フラスコ持ちは不敵に微笑む。
※時々、貧乏性で以前の日にちに小説更新してたりします。
ご了承下さいませ…。
※時々、貧乏性で以前の日にちに小説更新してたりします。
ご了承下さいませ…。
*
「ところで」
「はい、何でしょう」
すぐ側には音ゲーもないため、割に声が通りやすい。気になっていたことを、隣の台に座る陰善に敦はそれとなく問いかける。
「大輔さんの事、知ってるんですか?電話で尋ねられたとか」
「ええ。彼は有名…というよりも、彼の『チームメイト』が有名と言いますか」
「チームメイト?」
「はい。『彼』と僕は、仲良くしてたんです。半年前まで」
「…」
話に聞き入る敦の背後で、晶がそっと大輔の様子を窺う。
普段と変わりないが、表情は幾分厳しげに見えた。
店内対戦ボタンを押し、画面表示がキャラの対峙画面に切り替わる。
見ると、糸目博士姿の自分の分身の横には、同じく糸目白衣の姿が。
【「インゼント」との対戦でよろしいですか?】
下段に1192万パワー。金のプレート。4桁プロアンサーか。
…なるほど、大輔さんがまずいと言ってた理由が分かった。
相手の名前表示に「ううん」と唸る敦に、陰善は「知ってます?」と照れくさそうに尋ねる。
「え?…いえ、すみませんが」
「そっか、それならそれでちょっとホッとしたかな。失礼かもしれないけど、これ、いつから始めたの?」
「今年の四月からです」
「なら、知らなくて当然、か」
ほんじゃま、始めましょうか。
まったりおっとりな陰善の声に被るようにして、画面の中で自分の分身達がささやかな気合いの雄叫びを上げていた。
*
「初顔合わせ~」
「ですね~」
臨席の対戦相手につられて、なんとなく返事を返してしまい敦は口元をもにょもにょさせる。
確か、もっと鬼気迫った問題でここに来てたはずなんだが。
着席してからこの助っ人役=陰善は、戦闘意欲というか、闘志とか、そういう暑苦しいモノを感じさせないおっとり刀でゲームの効果音を復唱してみたり。
そういった熱い感覚を、クーラーの効いた室内から外へ丁重に畳んで置いてきたようなまったり風情で飄々と微笑んでいる。
第一試合【虫食いクイズ】
敦「これからかぁ」
陰善「あーこれかあ。あんま好きじゃないなあ」
敦「そ、そうなんです?(不得意なのかな…)」
陰善「うん、ちょっとね」
じゃあこれで振っておくかあ、と陰善はぼそりと呟いた。
画面表示が、双方の問題ジャンル選択画面に切り替わる。
それを上から確認しようとした敦の口から、「うえっ?!」と奇妙な短い声が零れた。
四桁プロ(1192万パワー)なのは、最初表示を見て分かっていた。
自然科学のジャンルポイントなんだが…。
自然科学:MAX 4892pt …ってなんだこれ。
上三つの学問系は全て四桁のジャンルポイント、後は趣味雑学スポーツ他レベル9の団子状態で、漫画アニメゲームのみがレベル8と、極端な学問系アンサー。
なるほど、余裕があるはずである。
あからさまに、七段の自分はステータスも経験値も格下に違いない。
少々悔しくはあるが。
しかし、これでは確かにジャンル選択が難しくなった。
…かくいう、自分も上三つの学問系ジャンルの方が得意である。
というか、ジャンルポイントの上下が自分とモロかぶりというのが、こんなにやりにくいとは…。
どれを投げても、先制されそうな気がする。しかし、相手の苦手は自分の苦手。
しかし、そう得意でない形式で、唯一自分の方が勝っている「趣味・雑学」を投げるのも…。
陰善「君はどうするの?」
敦「…これで」
→ジャンル選択:【スポーツ】LV7
陰善「なるほどね」
→ジャンル選択:【自然科学】MAX:4892pt
スロットル→【スポーツ】×1、【自然科学】×3装填、後発ランダムジャンル装填完了。
「まずは様子見か。相変わらず手堅いな」
短期決戦で固すぎやしないか、と大輔が思わず後方で敦の選択にぼそりと苦言を漏らす。
二人には聞こえない程度の距離を保ってはいるが、晶は「大輔さん考えすぎ」と耳聡くつっこみを入れる。
「だって、初顔合わせですし、一回戦目はどんな戦法取るか見ません?」
