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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

あなたが見ててくれるなら。
*

第二試合 【チキンレースクイズ】

敦「店内対戦で」
陰善「これはないね~」

苦笑いを浮かべる陰善に対し、敦は憮然としている。
「ねえ」
陰善は気にするそぶりもなく、敦に話しかける。

「何でしょう」
「君、結構負けず嫌いでしょ」
聞かれて一瞬、返答に窮した。

「な、なんでですか」
「いやー、おたふくさんみたいな顔してるから。弟さんそっくりだなあと思って」
「ネムは…あの子は関係ありませんっ!」
思わず声を荒げた敦に、陰善は肩をすくめる。

「そう?そんな怖い顔しなくっても」
「余裕なんですね。でも、勝負はこれからですよ」
「うんそうだね。でも、勝負の時にあんまり怖い顔してない方がいいと思うな僕は」
「…?」
「どうせなら楽しくやった方がいい。脳は楽しいと思えば思うほど、よく働く仕組みになってるしね。笑顔はリラックスと集中を生むんだ」
「…」
だからと言って、そんなにニコニコされているとこちらは余計にふくれっ面になってしまう。…イライラが煮え立つ。

彼らの背後では、そんなムカムカMAX上昇中の敦を怖々見つめている弟の姿があった。

「どうしよ、お兄ちゃん、絶対僕の事怒ってるよぅ」
あわわわ、と権太と茜の間に挟まれてネムはいよいよ身を縮み込ませる。

「いや、関係ないと思うがな」
大輔がキッパリと断言する。

「君には申し訳ないけど、きっとアウトオブ眼中だと思う」
晶にもにべもなく言われ、ネムはまた違った意味で「えー」とがっくり肩を落としまたぐずぐずと半べそをかく。

まあ、多分あっちの方を意識し過ぎてるんだろうなー、と先輩二人は思っていた。
視線の端で、ちらと不安げな茜を覗き見て、その隣でへっへっへとニヤニヤしている黒おにぎりに不快感を感じつつ。
もう勝った気でいるっぽい、締まりの無い弛んだ頬めがけて、お前何もしてないじゃん…と跳び蹴り入れてやりたいくらいに。

「珍しいですね、見てるだけでも一気にカッカし始めたのが分かりましたよ」
「陰善なあ…あいつ、リラックスさせようとしてるんだろうけど…」
逆効果だよなあ、と大輔は苦虫を噛んだような表情で成り行きを見守る。
「そうなんです?でもどうして」
プロの余裕ですか、と訊ねる晶に、さあなあ、と曖昧な言葉を返す。

敦「…」

→ジャンル選択:【歴史地理社会】LV7

陰善「それでくるんだね」
→ジャンル選択:【語学・文学】MAX:1492pt

スロットル→【歴史地理社会】×1、【語学・文学】×2装填、後発ランダムジャンル装填完了。

第一問目:【歴史地理社会】→「2007年4月までの政令指定都市の数」

範囲【10 ←○→ 20】

敦「ハンパな年数…」
陰善「それ以降格上げされた都市が無かったとかじゃない?確か、来年は岡山市がなるんだったかな。でもって、順に相模原市、熊本市、と」
敦「よく知ってますね」
陰善「まあね(怖い怖い、と)」

敦 →【13】(このくらい…かな)
陰善→【17】(だった、と、思う)

正解→【17】 インゼント正解! ボーナス+5pt獲得 15pt(残り35pt)

第二問目:【語学・文学】→「直木賞の正式名称に入る数は、直木○○○賞?」

範囲【15 ←○→ 105】

敦「これは分かります」
陰善「うん、僕も知ってるよ~」

敦 →【35】
陰善→【35】

正解→【35】(正式名称は直木三十五賞と言います)→ ドロー・双方にビンゴボーナス+5pt

「何故そんなにイライラしてるの?」
画面に目をむけたまま、陰善が話しかけてくる。

「舌打ちはあんまり好きじゃないなあ僕」
「あなたこそ何故そんなに余裕なんでしょうか?」
「余裕?じゃないよ。楽しいけど」
「楽しい?…卑怯な人の片棒担いでるくせに」
「ああ、彼は関係無いよ。さっきも言った通りだけど」

