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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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座敷で会議。
*

翌朝の朝食。

「眠い…」
「眠いですねえ…」
「何だ何だお前ら、クーラーかけて寝てたのに不眠って贅沢じゃないのか?」

昨日の晩ご飯で大量に作りすぎたという根野菜の煮物を口に無造作に詰め込みつつ、ぼやく晶に大輔が渋面を作る。
理由が分かっていないのだろうかと晶は全力でつっこみたかったが、超常現象な話題を爽やかな朝の食卓に出しづらく、そのまま自重するに至っている。

敦はと言えば、にんじんを口に入れては「はあ」、レンコンを口に入れては「はあ」と溜息ばかり吐いている。

「敦、美味しくないか?煮物」
「え?いえそんな事無いですよ!とっても美味しいです」
「そうか?ならいいけどさ」

いぶかしげな茜に、敦はへへへと作り笑いを浮かべてごまかす。

確かに、煮物は美味しい。
普段大雑把な味付けしかしない姉なのに、今日は珍しくきちんと味が染みている。
カツオのダシも効いていて、美味しいのだが、喉をすんなり通らないというだけで。

「なあ、安住。安佐の奴から何か連絡あったか?」
「いえ茜さん、何も。ケータイは持って行ってるはずなんですけどね」
「そうか…順調に進んでればな…最悪、ボクが責任を取る心づもりではあるけど、心配でさ…」

何だろう。茜さんの、庵先輩の名前を口に出すときの、躊躇うような仕草は。
何だろう、僕、昨日からそんな事ばっかり気にしてる…。

「ごちそうさまです。…あのさ。後で座敷に行くから、待っててくれないか。大事な話があるんだ」
「あ、はい…分かりました」
茜の言葉もどこか上の空で、敦はころりと箸に挟んでいた小芋を皿に転がして、浅い溜息を吐いた。

*

洗面台を後にし、身支度を済ませる。

「ああ、あっちゃん」
姉さんに呼び止められる。

今日、庵先輩がこの家に来てると聞きつけて、農作業に戻っていた蔵人が何人か家へ遊びに来たいと言ってるという。
すれ違いになっちゃいましたね、と言いながら、僕は困り顔の姉をよそに別の方へ、別の方へと意識が飛んでいくのが分かった。

早く座敷に行きたい。
立ち止まっているのすら、もどかしい。

この思いの名前は、なんなのだろう。
それを考える時間すら、今は惜しい。

「…でね、姉さんどうしようかと思って…」
「はあ」
「はあじゃないでしょ、全くもう。昨日から、あっちゃん様子がおかしいわよ」
「はあ…すみません」
「まあいいわ。これ持っていって。お茶とお菓子。お隣のおばあちゃんが張り切っちゃって、笹団子めいっぱい作って持ってきてくれたのよ。なのに行き違いになったって、すっごい悔しがってて」

お盆を受け取りぞんざいに抱えながら、姉の声が遠ざかる。
煩わしい。
何をそんなどうでもいいことを、姉はぺちゃくちゃと言っているのか。

…ああもう。僕はまた何て事を…。
思い煩うのはやめだ。こういう時はさっさと済ませてしまうに限る。
まだ何かいいたげだった姉を残し、敦は団子が山と積まれた盆とお茶碗入りの網籠を握り、そそくさと足を早めた。

*

「婚約ぅ!?」
どこぞのベスパ好きなイケメン探偵の如く、お茶をぶーっと吹き出しかけて、大輔はごっほごっほと咳き込んだ。

「バカ、勘違いすんなよ!…あくまで、今だけの話だ!!」

奥座敷に茜、敦の父・繁、敦、晶、そして大輔と三人が額を寄せ合って密談中だが、まず茜の開口一番がそれだったのだ。

婚約してくれねえか?

顔を真っ赤にして「今だけ」を強調する茜の必死な様子に、一同団子を口に詰め込みながらきょとんと目を丸くする。
ずず、と濃く点てた初摘み茶をすすり一息つくと、茜の隣で座布団に座る繁が「それが一番妥当かと思うてな」と口を開いた。

「昨日、茜さんのケータイに急な電話が入ってな。それで、庵くんとも相談してだな、こういう話に落ち着いた訳よ」
「で、何で婚約なんですか?」
首を傾げる三人に、茜がもじもじと「権太を諦めさせるためだ」と、若干訛りが入った口調でぼそぼそと喋る。

「…ゴン太?」
三人の脳裏に、「でき●かな」のふさふさなアシスタントが変換される。

「新巻酒造のボンボンだ。ボクの幼馴染みで、ずっとボクに付きまとってくる諦めの悪い奴さ」
「まさか、おとといの晩に言ってた結婚を迫ってきてる人?」
「そうだ安住。あいつ、ボクとことごとく趣味も思考も合わないのに、ボクがずっと好きなんだってさ。で、ボクを嫁にして、自慢して、朝から晩まで上げ膳据え膳で尽くしてもらうのを夢見てるバカのノータリンだよ!…ああもう、想像しただけでサブイボでてきた…」