「そんな事してる余裕ないかもな」
敦を擁護する晶に、大輔は憮然としたまま「あいつが自然科学選んでるって事は、最初っから本気だ」と低い声でそっと囁いた。
第一問目:自然科学【フェルマーの定理でおなじみのフェルマー。彼の本来の職業は何?】
先攻;インゼント(陰善)
【フェルマーの定理でおなじみのフェルマー。彼の本来の職業は何?】
「あー、これね」
【答える】→【べんごし】→○ 正解!10pt
「早っ!」「半年やってないと変わった問題も増えてるねえ~」
第二問目:スポーツ【日本プロ野球はセントラルリーグとパシフィックリーグと合わせて何チームでしょう?】
大輔「…また「は」「の」「と」しか見えねえ」
先攻:アナン(敦)
スポーツ【日本プロ野球はセントラルリーグとパシフィックリーグと合わせて何チームでしょう?】
→パス
後攻:インゼント
【日本プロ野球はセントラルリーグとパシフィックリーグと合わせて何チームでしょう?】
「えーと」
【答える】→【12】→○ 正解!10pt
「むむ…」「易問だね~」
ちら、と横を見る。
陰善は、変わらず画面を見たままおっとりと微笑んでいる。緊張感もみじんも感じない。
まるで、取り巻いている状況など関係なくただクイズを楽しんでいるような。
余裕なんだな…。
ひどくカチンと来て、そのまま頭に血が上る。
第三問目:自然科学【底辺×高さ÷2は三角形の面積ですが、1辺×1辺×1辺は何の体積を求める公式?】
晶「量の公式かな?」
大輔「それっぽいな」
先攻:インゼント
【底辺×高さ÷2は三角形の面積ですが、1辺×1辺×1辺は何の体積を求める公式?】
「はあはあ」
【答える】→【りっぽうたい】
対戦終了→ 30pt:0pt インゼント勝利!
敦「これで…」
陰善「分かるもんだよ」
見た問題だからねえ、と穏やかな相手に、何故かイライラが止まらない。相手にではなく、自分に。
もっと落ち着け自分、冷静なれ…そう念仏のように唱える脳裏の底で、苛立ちと焦りが煮立ち始めているを感じていた。
【7月23日・敦の沸点急上昇中・陰善久々のAnAnエンジョイ中】
「ところで」
「はい、何でしょう」
すぐ側には音ゲーもないため、割に声が通りやすい。気になっていたことを、隣の台に座る陰善に敦はそれとなく問いかける。
「大輔さんの事、知ってるんですか?電話で尋ねられたとか」
「ええ。彼は有名…というよりも、彼の『チームメイト』が有名と言いますか」
「チームメイト?」
「はい。『彼』と僕は、仲良くしてたんです。半年前まで」
「…」
話に聞き入る敦の背後で、晶がそっと大輔の様子を窺う。
普段と変わりないが、表情は幾分厳しげに見えた。
店内対戦ボタンを押し、画面表示がキャラの対峙画面に切り替わる。
見ると、糸目博士姿の自分の分身の横には、同じく糸目白衣の姿が。
【「インゼント」との対戦でよろしいですか?】
下段に1192万パワー。金のプレート。4桁プロアンサーか。
…なるほど、大輔さんがまずいと言ってた理由が分かった。
相手の名前表示に「ううん」と唸る敦に、陰善は「知ってます?」と照れくさそうに尋ねる。
「え?…いえ、すみませんが」
「そっか、それならそれでちょっとホッとしたかな。失礼かもしれないけど、これ、いつから始めたの?」
「今年の四月からです」
「なら、知らなくて当然、か」
ほんじゃま、始めましょうか。
まったりおっとりな陰善の声に被るようにして、画面の中で自分の分身達がささやかな気合いの雄叫びを上げていた。
*
「初顔合わせ~」
「ですね~」
臨席の対戦相手につられて、なんとなく返事を返してしまい敦は口元をもにょもにょさせる。
確か、もっと鬼気迫った問題でここに来てたはずなんだが。
着席してからこの助っ人役=陰善は、戦闘意欲というか、闘志とか、そういう暑苦しいモノを感じさせないおっとり刀でゲームの効果音を復唱してみたり。
そういった熱い感覚を、クーラーの効いた室内から外へ丁重に畳んで置いてきたようなまったり風情で飄々と微笑んでいる。
第一試合【虫食いクイズ】
敦「これからかぁ」
陰善「あーこれかあ。あんま好きじゃないなあ」
