…ってほええええ!?」
同行者二人がクマくっきりの渋い顔で睨む中、庵はにこーっ、満面の笑みを浮かべると、「実はさあ」と今回のトンでもな旅の目的を道すがら敦に語って聞かせるのであった。

【現在地:新潟某所の田園地帯・糸目(敦)と合流】

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2008.09.02 23:26  | # [ 編集 ]












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