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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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勝負 in 新潟。
*

ところ変わって。
新潟某所、シガ直営ゲームセンター【シガユニバース新潟】。

敦の家からほど近い、繁華街に立つ中規模のゲーセンなのだが、ここへ今し方ずかずかと押しかけてきた集団がひとつ。
昼過ぎで夏休みという事もあり、二階奥の右端を陣取る、満員の四台×四台設置のアンサーアンサー筐体のうち、一番の巨漢な地黒の大男が手前の横並び二台からカップルとリーマンを無理矢理押しのけて「どけどけっ」と占拠し始めると、周囲のブーイングも「うるせえ!」の一喝で収めてどっかりと座り込む。
「なっ、何をするんだ!」
抗議しようとする一般客を、大男の周囲にたむろしているいかつい黒袢纏集団が睨みをきかせて黙らせる。

「ちょっと、順番待ちくらいしましょうよ!」
「そうだぞ。お前等だけならともかく、俺達まで仲間だと思われたらたまったもんじゃない」
彼らから少し遅れて入ってきた三人の男&赤い袢纏姿の女性に、周囲がざわつく。

「うるせえ!とっとと済ませて、茜連れて帰るんだ!ほれ、席作ってやったぞ!」
「だからそれがマナー違反だって言ってるのに…まさか、いつもこんな事してるの?」
「いんや。俺等みかけたら、みんな席空けてくれるぞ。俺が頭も腕っ節も強いって分かってるからだなンナハハハ」

「そうですか」「へー」「へーへーへー」
白けた様子の敦たちに、権太の口から笑みが消える。

「まあだ信じてないって感じだな。…まあええ、すぐに思い知らせてやるだ」

「(いいえ)」
「(どっちかというと関わり合いたくなくて嫌われてるからじゃあ)」

周囲の冷たい視線ももろともせず、着席した権太に、三人とも困惑し眉をひそめる。
そして、カップルの女性が短い悲鳴を上げたせいか、周囲にはいつしか人だかりが。

「んで、どうするだ?まずは」
「それよりもさ、お前の実力が分からないし。カード入れてみろって」
大輔に急かされて、鼻をフン、と慣らすと権太は似合わぬヴィトンの財布から太い指を抜き差ししつつカードを取り出す。

【CN/アカネらぶ♪ リーグ:S 十段】

「あー…」「あいたたた」「痛いな」「恥ずかしい…」
敦ら四人が一様に顔をしかめたのを見て、「何が悪い!」と権太は周囲の視線も気にせずわめきちらす。

「それじゃあおめえ、ちょいと着席しろや。すぐ俺の実力見したるからな」
「あ、はい」
鼻息も荒い権太に少々気圧されつつも、敦は気を引き締めるようにぐっと奥歯を噛み締め着席する。

「…あ、おめえら今日はいいから見てろ。七段なんぞ俺一人でねじ伏せてやらあ」
「はいっ、権太さん!」
舎弟を指揮する親分気取りの権太を横目に、敦も財布からカードを引き抜き、百円と共に投入する。
「(にしても…)」
アバターに罪はないと思えど、画面に表示されているキャラクターの強気な顔さえ、権太のアバターは、普段見かけるショートよりも高慢そうに見えるような気がして敦は苦笑いを浮かべた。

対戦:【アナン(敦)七段:Sリーグ × アカネらぶ♪(権太)十段:Sリーグ】

【第一試合】

「俺は早押し超得意なんだっぺ。電光石火ちゅうやつかな?」
「そうですか…(一応注意しておきましょうか…)」


……
………

試合終了。

「あの」
あまりのあっけなさに、敦の口から思わず疑問の声がこぼれる。
「・・・」
「すみません、三試合目行かなかったんですが…」
「う、うるせえっ!こ、今回はたまたまだっ!そうだっ!」
「そ、そうですか…」
あまりの権太の必死な形相に、敦も言葉を飲み込む。

「次だ!次!!」

【第二試合】

「…あの」
「なんだ」
「ハンデは…」
「いるかっ!!」


……
………

試合終了。

「次っ!」
「ええっ、まだ…」
「次だ!!勝ち逃げする気か!」
「えええええっ!?」

「なんだか」「当初の目的忘れてないか?あいつ」
「このまま、当初の目的ごと忘れてくれないかなあ…ああもう…」
苦笑を通り越してあきれ顔な晶と大輔に、茜も我が身の事のように小さくなって俯くばかりである。

【第三試合】
【第四試合】
【第五試合】


……
………

試合終了。

「あの」
「カモ」と化した相手の様子が気になり、敦はこわごわと隣に座る巨漢に声をかけるも、返事は無し。
ちらと筐体越しに見ると、肩がぷるぷる震えている。

「なして…なして勝てないんだ…いっつもはこんなんじゃねえのに…」
怒りと苛立ちに打ち震え、台を太い拳で力任せに叩く権太に、敦も困惑を隠せない。
仮にも十段だと警戒していたが、どうにも歯ごたえがなさすぎるのである。
「あの、でも一回も三試合目に行かな…」
「うるせえな!…くそっ、俺一人でも、俺一人でも勝てると思ったのに…!」