「上げ膳」「据え膳なあ」
Q研三人の脳内に、茜の嫁入り姿が変換される…。

~妄想連想クイズ・想像してみましょう~

【ショート先輩・茜たんのラブ★ラブ上げ膳据え膳】

晶 → 装備:和装 

「お帰りなさいませ、あなたさま」四つ指揃えてお出迎え。
台所では、既に贅を尽くした夕食がお待ちかねだ。
「ささ、今日はどうなさいます?熱燗でもつけましょうか?今日は実家から最上級の淡麗辛口が届きましたのよ」
妻はにっこり微笑んでいる…。
着物の裾からちらりと覗く、鎖骨がほんのり朱に染まって見える…。

…晶の口元に、うっすら笑みが浮かぶ。
晶「悪くないけどなあ…」

大輔→ 装備:フリルのエプロン 

「おう!朝だぞ!とっとと起きてメシ食えよ!」
手にはフライパン、背中に背負子。
何故だろう、赤ん坊の顔がガキの頃の自分に見えるような…。
朝食を思い描く。目玉焼き。
ちょっと縁が焦げてはいるが、みごとなハート型のベーコンエッグ。
「た、たまたまハート型になっただけだ!ね、狙って作ったんじゃ、ないんだからなっ!」妻は頬を染めている…。


…大輔は、物足りなさを感じている。
大輔「うーん、色気が足りないか?」

敦 → 装備:白無垢 

彼女が、自分と正対し、正座し深々と頭を垂れる。
白粉をはたいた白い肌に、ほんのりと差した口紅の朱が艶っぽい。
その口元から、微かに震える声で彼女が自分に囁く。

「末永く、お慕い申し上げます」

敦「・・・・・」

「おいおい!お前等全員何いやらしい顔してんだよ!!ちゃんと人の話聞けっての!」
茜の怒鳴り声で、全員我に帰る。
気付けば、目の前で茜がやってられねえよと言いたげな脱力の相を浮かべていた。

「………。 ・・・はっ!す、すみません!」
敦は恍惚とも取れる忘我の域に達していたようだ。
他の二人よりも数秒遅れて我を取り戻す。

そうだ。
皆さん筋肉だのなんだのって言うけど、茜さん、充分過ぎるくらい美人じゃないか。
だから、だから僕がああいう風に思ってたって、変じゃない、よね…。

何故か自分に反芻するように言い聞かせる敦をよそに、話は進んでいく。

「…まあ、言っても中々伝わらないのは分かってるんだけどさ…権太の奴、ボクが小学生の頃からずっと毎年ボクに告ってきてはふられてるのに、ずっと諦めないでボクをつけ回してたんだ…。
中学の時も、ボクが好きだった先輩を告白直前でボコボコにしたり、ボクが好きだって言った本を熱心に読んで読書感想文持ってきたり…まあ、典型的な筋肉バカですっごい単純だったから、からかいやすくってさ、適度にシメてれば馬鹿な事もしなくなってたんだけど…」
「適度にシメてってオイオイ」
白けた表情で突っ込む大輔を茜はギッ、と睨み付ける。

「うるせえ薩摩揚げ野郎。
ともかくだな、ボクも色々あってグレテた時期にはあいつと結構つるんでそこいら中ブイブイ言わせたし、その時のツケかなとは思ってる。
だから、自分一人でどうにか出来るならそうしたかったけど、そうもいかなくて」
「ぶ、ブイブイ?」
「あー…ピンと来ないかな?
ちょっと、中坊の頃から高校の初めくらいまで走り屋紛いな事してたんだ。
もう足洗ったけど、今でもバイクいじりとツーリングは趣味でさ。
権太は、その頃ボクの舎弟にしてた。
馬鹿力なくせして、肝っ玉は小さい奴だったから」
「舎弟って、お前まさか奢らせてたりして、そのツケとか言うんじゃ…」
「バカ言うな!ヘッドはボクだったんだから、ボクが奢ってたに決まってるだろ?舎弟にパシリさせた覚えも無いしね」
「じゃあ、やっぱり実家の?」
「ああ。
…荒巻のクソオヤジ、良い事言ってボクの父さんに金貸して、後で高利子付きでとっとと金返せっていきなり怒鳴り込んできたんだ。
ウチの父さんも、荒巻は親戚筋だから大丈夫だと思って油断してたんだと思う。
ボクも寝耳に水だったし」
「返せない額なの?」
「そんな事はないはずだったんだ。…今月の大口の納品さえ、きちんと済めばの話だったけど」
「と、言うと?」
「先々月くらいから、いきなり大口の取引先から縁を切られるようなケースが相次いで、折角の生酒の捌き時にどこにも売りに出せなくなっちまって…夏は清酒が良く出るし、ウチは大手ホテルや旅館と取引してたから、そこから仕事がもらえないと借金以前に経営事態も厳しくなるんだ。で、あんまりにもいきなり無下にされるもんだからウチの若いのが調べたら、あそこの社長がごり押ししてやがったんだ」
「なんでまた!」

