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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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ホテルの二人。
*

「夜景ちょーきれー」
誰に言うでもなく、青年は眼下に広がる幾千の電子の光に見せられていた。

北海道某所。
アサヒデビール本社にほど近い、繁華街が一望する高台にそびえる、有名某高級ホテル最上階スイートルーム。
そこに、彼はいた。

「でっしょう?せっかく一番上の姉さんに無理言って取ってもらったのよ。存分に楽しんで、きっちり仕事してってね☆…って言おうかと思ってたのに、仕事済ませてゆっくり買い物にゲーセンまでしちゃってて。仕事早すぎてびっくりしたわ」
「サーセン♪…だって、俺、今夏は絶対北海道に来たかったんだ。前、高校ん時の修学旅行も小樽で、高三の時にも色んな県を巡ったけど北海道は冬だけだったし、良い思い出無くってさ。せめて、綺麗な風景と美味しい思い出作っておきたいなーと思ってたんだ。すっげー良い写真撮れたし!!…晶や大輔さんと一緒だったら、絶対来れなかったと思うしね?」
あ、ここオフレコだかんね、と苦笑混じりに振り向く。

出入り口付近でにこやかに微笑んでいた淑女は、手みやげの夜食が入った紙袋を下げて、くすくすと笑みを堪えながら白い革張りのソファへ身体を沈める。

「麻美さん、わざわざありがとな。最高に良い環境提供してもらったから、すぐに仕事も済ませられたよ」
北海寿司、と書かれた紺の和紙張りの紙袋を無造作に開きつつ、青年=庵は向かいのソファにどかっと座り袋の中から分厚い木箱の折り詰めを取り出し満面の笑みを浮かべる。
その笑顔を見て、淑女=麻美の顔からも無邪気な笑顔が零れた。
「いいえ、ウチもママの家業に関わる大事な問題だったから。それに、思わぬ事態も分かって、冷や汗かいちゃった。ママと専務役の叔父にはもう事の詳細を伝えたから、明日の朝一には業務辞令が下るのは確定よ。上役一同が目を剥くのを見るのが楽しみね。荒巻に接待してもらった常務や係長クラスはみんな卒倒しちゃうかも。ママの雷が落ちるの必至だから。避雷針でも避けようがないわ」
「魑魅魍魎退治にも一役買えました」
「有難いことね。お茶煎れようか?」
「たのんます」
眼下の熱帯夜…といっても、本州以南の人間にしてみれば涼しいくらいの蒸し暑さなのだが、ここ数年の北海道は、夏にクーラー無しでは厳しい気温上昇に見舞われていた。そんな熱気もどこ吹く風で、二人は空調と展望の行き届いたホテルの最上階スイートで、熱い玉露を頂いている。

横を見れば、宵闇に浮かぶ白亜のテラス、そして夏の活気を迎えた札幌が見える。
夜景は函館だと誰かが言っていたが、これだけの地平に輝く光粒を見られる場所は、中々ない。
これ以上の贅沢、ちょっと無いよねと庵は寿司を手づかみしながらのほほんと思った。

「麻美さん、神戸だから関空で来たのかな?北海道までしんどくなかった?」
「法事のすぐ後だったから、ちょっとだけね。でも平気。茜ちゃんの事も気になるし、時々はママに顔見せておかないと、ね」
「そっか。…あ、お寿司半分要る?」
「いいわ、食べて。そのまま手で食べた方が美味しいわよ、きっと。今ならムラサキウニとホッキがオススメかな。それとそれね」
「すんません。ちょー美味いです。残さず食べるです」

魚型のチューブから醤油を搾ってかけると、庵はむぐむぐと無心で寿司を頬張る。
いい顔、と麻美が笑う。
すると、庵は口に酢飯を入れたまま、きょとんと麻美の顔をじっと見つめた。

「どうしたの?」
「ん…いや」
ごっくんと、最後の大トロを飲み込んで手ふきで指先を拭いながら庵は「ショート先輩も似たような顔しててさ」と呟く。

「何だろう、こっち来る前に、随分不安そうにしてたから励ましてたんだけどさ…時々あるのかな、乙女チックな顔してた。さっきの麻美さんみたく」
「へえ…」
麻美は一息沈黙した後、「罪作りねえ」とにやりと微笑んだ。

「ええー?何でさ」
「んーん、何でも。君、もっと自分の魅力を熟知しておいた方がいいと思うな。ののちゃんがそわそわする訳ね」
「えええ!?ちょ、麻美さんまで変な事言うなあ…ショート先輩も、妙にニコニコするし、俺困るわ」
だって俺今恋まっさかりですから、と苦笑する庵に、「残念でした、私もよ」と麻美はすかさず牽制する。

「ふーん。…何となく、誰か分かるかも」
にやり、と元クイズ王の自信を覗かせる庵に麻美は黙って微笑み返す。

「でしょ?他の人には伝わってるのよ、私の悲しきテレパシー」

「じゃあやっぱそうなんだ」

「そうよ。でも気付かないんだなあ、あの甘党無精ヒゲ。
今日も絶対姪っ子に絵本読み聞かせて、後は律儀に研究書とにらめっこよ? 

…乗り換えちゃおうかしらんねえ?君に」

「ちょっ!!ちょちょちょっ!!」

「嘘、冗談に決まってるでしょ?あんまり、元王者の風格を見せつけてくれるから、ちょっとからかってみたくなっただけよ」
「ふうううう…心臓に悪いっすよ、麻美さん…」
「それって、私ならちょっとクラッと来ちゃうかもって事かな?かなあー?」
「もうっ、もう!年下をからかわないでくださいよ!」
ごめんごめん、と麻美がウィンクを返すと、庵も我知らずどきりと頬を染める。

元々、年上の美女に免疫の無い身だ。
思い人がいても、男はこうした二人きりシチュエーションに弱い。
庵はそう思いつつももじもじを隠せずにいる。こればっかりは、理性と計算ではいかんともしがたい男の性故だろうと、自分に言い聞かせる。

「ダメよ元天才少年?そんな浮わついてるようじゃ!ののちゃん純情なんだから、もっとしっかりしててね」
「は、はいい…」
「はいよろし。…じゃあ、これ、明日の新潟行き搭乗券。母に代わって私がきちんと朝一でエスコートしていくから、今日はゆっくり休んでね」
「ん、ありがとね」
一枚ガラスの卓上に明日の搭乗券を置いて去っていく麻美の背中をソファに腰掛けたまま見送って、庵は「なあんでヒゲ先輩、あの色気が平気なのかなあ…」と首を傾げていた。

【22日深夜・その頃ヒゲはアイスもなかで休憩中】












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