敦「そ、そうなんです?(不得意なのかな…)」
陰善「うん、ちょっとね」
じゃあこれで振っておくかあ、と陰善はぼそりと呟いた。
画面表示が、双方の問題ジャンル選択画面に切り替わる。
それを上から確認しようとした敦の口から、「うえっ?!」と奇妙な短い声が零れた。
四桁プロ(1192万パワー)なのは、最初表示を見て分かっていた。
自然科学のジャンルポイントなんだが…。
自然科学:MAX 4892pt …ってなんだこれ。
上三つの学問系は全て四桁のジャンルポイント、後は趣味雑学スポーツ他レベル9の団子状態で、漫画アニメゲームのみがレベル8と、極端な学問系アンサー。
なるほど、余裕があるはずである。
あからさまに、七段の自分はステータスも経験値も格下に違いない。
少々悔しくはあるが。
しかし、これでは確かにジャンル選択が難しくなった。
…かくいう、自分も上三つの学問系ジャンルの方が得意である。
というか、ジャンルポイントの上下が自分とモロかぶりというのが、こんなにやりにくいとは…。
どれを投げても、先制されそうな気がする。しかし、相手の苦手は自分の苦手。
しかし、そう得意でない形式で、唯一自分の方が勝っている「趣味・雑学」を投げるのも…。
陰善「君はどうするの?」
敦「…これで」
→ジャンル選択:【スポーツ】LV7
陰善「なるほどね」
→ジャンル選択:【自然科学】MAX:4892pt
スロットル→【スポーツ】×1、【自然科学】×3装填、後発ランダムジャンル装填完了。
「まずは様子見か。相変わらず手堅いな」
短期決戦で固すぎやしないか、と大輔が思わず後方で敦の選択にぼそりと苦言を漏らす。
二人には聞こえない程度の距離を保ってはいるが、晶は「大輔さん考えすぎ」と耳聡くつっこみを入れる。
「だって、初顔合わせですし、一回戦目はどんな戦法取るか見ません?」
「そんな事してる余裕ないかもな」
敦を擁護する晶に、大輔は憮然としたまま「あいつが自然科学選んでるって事は、最初っから本気だ」と低い声でそっと囁いた。
第一問目:自然科学【フェルマーの定理でおなじみのフェルマー。彼の本来の職業は何?】
先攻;インゼント(陰善)
【フェルマーの定理でおなじみのフェルマー。彼の本来の職業は何?】
「あー、これね」
【答える】→【べんごし】→○ 正解!10pt
「早っ!」「半年やってないと変わった問題も増えてるねえ~」
第二問目:スポーツ【日本プロ野球はセントラルリーグとパシフィックリーグと合わせて何チームでしょう?】
大輔「…また「は」「の」「と」しか見えねえ」
先攻:アナン(敦)
スポーツ【日本プロ野球はセントラルリーグとパシフィックリーグと合わせて何チームでしょう?】
→パス
後攻:インゼント
【日本プロ野球はセントラルリーグとパシフィックリーグと合わせて何チームでしょう?】
「えーと」
【答える】→【12】→○ 正解!10pt
「むむ…」「易問だね~」
ちら、と横を見る。
陰善は、変わらず画面を見たままおっとりと微笑んでいる。緊張感もみじんも感じない。
まるで、取り巻いている状況など関係なくただクイズを楽しんでいるような。
余裕なんだな…。
ひどくカチンと来て、そのまま頭に血が上る。
第三問目:自然科学【底辺×高さ÷2は三角形の面積ですが、1辺×1辺×1辺は何の体積を求める公式?】
晶「量の公式かな?」
大輔「それっぽいな」
先攻:インゼント
【底辺×高さ÷2は三角形の面積ですが、1辺×1辺×1辺は何の体積を求める公式?】
「はあはあ」
【答える】→【りっぽうたい】
対戦終了→ 30pt:0pt インゼント勝利!
敦「これで…」
陰善「分かるもんだよ」
見た問題だからねえ、と穏やかな相手に、何故かイライラが止まらない。相手にではなく、自分に。
もっと落ち着け自分、冷静なれ…そう念仏のように唱える脳裏の底で、苛立ちと焦りが煮立ち始めているを感じていた。
【7月23日・敦の沸点急上昇中・陰善久々のAnAnエンジョイ中】
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