「『俺一人』?それってどういうこと?ドンタさん」
「ドンタじゃねっ!権太だっ!」
晶へ耳聡いつっこみを入れるも、晶と並んで立つ大輔と茜の眼光が権太を無言で黙らせる。
それだけでなく、周囲にいつしか出来上がっていた人垣も、権太に冷たい視線をしらじらと浴びせていた。
マナー云々の問題というよりも、立ち居振る舞いの常識のなさそのものが、観客を白けさせているようだ。

「ねえ、あの大きい人、さっきから負けてばっかじゃない?」
「態度でかかった割には弱いな」
「名前も痛いし」

「だあーーー!!うるせええ!!」
「お前がうるさいんだよっ!!ここはてめえの家じゃねえっ!」
にわかに本来の元気を取り戻してきた茜に一喝され、権太は面食らってわなわなと唇を震わせる。

「で?質問に答えろよ」

「むぐう…」

「まあ、答えられないわな。大方、複数人プレーで答え捻りだしてるんだろ?しかも、リードしたらすぐ遅答とか」
「なっ、なして知ってるかっ!」
動揺する権太に、晶は「遅答って何ですか?」とそっと大輔に問いかける。

「ん?知らないのか…遅答は文字通り、時間いっぱい使って、答えが分かってるのにわざと押さない事だ。
早押しで例えたらすぐ分かると思うけど、こっちが負けてるのに、時間いっぱい引き延ばされて答えられたらどうなると思う?」
「え?んーと、問題数が減って、逆転するための回答機会が減る。
イコール不利になる、ってことですか」
「その通り。俺の良く行く大型掲示板とかじゃあ遅答は随分嫌われてる。
でもって、このカードの名前もそこのスレで見覚えがあるんだよな。
全国対戦だけじゃなくって、店内でのプレー態度も最悪だってさ。集団でやるのも、対戦相手の事を考えて楽しくマナーさえ守れてればいいと思うんだが、こいつらは周りの迷惑すら考えてないらしいし、電子辞書やカンペ使ったり大声出したり、隣のサテの席陣取って騒いだり…って、ことあるごとに書き込まれてるのを見た。
さっき、CN見た瞬間、名前の意味とその書き込みの事思い出して、事実だと分かって二重に痛いなと思ってさ」
「あー…」
顔一杯に可哀想な人を見るような視線で、縦線を入れたげんなり顔の晶と大輔に権太は顔を赤くしたり青くしたりと、羞恥心と憤怒の間に挟まって顔色を白黒させていた。

「くっ、くそお!そんなら、お前等三人と俺等全員で勝負しろや!」
悔し紛れな権太の叫びに、二人は余裕綽々で待ってましたとばかりににやりと笑みを浮かべる。

「いいの?僕、全然余裕感じてるけど。仮にもクイズ研究サークルの一員ですし」
「俺も構わんぞ。手加減無しで、さっきの倍以上カモられる屈辱、たっぷり味合わせてやるよ。…俺、自分勝手なプレーする奴も遅答屋も大嫌いなんでな。徹底的に潰すぞ?」

対戦前にして既に余裕な二人に対し、権太の子分たちは既に涙目状態である。
情報の無い大輔はともかく、晶は仮にもアカデミッククイズの元優勝メンバーだ。
ネームバリューからして相手を威圧するには充分である。

「や、やばいですって権太さん…俺等みたいなハンパなのじゃあ絶対負けますって…」
「そうですよ、普段はみんなでやってやっと勝ってるんですから…」
「うるせえ!!おめえら、このまま負け犬のまま、秋田帰るつもりだか!?」
「そんな事言ったって!…」
そう短く叫んで、子分の一人は無言で訴えるかのようにちらちらと周囲を窺う。
その視線の先には、周囲の観客たちのささやきが聞こえた。

「無理矢理どかされたもんだから、どんだけ強いのかと思ったら…」
「…なあ、あいつら一対一のゲームに集団でムキになって俺ツエー!してるみたいだぜ…」
「時々、学生さんがみんなでワイワイやってるのは見てて微笑ましいけど…」
「これってなんか」「違う、よねえ…」

周囲の冷めた反応に戸惑いを隠せず、言葉に窮した権太たちに、敦はよく通る声で引導を渡す。

「さあ約束です。これで、茜さんに手出ししないと約束してくれますね?」

「・・・」

「あなた方は言ったはずです。これなら負けないと。ですが、僕が勝ちました。それとも、他に何かで勝負してみますか?」

「・・・・ぬう」

「それとも恥の概念があるなら、今すぐここにいる人たちに謝って、すぐに帰るべきです。ゲーセンだって、迷惑も考えずに騒ぐのは相手の楽しい時間に不快感を与える行為じゃないですか。…茜さんのことだってそうだ。貴方は自分の視点でしかモノを考えてない。茜さんの気持ちを全然考えてない。そんな人に、僕は負ける気はしません!」