「…ボクを荒巻の嫁にして、男女鹿酒造を乗っ取るため」

「なんだって!?」
男三人が口を揃えて声を上げたのを見て、「な、困っただろ?」と繁が傍らで眉をひそめる。

「…あそこの社長は、前からいけすかないと思ってたが…まあやり方が汚いわ。
人づてに聞いた話じゃ、自社製品じゃあ安酒のイメージが払拭出来ないってんで四苦八苦してるとさ。何でも、最近地元のちんぴらとも付き合いが出来たようだし、あんまりお上品とは言えんわな。高級志向にのせて、お嬢ちゃんの家のブランド力にあやかりたいんだろうが、どうせ買収したところで今の男女鹿酒造の造る日本酒の出来を維持出来るとは到底思えん。使い捨てにされるのがオチだろうね」
「そんな…」
敦の顔元に、我知らず怒りがうっすらと立ち上る。

「荒巻の社長にしてみれば、家業の立て直しにも繋がるし、何より可愛い息子の満願成就の一助にもなるし、一石二鳥な訳だ」
「そうなんです。だから、権太もすっかり調子に乗って、もうボクと結婚したような気でいる。ボクはこんな納得いかないやり方で好きでもない奴の家に嫁ぐなんてまっぴらゴメンだし、ウチの何百年と築いてきた伝統の味を踏みつけにされるのは我慢ならない!だから、ちょっと知り合いにお願いして、どうにか今月末に助け船を出してもらえる事になったんだが、それまで権太から逃げなきゃならなくなって…」
「お知り合いって?」
「それは…全部済んだら教えるよ。今はまだ極秘扱いなんだ。知れたら計画がパーになるから…ごめんな」
「そうですか…」

「まあ要はだ、一芝居打って時間稼ぎするってだけの話だあな。茜さんには、東京で婚約した相手がいるから、お前さんとは付き合えないぞと。こういう段取りでな」
ぱちんと、太股をはたきながらにやりと微笑む繁の口ぶりに、一同顔を見合わせる。

「済まない。だがお前達しかボクには頼みの綱が無いんだ。頼む…」
居住まいを正して、深々と正座したまま頭を下げる茜の真剣さに、三人とも黙したまま互いの目を見合い、そして頷いた。

「分かりました。協力します」
「まあ、事情は大体把握した。真面目にやってる奴を放っておくのは男が廃るしな」
「けど、肝心な事が…」
そう、三人とも、ずっと頭の片隅で思っていた事がある。

「…その、誰が、茜さんの婚約者役をするんですか?」
おずおずと尋ねる敦に、茜と繁は顔を見合わせる。

「それなんだがなあ…」
繁がアゴをさすってううん、と唸る。

「…庵君は、お前がいいとよ敦」
「ええっ!」
細い目をめいっぱい見開いて、敦はわわわ、と身を小さくする。

「あいつは、ボクがたまたまこの家に来たのでなくて、ここの跡取りである、その、お前が婚約者だから来たんだと思わせれば筋道も自然だし上手く隠し通せるよってさ。ただボクは…」
「…ボク、は?」
ためらう茜の口元に、敦の心中はざわざわと騒いだ。

「…いや、権太の奴、荒っぽいから…万一、他の二人はともかく人の良さそうなお前があいつにどつき回されるような羽目になったらと思うといたたまれなくて。まあ、そうなる前には、ボクが殴りかかってやるつもりではあるけど」

「他の二人は」「ともかくって何だ」

「うるせえな、いつも杏奈が困ってたぞ。お前達と会う度にお茶に誘われるけどどうしましょうって。しつこいんだよ全くもう」
杏奈さん…と晶と大輔は互いにしょんぼりと思いつつも、やはりこいつも…と思うと互いをやはり意識せざるを得ない。
二人がそろりと互いの目の色を窺っている間に、敦は焦る頭の中で色々と思案を巡らせる。

なるほど、庵先輩が言ってた「大将」ってこの事か。
僕が茜さんの婚約者役。婚約者…。
どうしよう、芝居云々じゃなくって動悸してきた。
緊張してる…のと違う、何か違う…。

頭が白くなる。真っ白になる。茜さんの顔がまっすぐ見れない。
昨日から、喉に何か引っかかってるみたいで、イライラばっかりするよぅ…。
僕おかしい、何かおかしい…。

「俺的にも、お前じゃどうも不安なんだよな…正直すぎるっていうか、流されやすいっていうか、すぐにボロ出しそうでなあ。んな訳だから、芝居上手そうな美男子の兄さん、どちらかに…」
「おとーさん!大変よっ!!」

敦の姉が、慌ただしく座敷へと転がり込んできたのだ。相当焦っている様子で、すぐさま父親の前へと進み出る。

「どうした実咲」
「知らない連中が、乗り込んできて…!今、玄関前で何か叫んでるよっ」

「まさか、もうあいつらが…!」
茜はおもむろに立ち上がると、ちくしょう、と舌打ちを残して座敷を駆け出していった。
不穏な空気が瞬く間に場を支配する中、敦は既に半分腰を浮かせて立ち上がっていた。

「茜さん!」
「敦、行こう!」「きなくさくなってきたな…」
茜を追って、三人はすぐさま座敷を出ると廊下をきしらせて玄関へと駆け去っていった。

【7月22日・嵐来訪・次回へ続く】












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