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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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糸目兄さん、事件です。
*
「ネムっ!」
突然背後から怒鳴られ、ネムは敷かれたままの布団の上で「うわあ」と尻餅をついた。
…その手は、庵のカバンの中に突っ込まれた状態である。
慌ててジッパーを閉じて振り向き、へへへと苦笑いを浮かべるも、時既に遅し。
火を見るよりも明らかに…敦の眼光が鋭く変容しているのがその場の誰にも一目瞭然であった。

「…何してるのかな?ネム」
「しょ、証拠を探そうと…」
「何の」
「え?それは…そのぅ…ああそうだ!こいつらウチの乗っ取りを」
「黙らっしゃい!!お行儀ぃ」

「ひぃい!」
ネムだけでなく、反射的に晶と大輔の唇からも悲鳴がこぼれる。
全身にみなぎるこのオーラ。背後からでも分かる、満ち満ちた憤怒の気配。
きっと、殺意の波動がリアルであるなら、絶対こんな感じだと大輔はふと思う。

…開眼した。

制止した方がいいのかも知れないが、正面に回りたくない。弟君の涙目な顔を見れば、どんなに恐ろしい形相か即座に把握できる。

射殺される。確実に。

「ネム」
「ううう…」
「これは立派な犯罪だよ。いたずらじゃあ済まないよ。分かるね?」
「うう…」
「うう、じゃありません。唸ってないで、何かおっしゃい!」
「にーちゃんが悪いんだ!」
「?!」
「にーちゃんが、にーちゃんが悪いんだ!にーちゃんがこいつらに騙されて借金なんか作るから!」

一瞬、奥座敷の時間が止まった。
敦は、何の事やら分からずぽかーんと口を開ける。

「…へ?」
「はあ?」
「借金って?晶お前、敦に金貸してるの?」
「いや?庵にも食費請求したことないし、貸し借りなんか全然」

「ちょっ、ちょっとネム!何を勘違いして…」
「嘘だっ!何でそいつらかばうんだよ!昨日だってツンツン頭の奴に散々脅されてたのに!」

「あー」
「あの写メか」
晶と大輔は、何となく事態を把握したようだが、敦はきょとんとしている。
…数秒のタイムラグの後、敦は何の事か気付くと一気に憤怒から焦りで表情を白黒させた。

「それは勘違いだって、何度言ったら分かるの!」
「嘘だっ!それを今から暴いてやろうとしてたのに!もういい、このケータイ水にぽちゃんしてやる!」
ネムの手がカバンから引き抜かれる。
その手には、見慣れぬシルバーステンのケータイが…。

「それっ…って、あらら?庵がいつも持ってるのと違う?けど庵のカバンからって事はニ台目かな?」
「って、あれココモの最新モデルか!しかも白ロムでもレアな限定100台モデル…弁償出来ないぞ!」
「それ本当ですか?!」
「(庵、またそーいうのを衝動買いして!)」
「ふっふっふ…こいつに入ってる(と思う)写真データさえ消えれば、お前らのゆすりたかり計画もパーだ!ザマミロ!」
「だから、それは勘違いだっつの!」
「知らなーい。と言ってる間に脇の金魚鉢にぽちゃん」
「うわあああらめええええ!」
兄含む、年長者三人の悲鳴も空しく、ケータイは金魚鉢の中へとシュートインされ、小さな水飛沫と大きな悲鳴が部屋中にこだましたその時。

「残念、そいつは防水ケータイだ」

特に動じもせず、半開きだった障子を開けて、庵と茜が敦達の背後から入ってきた。

「嘘、嘘だ!きっとデータを壊されて動揺してるんだろ!ばーかばーか、お前らの企みはこの僕が…」
「えーとそれ、これのことかな?」
つかつかと、立ち尽くす三人を後目に庵は金魚鉢から即座にケータイを取り出しハンカチをあてがうと、ネムが漁っていたカバンの中身を確認しつつ、パッ、と普段使っているブルーメタリックのケータイをするりと開いてみせる。
「うわわ!」と敦が制止する間もなく、ネムは庵の手にあるケータイ画面を凝視し「何これ」と目を丸くする。

「にーちゃん、未成年なのに一升瓶…」
「水と間違えて飲んじゃったんだよ。で、ご開眼。こんなん、脅しに使えるわけないじゃん。ネタとしてつっつくのには最高だけど」
「庵先輩!!」
「分かったよ。消しておく」
カバンのジッパーを閉めると、ぴ、と親指一つでデータを消去する。