「ぐっ…くう…」

「な?お前等ごときじゃ群れても絶対勝ち目ないって。分かったらとっとと帰れよな」
余裕しゃくしゃくな大輔の止めの一言に、権太は冷たい人目に晒され涙目な手下の首根っこを掴み上げて無理矢理立たせると、「これで済んだと思うなよ!」と捨て台詞を残しずかずか大股で立ち去っていった。


彼らの気配がゲーセンから完全に消えた後。
敦ら四人は改めて「はあぁ…」と安堵の一息を吐いた。

「どうにか」
「乗り切った…かな?」

*

四人とも一様にほっと胸を撫で下ろすと、ゲーセンの客や様子を見ていた店員に丁重に詫びを入れ、その場を後にする。

帰りの道々、従兄弟夫婦に連絡を入れ、待ち合わせのコンビニ内にあるフードコートで迎えの車を待ちながら、敦はやっと今日初めて心からリラックスした心持ちを感じていた。

夕方を迎えて、明るいガラス張りの窓から差し込む日差しは未だまばゆいばかりにじりじりと全身を刺してくるが、空調の行き届いた涼しい室内では心地よいとさえ思う。さっきまで居たゲーセンが寒いくらいだったせいかも知れないが、外との寒暖差が大きすぎるとどうにもいけない。

Tシャツ一枚の上着なのに頬がカッカッするし、頭はぼんやりしている。

「おーーい、敦、敦ってば」
「えあ?はい」
「大丈夫か?かき氷、ほとんどシロップみたくなってるが…」
「えっ?」
四人掛けの向かいに座っている大輔の言葉と、けげんな晶の表情で我に帰る。

手元では、一口二口しか食べていないオレンジバニラのフローズンドリンクが、橙と白の溶け合った液状シェイクになっていた。
「あらら」と半ば半分以上ドリンクカップの中に沈んだストロー状のスプーンをそろりとつまんで、掬いづらくなった柑橘味の氷をカシャカシャ崩し、混ぜ合わせる。
いっそのこと、全部液体にして飲めばいいやと思いながら、視線は何故か自然とスプーンから隣に移動する。

「いいじゃん、ゆっくり食べてくれ。ぬるくなったら、またボクが買い直してくるさ」
権太の引き上げでほっとしたのか、本来の気さくで快活な表情を見せる茜に、敦はどうしても意識の一部を吸い寄せられていた。

「(あんまりジロジロ見ちゃ駄目だよね…でもどうしよう、さっさと食べないと…)」
そうは思いつつも、手が止まる。
意識は全く別の方へと飛んでいき、その先にはいつも彼女がいる。

ここ数日で、自分はどうやら意識の片隅に奇妙な習性が身に付いてしまったらしい。
敦は、うすうすそれを自覚し始めていた。

「本当、気を遣わせて済まなかったな。…これで後全部上手く行ったら、また何かご馳走するぜ。東京帰ってからになると思うけど、今から何がいいか、メニュー考えておいてくれよな」
「ありがとーございます♪(杏奈さんが一緒に来てくれるように…と、そっと伝えておかないとな…)」
「それなら、とびきり高くて旨いメシ屋、調べておくかな」
「ああ、焼き肉でも何でもいい、バンバン行こうぜ!あと敦、お前のウチには随分迷惑かけたし、後日また改めて礼を…敦?」

「へっ?…あ、あああ!はい!何でしょう!?」
あんまりぼさーっ、としていたのか、茜に唐突に名前を呼ばれて敦は素っ頓狂な声を出しハハハと笑う。

「…や、まあ、全部済んでからにするよ。ゴメンゴメン」
「は、はいハハハ」
「…んな、緊張しなくていいんだぞ?恋人役つったって、四六時中あいつらが見てる訳ないし、俺もそんなベタベタされない方がいいしさ。気にしすぎ」
「は、はいっ!…ハハハ」
言いながら、敦は内心自分のチキンハートにやるせなさを募らせる。

もっと見てたい。
もっと触れてみたい。
もっと間近で。
もっと密接に。

このまま、ずっと恋人役でもいいんだけどな。

思いがけず、そんな事を思った自分に赤面し、敦は気を紛らわせようと液状化したフローズンドリンクをグルグルとかき回す。

じゃくじゃくじゃくじゃく。氷を潰す。
ざわざわざわざわ。ざわざわざわざわ。胸が騒ぐ。

そうだ。
これはそうだ。…そうなんだ。
小中高と、体験することもなく終わった、淡い感情のざわめきが、潮音の如く内より聞こえる。

こい。あい。すきになる。
押しては引き寄せる。引き寄せられる。…ああ、これが恋、なのか…。

二十歳前にして、初めて知る熱。
幼いままの自分が燃えかすになりそうな、ままならぬ熱情。
敦は初めての恋愛感情に昂ぶる自分を自覚すると、素直な戸惑いに驚きを隠せずにいた。

【7月22日昼・コンビニで一休み・晶ハーゲンダッツ・大輔チェリオ・茜ガリガリ君・敦初めての甘酸っぱい予感】












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