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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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彼のささやかな秘密。
*

新潟中部の山深い里。
山々の内に広がる田園地帯を抜け、里山の広々とした緩やかな昇り坂をしばらく歩く。
田舎ですよねえ、と敦は言うが、歩道も家並みものどかではあるがゴミゴミした感じはなく、全てが緩やかな流れで動いているのが分かる。

道の横には小さな川のせせらぎ。
整備された川筋に目を落とせば、煌めく小さな川魚の背。
狭い川縁に網を握った子供。流れは鏡の如く清い。

豊かな実りと、清流に培われた伝統が残る町。
しばらく雑談を交わしながら歩く事十五分、小高い山の中腹辺り、白壁囲いの屋敷が山裾に広がるのが見えた。

「僕の家は、百年以上続く酒蔵です。ずっと、小さい頃から酒精とむせ返るような蒸し米の匂いを嗅いで育ちました」
甘くて優しい匂いです、と弟を乗せた自転車を押しながら、敦は慈しむように呟いた。
「今は呑切りを済ませて出荷待ちの貯蔵酒を詰めてるくらいなんで、静かなものですけど…そろそろ見えてくると思います」

おお、と誰ともなく声を上げた。
白壁の向こうに見える、立派な瓦葺きの邸宅。
その更に奥に立つのは、酒蔵であるのだろう。
古びた白漆喰の土蔵と藍色の屋根瓦を葺いた二棟の工場。
その上に突き抜ける程に高い煙突が何本もせせり立っていた。
「どうぞ」と言われるままに門をくぐると、先程の土蔵が目の前に。
壁には何度か漆喰を補修した跡が残る。

「ここ数年、何度か地震も来ましたけど、ウチは大した被害も出さなくて済みました。有難い事です」
土蔵の脇を抜けると、そこは広々とした庭。
歩道の脇には、手入れの行き届いたマメツゲの生け垣にまだ碧いモミジの枝葉が美しい。
一際目を引く大きな合歓木の下をくぐると、玄関先の軒下には茶色かかった杉葉の丸玉がぶらさがっている。

「おお、杉玉!本当にぶら下がってるんだこれ」
気付くが早いか、庵は尻ポケットからケータイを抜くとパシャリと一枚。

「敦、他のとこも撮って良い?蔵の前とか外の門構えとか、ちょっとばかしぐるりと」
「あ、いいですよ先輩」
「あっ、こら庵一人でうろちょろしないの!」
言うが早いか、庵は敦の言葉を待ちきれずに外へとケータイを握りしめて駆け出していき、晶が慌ててそれを追う。
…庵の行動力とずうずうしさに少しばかりあっけに取られながらも、大輔も物珍しげに杉玉を見上げる。
「酒林だな。造り酒屋の目印なんだっけ?…敦、あいつ勝手に撮ってるけど、これ撮影してもいいのか?しきたりとかは?」
「いえ、いいですよ大輔さん。観光や酒蔵見学で来られる人は、皆さん撮影して行かれますし」
「あ、じゃあ俺も撮って良いか?…つか、その…」
珍しく言い淀む大輔に、敦は首を傾げる。
「どうしたんですか?大輔さん」
「あー…どうしよ。笑うなよ」
「だから何ですか?」

実はさ、と大輔はバツが悪そうにそっぽを向いたままぼそりと呟く。
「俺、ブロガーなんだよ」

「ブロガー…って、ブロガーってなんですか先輩?」
敦の、素で分からぬ反応に大輔も「はあ?」と言う代わりに困惑の相を浮かべる。

「えーとあの…お前淡泊な反応だな。逆に助かるけど…ま、平たく言えば、俺ブログ書いてるの。しかも結構マメに」
「へー意外だな…って、ちょっと待って下さいよ?って事は」
眉をひそめる晶に大輔は「何考えたか分かったぞ」と、先手を打って言葉を継ぐ。

「心配するなよ。お前や庵たちの名前出して訪問客のカウント稼ごうとかケツ毛ほども考えてねえから。逆にウザいのが沸くだけだろうし、そこいらはオブラートに書くつもりでいるけど。で、ここの酒蔵の名前とか書いても大丈夫か?写真付きで。どっちかっつうとそっちのが気になってたんだが」
「あ、そうなんですか。まあ、大輔さんなら信用出来ますし」
ほっと胸をなで下ろすと、「宣伝していただけるなら、幾らでも」とにっこり微笑む。
「そっか、良かった。さっきヒッチハイク待ちの時に先輩から電話あってさ、新潟行ってるっつったら本当かどうか疑われてよ。何か良い証拠でも簡単にアップしとけばいいかと思ってな」
「成る程、先程言われてた大会辞退のお話ですか?随分言い合いになってたそうですけど…

ところで大輔さん、何て名前でブログしてるんですか?
僕らの事も書くんでしょ?
内容の検閲したいし~、ちょこっと教えてほしいなー…」

なっ、バカ!それ聞かれたくねえから今まで言わなかったに決まってるだろ!?…ああ、もう少し言っておくとな、前にお前等の事もツマミ程度には少し書いてる。が、名前も固有名詞も全然出してないから安心しやがれ。いいな、探すなよ!?絶対探すなよ!?…ああもう、こっ恥ずかしい…
何故かブログをやってるというだけで耳の先まで真っ赤にして照れる大輔に、「ウブだなあ」と思うと同時に、このどこか時代のズレた硬派な男の可愛げを感じざるを得ない敦であった。

【現在地:阿南酒造到着・庵は晶に写メし過ぎだと説教され中】












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