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ゲーム二次創作中心ブログ。 更新まったり。作品ぼちぼち。

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廃墟に響く歌声。
*
別館内部は異様な静けさに包まれていた。
お化けの気配とか、シャドウの気配とか、そうしたものの「在る」もしくは「在った」という感触がまるでない。
灯り一つない真っ暗な廊下を暗視ゴーグルの視界のみで進む。最初のカビ臭さに反して、中に進めば進むほど、周囲は匂いも気配も消え失せ、ホコリくささすらない、乾いた無臭の空気が充満した密閉容器の中にいるような錯覚を覚えた。

そうだ、ここには生活感が無い。
人が動いていたという、気配の残り香すら感じられない。
いくら秘密の研究所でも、薬品臭や機材のプラスチック臭くらいしてもおかしくはないはずなのに…。

きっとその場にいた全員が思っていたはずだ。
何もないからこそ、異常だと。

誰も何も言わない。無言で周囲を探っている。
ふと、その時堂島が「シッ」と人差し指を立てた。

気配を殺し、周囲に意識を巡らせる。


……
………。

「………空耳、じゃないな」



聞こえる。

歌が、聞こえる。

美しい女性の歌声。

「アメージング・グレイス…」
金森が呟く。
ドラマか何かで聞いた覚えのある、荘厳な音色の歌声。
だが、何か違和感を感じる…。

『ジャリ』

背後で別の音がした。
鎖のきしむような、金属のこすれる音。
見れば、背後でシーサーが全身の毛を逆立てて震えている。

「あ…え…あああ…にげ、にげ、…」
歯の根の合わないワンコの背後に、それは突然現れた。

身がすくんで動けないシーサーの頭上に巨大な太刀が振り下ろされるも、すんでのところでクラオカミの両刀がそれを薙ぎ払った。
「…何時の間に!」
堂島は舌打ちをするも、既にトンファーを構えている。
俺たちも慌てて武器を懐から引き抜き、眼前に居るはずの「異様な気配」を探る。
よたよたと俺達の背後にシーサーが回り込むと、周囲を申し訳程度にほの白く照らし出した。
「気配」はすぐ目の前にいた。

大の男の倍近くはあろうかという、巨漢の黒い死神。
背中には無数の棺桶を背負い、手には身の丈ほどもある片手剣を握りしめている。
孔を穿ったような金属質の仮面の奥から出てきた声は、驚くほど幼く耳に響いた。

『カエレ』

金属、というよりノイズの混じった少年の声。
それを聞いたとき、何故か言いしれぬ不安を俺は感じていた。

「生憎だな。こっちは仕事でね」
『カエレ…カエレ…カエレ…カエレ…カエレ…カエレ…』

襲いかかってきた死神は、生涯でたった一つ倒せなかった相手となった。
もとい、能力が桁違いだった。
幾ら攻撃を当てても倒れる気配がなく、消耗してきた俺達は相手の隙を見て散開し、各自個別に逃げ出した。
本当に手の打ちようが無いときにと示し合わせていたのだが、いかんせん俺が一番浮き足立っていたのかも知れない。

暗闇を逃げまどい、気配が遠のいて初めて耳に装着していた通信機が壊れているのに気付き、ああ、と暗い天井を仰ぐ。

歌が、聞こえる。
今度は、さっきよりも近くに、はっきりと。
歌は、俺を誘うかのように、薄明かりのこぼれる部屋から聞こえていた。
選択する余地も無く、俺は隙間からこぼれるその儚い光に向かってゆっくりと歩いていく。

かろうじて読める戸口脇のタグには「LABO」とだけ、書かれていた。

そっと気配を探るも、まるで何も感じない。
だが、歌はずっと聞こえている。

きっと、人間はいないだろう。
そう踏んで、俺はヨーヨーの繰り糸に指を差し入れると、そっとスライドドアに手をかけた。

*
歌が聞こえる。

そこはタグの通りラボだったらしい。広々とした全面鏡張りの実験室を、二階部分からガラス越しに閲覧できる仕組みになっていた。
だが、研究者らしき人影は無い。

いるのは、背中を向けた大人の女性と、女性の膝枕に横たわる小さな少年だけだった。

歌が止む。
女性に膝枕されながら、少年の身体がこちらに向き直る。
白衣に白髪の女性は、艶やかな木目の肌をしており、その首元には蛇がからみついている。
横たわった少年はぴくりとも動かずにいたが、陽一の気配に気付いたのかのろのろと身体を起こすと、陽一を見てぱちぱちとまばたきをした。

「おじちゃん」

ホコリをかぶって白けた髪、ぼろぼろの実験用白衣、がらんどうのビー玉に似た黒い瞳で、フタバは俺を見つけるとにっこりと笑った。












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