「なんだー事件じゃないのかー…」
がっくりするネムに「まあね」と苦笑いを浮かべる。

「でも、兄ちゃん良い笑顔だったんだぜ。飲む前まで。…普段はもっと良い笑顔」
「へ?」
「ほれこんなん。こっちのケータイの画像見てみ」

水分をぬぐい去ると、臆しもせずにネムへ無造作にシルバーのケータイを渡す。
茜も含めた四人は呆然としたまま、食い入るようにケータイの小さな画面を見つめるネムと傍に座る庵の動向を見守っていた。
と、我に帰った敦の眉が、再び吊り上がる。

「ネム…お兄さんたちに何か言う事ないの?」
「……へっ?えっえっ、それはその、にーちゃんだってお酒…」
「お行儀!」
「まあそう怒るなって敦」
ヒィ、と身をすくめるネムに、庵は荷物のまとめをしながら助け舟を出す。

「でも先輩…」
「いきなり押し掛けて来た俺らが悪いし。本当は色々調べたかったんだけど…まあいいや。弟君も、返すもの返したら、それでいいんじゃないか?な?」
ちらりと横目で視線を投げかけられ、ネムは更に身をすくめて頭を垂れる。
「…な?お前だろ。大輔さんの持ち物持ってるの」
「!」
「さっき、廊下でお前が持ってるの、見たぞ。ポーチ。大輔さんが落としてたのを拾ったのかと思ってたら、何か騒いでるし」
「うっ…見られてたのか」
「…本当なのか?ネム!」
前後左右、年長者五人の視線を受けて、進退極まったネムは口元をもごもごさせ、ううっ、と唸る。

「うっ、それはぁ…それは、にーちゃんが悪いんだよ!だってだって」
「いい加減にしなさいっ!!」

ぴしゃり。
乾いた音が、室内に響き渡る。
引っ叩かれた衝撃で、ネムの手からケータイがこぼれおちる。

「…ぶった」
「ぶちましたよ」
にこりともせず、掌をかざしたまま敦は厳しい視線で弟を見据える。

「ひどい!ひどいやにーちゃん!とーちゃんにだってぶたれた事なかったのにいい!うわあああん!」
泣きながら駆け出していった弟を目線で追う事もせず、敦はふーっと溜め息をついた後、即座に神妙な面持ちで「ごめんなさいっ」と三人に向かって土下座した。

「いやそんな、かしこまるなって。無くなったもんが戻ればいいから」
「そうだよ敦。元々僕らが来てなかったら、あんなに」
「…いえ。いいんです。謝らせて下さい。それに…」
「それに?どした敦」

「皆さんが来てようと来られまいと、あの子はああですから…」

「???」
首を傾げる三人に、敦は顔を上げて肩を落とす。

「…いつもそうなんです。思い通りにならないと、ああいういたずらをする。物を隠すとか、妙な思い込みで人を困らせたり。そうなると、父が叱り飛ばさないと絶対言う事を聞かなくなる…僕が叱ったんじゃダメみたいで、すぐにつけあがる。それに」
「それに?」
「夏休みや冬休みみたいな、長い休みに入ったら一度は旅行や遊びに出かける計画を立てるものでしょう?でも、僕はそれが出来ない。ネムは一緒に遊ぶ友達がいないから、僕がいないとすぐに不満を爆発させてしまう。いつだったか、修学旅行に行って帰ったらそのストレスで全身発疹だらけになってて。それ以来、僕怖くてなかなか外出出来なくて…」
「…まじか」
「本当です。
…学校では非常に大人しくて良い子なんだそうですけど、その分家に帰ると暴君みたくなって暴れます。外で言えない分を家の中で、って事なんでしょうけど、結構たまったもんじゃありません。
アコちゃんとは今いち馬が合わないみたいだし、父さんも姉さんも忙しくて目が行き届かないし、僕が東京に行けたのも、夏休みや冬休みは帰ってくるという前提があってのことみたいです。
だから、弟にしてみれば東京で出来た知り合いなんか、嫌でたまらないのでしょうけど」

「ブラコンか」
「ブラコンだな」
「何だろう、僕はもの凄く親近感を感じる…」
あきれ顔な面々の中で、晶だけが敦の兄弟関係に己と近しい感覚を得ていた。

「…はあ、こんな事、皆さんに愚痴ったって仕方ないんですけどね…ちょっと連れ戻しに行ってきます」
「ほっといたらどうだよ?敦」
唐突な庵の言葉に、敦は一瞬「ほえ?」と呆けた声を出してしまう。