第三問目:【語学・文学】→「岩井志麻子が山本周五郎賞を受賞したのは第何回?」

範囲【13 ←○→ 103】

「信用出来ません」
「そうかも知れないな。でも、正義の味方になるならいつだってクールでなくちゃ」
「集中出来ないんですけど」
「おっとゴメンね。どっちにしろはカッカしすぎてるよ。そんなだから…」

敦 →【33】
陰善→【13】

正解→【13】 インゼント正解! ボーナス+5pt獲得 15pt(インゼント現在35pt・残り15pt)

「押しすぎる、と」
「茶々入れてくるから…!」
「それだけが理由かな?」
「何ですか?」
「何も言わなくても、君自滅する気がするなあ」
「……!!?」
敦の顔面が、怒りと羞恥で真っ赤になる。

「本当に強い人は、憤怒と冷静の使い分けが出来るもんだよ。僕の友人もそうだった」
「さっき言われてた方ですね。その人そんなに偉いんですか?」
「うん、元王者」
「はいっ!?」
敦の声が裏返ったのを聞いて、陰善の口からふふ、と笑みがこぼれた。
ちらと、画面と陰善の横顔をちらちらせわしなく交互に見返す敦を見て、陰善は長い前髪をかきあげる。

「彼はそういう人だった。台の前では非常に冷静なのに、一度席を立つと無礼な相手は決して許さなかった。その潔癖さも、勝負強さがあって初めて際だつ。力無き正義は無力です。単なる綺麗事でしかない」
「・・・・・」
敦は、最初は単にからかわれているのかと思っていた。
だが、何でこの対戦相手は自分に対して必死に対話を繰り返すのか。
敦の疑問は、彼の面差しが真剣味を増した事でも膨らんだ。

「君には良い言い訳がたくさん用意してある。
相手がプロだったから、話しかけてくるから、気圧されたから、何でもいいんです。でも、それを前口上にして、勝負を捨てるようなマネはしないでください。四桁プロが段位に負けるなんて、半年前にもざらにある事だった」
「でもだからって、何で僕に…」
今度は、ギリギリ効果音にかき消されそうな程度の小声でそっと敦にだけしゃべりかける。

「弟君が見てますよ」
「!」
「君が負けたら、きっとずっと自分を責めます。ささいな事とはいえ、昨日今日の事は反省しているようです。感情に足枷をつけて上げないでください」
「ネムが反省?」
「見捨てられるのが怖いだけなんですよ。遠くへ行ったら、もう帰ってこないんじゃないかと。でも、それが貴方の足枷になってるのも自覚していました」
「!」
「だから、せめて後でお兄ちゃんかっこいいね、と言わせてあげられるような負け方をしたらどうです?」
「手抜きはしない、って事ですね」
「最初から、その気です」
「………分かりました。でも」
「でも?」

「僕も、諦めません。
あなたが誰だろうと、まだ勝負は終わってないから!
もし僕が勝ったら絶対許さないですから!」
わざと背後に聞こえるような声で叫んだ敦に、陰善は至極冷静に、微笑を浮かべて答える。
その顔もとは、先程よりも随分嬉しそうだったのがちょこっとだけシャクに触ったが、敦はやっと苛立ちの鍋が冷えていくのを感じていた。

うん、これならいける。
大丈夫…

「勝負はラスト1秒まで分からない」
何故か、庵の言葉がふと頭をよぎって、消えていった。

「了解。僕をぶん殴りたいなら、せめて勝負に勝ってからにしてね。負けて暴力に訴えるなんてかっこつかないよ?ダサイの極み」
陰善の背後で、何か言いたげに権太が牛の反芻のように口を動かしたが、あえて黙って試合を見守る。

第四問目:ランダムジャンル【趣味・雑学】→「花札の『牡丹』は何月?」

範囲【1 ←○→ 10】

敦 →【6】(お父さん、これも好きで集めてたから…)
陰善→【1】(ギャンブル系はどうもなぁ…)

正解→【6】 アナン正解! ボーナス+5pt獲得 15pt(アナン現在20pt・残り30pt)

第五問目:ランダム【グルメ生活】→「モス・サウザン野菜バーガーの値段はいくら?」

範囲【120 ←○→ 1,020】

敦 →【320】(モス派ですから)
陰善→【220】(マクドのポテト派ですんで)

正解→【320】 アナン正解! ボーナス+5pt獲得 15pt(アナン現在35pt・残り15pt)

「巻き返してる」
「粘り腰だな」
二人の舌戦も交えた試合運びを遠巻きに見ていた晶と大輔の背後には、いつしかまばらな人だかりが。

「あいつ、超余裕かと思って焦ってたけど、敦もやるなあ…」
「茜さん、茜さん」
「ん?何だ安住」
「それを敦君に聞こえるように大きな声でもっかいお願いします」
「へえ?何でっ?」
キョトンとなる茜に、大輔も手をヒラヒラさせて「さっさとやれ」のジェスチャー。
すぐ隣の権太が鬼の形相で双方を睨み付けたが、大輔はくわわっ、と剛毅に睨み返し権太を黙らせ、晶はつ、と目を逸らし茜に「ね?」と目配せする。

「えー…ちょっと恥ずかしいぞそれ…でもせめて応援しろって事か?しょうがないなあ」
すうっと、茜大きく深呼吸。
大輔は周囲でタバコを吸っていた相手から、モクをそれとなく没収し一服の後、携帯灰皿で揉み消し空調保護。

「よーっし頑張れ敦!お前かっこいいぞ!応援してるからな!」
一瞬周囲がどよめいた後、顔を真っ赤に恥じらう茜に、権太は動揺し、ネムは何故か同じように照れて顔を紅潮させ、晶と大輔は二人仲良く並んで微笑ましくニヤニヤしていたため、大学生二人は間髪入れず茜のストレートを腹にお見舞いされその場で悶絶する。

「ニヤニヤすんなてめえら」
「あい」「ごもっともで」

何故か口元がヘラヘラと笑う二人に気を取られている隙に、対戦席から試合終了のゴングが鳴った。

「っと、勝負は?」

第二試合結果:アナン50pt × インゼント35pt アナン勝利!

「いよっし!」小さくガッツポーズの茜に、権太は「まだ次があるだっ」とぼそりと吐き捨てる。

「さーて」「敦君にハイオクガソリン入りましたねー」
腹をさすって起きあがった二人は、敦の背中を見て奇妙な確信を感じた。
…いけるかもしんない。

「(敦が勝っても、これはこれで良し、だな)」
一応、電話で陰善と今日の打ち合わせをしておいたが、「勝負に八百長は入れない」という見解で合意したため、陰善は格上の四桁プロながら段位の敦に一切妥協したプレイをしていないはず。その代わり、勝敗に合わせてお芝居の段取りだけは権太に内緒でつけておいたが、それも必要なさそうだ。
敦は…正直勝てるとは思っていなかったが、これはわかんないかもと大輔はニヤリを不敵な笑みを浮かべる。

男なら、覚悟が座った背中というのは見れば分かるものだ。
今まで、こんなにこの大人しく小動物的であった後輩が雄々しく頼もしく見えた事はない。

「(恋は人を変えるもんだね)」
敦の初々しさを、晶は保護者の目で見ていた。
「(僕も、結局新潟美人には会えなかったし…やっぱり、長崎まで押しかけちゃおうかな…)」
大輔さんは最悪このまま日本横断になっても博多でお別れだもんね~、などとあくどい事を考えつつ、晶の口元にもまたニヤリと不敵な笑みが浮かんでいた。

【対戦は最終戦に・その頃新潟空港では・続く】












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