「弟君のワガママどうにかしたいんだろ?だったら、放っておくのもいいかもしんないよ」
「で、でも…大輔さんのものも気になりますし…」
「悪気がないなら返すだろ。お前もいっそのこと、弟君がいない隙に旅支度でも調えてみるとか」
「ちょっ、庵先輩!」
「あっはは、冗談だよ。でもさ、理屈よりもスパルタで叩き直すのも手かもよ敦。お前自身のためにもさ」
「僕自身…?」
「人生って百年もあるけど、考えてみれば全部一発勝負だろ?だったら、うだうだ言ってる間に好きな事決めて生きる方が勝ちだと思うな俺は」
「…?」
「なんてな。好きな事してれば、後悔したってそう辛くはないさ。周りに気を遣ってるつもりでも自分に嘘吐いてるとさ、周りだって要らない気を遣ってたりするかもしんないぞ」
「…先輩」
妙に静まりかえった室内で、庵が鞄のジッパーを閉める音だけが静かに響いた。

「さっきオヤジさんが、こぼしてたぞ。…息子のしたいことをずっと聞かないまま育てたけど、それで良かったのかって。自分の人生に疑問を抱いたりしないのかなって。素直すぎて、反抗しない分余計に心配だって」
「えっ」
「裏返して見るなら、ホントに素直に心から親や弟の思いに従ってるなら、勘の良さそうなオヤジさんが余計な勘ぐりすると思えない。どうだ敦?お前は本当にすんなり実家の跡取りになりたいか?弟のために家に引き籠もってたいか?これ、俺が戻ってくるまでの宿題な」

「ええっ、宿題って…」

「これから北海道行く。ショート先輩の貞操を狙う、アラマキジャケ酒造の提携先へちょっとちょっかい出しにな」
「北海道?!」と晶と敦が同時に大声を上げる。

「つー訳で、新潟空港発千歳空港行き最終便に乗ろうと思ったら手続きも含めてもう出ないと間に合わないんだ。外にタクシー待たせてるから、急ぐわ」
「ええっ?!庵、飛行機乗るの?!苦手なはずじゃ…」
「あ、うん…頑張って三度目の飛行機。こればっかりは場数だしね(; ´ω`)いずれ慣らさないといけないしさ…。ってな訳で晶、お土産は期待するなよ。もう乗るだけで一杯一杯だから」
よっと荷物を担いで、庵はそそくさと部屋の外へと出て行く。

「ちょ…ちょっと待って下さいよ先輩!そんな、言いたい事だけ言ってさっぱり僕には…!」
「ああそうだ、課題もういっこ。…茜さん、お前が矢面に立って守ってやれ。
たまには、総大将ってどんだけきついか味わってみろって。明日あたり、嵐が来そうだからな」
「嵐?」
「そうだ。確実に、ここへ、遠からず嵐が来る。情報は茜さんが知ってるだろうから、後は優秀なハリセン参謀と九州男児なお兄さんに相談しなって。お前にそう言うのも、お前を見込んでの事だ。いいな?…今日から二日だ。二日間、嵐に耐え抜け。そうすりゃ、俺がどうにかしてやるさ」
唐突な庵の話に返事も出来ずまごつく敦の鼻先を、庵はちょん、と弾くと、不敵な笑みを残してそのまま部屋から出ていった。

「あっ、待って!」
慌てて後を追った茜の背中に、呆然としていた敦も晶の「僕らも行こう」と肩を揺すられ、我を取り戻すと後を追う。

玄関先まで急いで駆けつけると、丁度タクシーが出て行く所であった。
片足を後部座席に突っ込んだ状態の庵に、茜が何事か語りかけている。

「…それじゃあ、よろしくな」
「もち。任せとけって」
「すまない。こんなやばい役、出来たら代わりたいくらいだけど、僕そっちは全然だからさ」
「分かってるよ。こういうのは経験者がいいだろうし」
「…有り難う。正直、見直したぜ。お前、かっこいいぞ」
「あんがとさん。一仕事済ませて帰ってきたら、惚れちゃうかもよ?」
「バカ言え。のどかに怒られるっつの」
「サーセンw …じゃ、また後で!」

イタズラっぽく笑う庵を、屈託無く笑い返す茜。
自分と同じくらいしか茜とは面識も接触も無いはずなのに、この妙に打ち解けた感じはなんだろう。

トリノコサレテル。
アノワノナカニ、ハイリタイ。
イヤ、…オシノケタイ。オシノケテソレカラソレカラハ…

慌ただしく猛スピードで出て行ったタクシーを見送る彼女に、何故か敦はざわざわと胸が騒ぐのを感じた。

何だこの感覚。
何だこの感情は。

ずっと平穏で静かで、波穏やかに過ごしていければいいと思ってたのに。
ざわつく。心がざわつく。落ち着かない…。

気持ち悪い。
僕の側で、今何が起こってるんだ?

先程の、津波のような庵の言葉を反芻しながら、敦の頭の中は「?」で充満しかかっていた。

【21日午後・庵は北海道へ・敦はメダパニ状態・晶困惑・大輔の荷物依然として不明・乙女な横顔のショート先輩】












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